太田述正コラム#1240(2006.5.17)
<子供の近視はよくなるのか>
1 始めに
小6の息子が学校検診で昨年に比べて急激に視力が低下していると指摘され、眼科医へ行ったところ、近視であり、眼鏡を着用した方がよいと言われました。
そこで、視力回復訓練を受けさせた方がよいのか、眼鏡を着用した方がよいのか、(この二つの選択肢は両立可能であることはさておき、)検討しているのですが、近視が病気ではないこともあって研究している人が少ないためか、調べば調べるほど分からなくなってきました。
2 近視は遺伝か?
私は10数年前までは、眼鏡のお世話になったことがなかったのですが、加齢による調整力の低下で、乱視が出てきてしまい、それ以来眼鏡をかけています。家内は軽い近視で眼鏡を持ってはいるのですが、使わずに生活しています。
ですから、息子の近視が遺伝のせいだとは思えないのですが、調べてみて頭をかかえました。
一、環境主因説
「近視は遺伝によるものなのかについて、専門家の研究がおこなわれていますが、近視の遺伝子は今のところ見つかっていません。どちらかといえば、生活環境によるところが大きいと考えられています。」(http://i-lasik.com/005.html)
二、主因不明説
「近視になる原因について、遺伝のせい、いや姿勢を悪くして近くでばかり見たせいなど色々と言われる。他に食生活や、外傷、他の病気による誘因なども考えられているが、厳密に言うと、原因はハッキリとは解っていない」(http://www2.health.ne.jp/library/3000/w3000176.html。5月17日アクセス。以下同じ)。
三、遺伝主因説
「近視はほとんど遺伝によって現れてくるものであり、家系に近視の人がいれば、自分も近視になる可能性があります。」(http://www.lasik-lab.com/kinshi.html)
「成長期の終わった後の最終的な屈折状態(近視または遠視の強さ)は、(1) 生まれ持った遠視の強さ、(2) 成長期における近視化の度合い、の2つで決まる。最終的な屈折状態を決める要因としては(1)が主なものであることで専門家の意見が一致している。つまり、生まれ持った遠視の強さによって将来近視になるかはほぼ決まる。(2)が100%遺伝だけで決まるかには議論がある。遺伝のみで全て決まるとする説もあれば、環境によって左右されるとする説もある。ただし、いずれにせよ(1)に比べれば影響は少ない。・・・近視の原因として最も広く支持されている説は、主に遺伝に因るとするものである。近視の遺伝率は89%と高率であり、また近年の研究で関連する遺伝子も特定された。双生児の研究ではPAX6遺伝子の欠陥が近視と関連している様である。」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BF%91%E8%A6%96)
というわけで、何が何だかさっぱり分かりません。
一つだけはっきりしていることは、近視の原因が遺伝だけだ、という説はないことです。
しかも、「現代、近視は増加傾向にある。 小中学生でも近視の割合は年々高まり、小学生の1/4、中学生の1/2は近視であると言われる」(ウィキペディア上掲)、や「最近、急激な勢いで子供の近視が増えて<いる>」(http://www.smile-eye.com/faq/1_3.htm)のですから、環境要因の比重がかなり高いのではないでしょうか。
3 視力回復訓練で近視は改善されるか
近視の原因すら定説がないのですから、明確な結論が出そうもありませんね。
視力回復訓練が効果ありとする説は、血液型で性格が分かるという説と同じ次元の偽科学であるという主張もあります。
「インターネットで見つけた疑似科学に関するウェブページ―――稲葉昌丸@稲葉眼科著:視力回復訓練 #「視力回復訓練」は有効か?」(http://222.146.204.251/~mame/doc/pseudo/psref-j.html)
これでは絶望的ですが、視力回復訓練を全面否定はしない眼科医の方も下掲のようにおられるようです。
「仮性近視(正確には調節けいれん) ・・でない近視の場合、治療器や訓練などで近視が減り、矯正視力が改善することはありません。・・ただ、・・裸眼視力・・が良くなることはあるかもしれません。」(http://www.ganka.com/ophbasic/crcttrng.html)
さあどうしたらいいものやら。
私は11歳のとき視力2.0から夏休み1ヶ月の間に0.2まで下がりました。その後、高校卒業時までに0.02まで下がりましたが、それ以後は視力が変わっていません。
最初に視力が下がった夏休みの間、ほとんど1日中家の中で、本を読んでいたのが原因だと思っていましたが、最近は読書に加えてネットも利用しているのに視力は変化していませんから、成長期というのが鍵なのでしょうか。
遺伝子の要素というのは水疱瘡のウィルスのようなもので、発現するのに条件があるのかもしれませんね。