太田述正コラム#1270(2006.6.1)
<アブナイ人物リスト(その1)>
1 始めに
Vフォー・ヴェンデッタ鑑賞記を書いたついでに、独裁者といつ暗殺されても不思議ではない世界の有名人の最新のリストをご披露しておきましょう。
2 独裁者リスト
(1)概観
2003年にフセインという独裁者が消えたけれど、何が恐ろしいと言って、欧州が生み出した民主主義独裁・・さまざまなバリエーションあり・・が、まだまだ世界の随所で「健在」であることほど恐ろしいことはありません。
これら独裁者達は、国内で人権蹂躙と腐敗の限りを尽くしているだけでなく、大量破壊兵器の輸入や開発に手を染めている者も少なくないだけに、その人類に対する脅威の程度は、国家を後ろ盾にしていないアルカーイダ等のテロリスト団体よりはるかに深刻だと言ってよいでしょう。
(以上、http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/04/21/AR2006042101772_pf.html(4月23日アクセス)を参考にした。)
(2)リスト
独裁者リストはざっと次のとおりです。
<独裁者もどき>
・ロシア大統領プーチン(Vladimir Putin):多すぎるのでコラム番号は挙げない。
・ベネズエラ大統領チャベス(Hugo Chavez):コラム#732、733、756、1034
・イラン大統領アフマディネジャド(Mahmoud Ahmadinejad):コラム#769??772、775、828、868、875、902、924、993、994、1010、1011、1013、1034、1085、1090
<独裁者>
・シリア大統領アサド(Bashar al-Assad):コラム#97、324、488、660、661、663、686、901、903、926、929、930
・北朝鮮軍事委員長金正日(Kim Jong Il):多すぎるのでコラム番号は挙げない。
・ジンバブエ大統領ムガベ(Robert Mugabe):コラム#731
・キューバ大統領カストロ(Fidel Castro):コラム#123、171、329、330、732、838
・ウズベキスタン大統領カリモフ(Islam Karimov):ソ連邦崩壊時(1991年)??。コラム#730
・トルクメニスタン大統領ニヤーゾフ(Saparmurat Niyazov):ソ連邦崩壊以前(1985年)から
(以上、ワシントンポスト上掲による。)
・ベラルス大統領ルカシェンコ(Alexander Lukashenko):1994年??
・ネパール国王ギャネンドラ(Gyanendra)(注1):コラム#637、1209、1213
・赤道ギニア大統領グエマ(Teodoro Obiang Nguema):1979年??
・エチオピア首相ゼナウィ(Meles Zenawi):1991年??、ただし、1991??95年は暫定大統領。
・エリトリア大統領アフエルキ(Isaias Afwerki):エチオピアからの独立時(1993年)??
(以上、http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/04/21/AR2006042101767_pf.html(4月23日アクセス)による。なお、カリモフとニヤーゾフは、ワシントンポストの上掲記事にも出てくる。)(注2)
(注1)先般、独裁者の地位から転落したばかりだ(コラム#1209)。
(注2)後の方のワシントンポスト記事には、ウガンダの反政府ゲリラの指導者兼新興宗教教祖のコーニー(Joseph Kony Leader, Lord’s Resistance Army)も登場するが、彼は国家首脳ではないので、除いた。ただし、彼のせいで、ウガンダでは既に20万人もの人々が命を落としているという。機会があれば、改めてこのコーニーについて取り上げてみたい。
(3)コメント
以上のリストは網羅的なものではありませんが、この二つのワシントンポスト記事に、中共やベトナムが登場しないことはイミシンです。
これは、米国の政府もマスコミも、現在のトウ小平亡き後の中共やホーチミン亡き後のベトナム、それに(恐らく)スターリン亡き後のソ連は、一党独裁ではあっても、個人独裁ではない、という認識だからでしょう。
このような考え方からすれば、個人独裁のキューバや北朝鮮に対して自由・民主主義陣営が経済制裁を行うのは当然だ、ということになります(注3)。
(注3)ハベル(Vaclav Havel)元チェコスロバキア大統領、オルブライト元米国務長官のほか、フランスの哲学者、ハンガリーの元大統領、リトワニアの元大統領、ポーランドの雑誌編集長が共同論考で、カストロによる人権蹂躙を咎め、EUのこれまでの対キューバ宥和策を厳しく批判している(http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2006/05/22/2003309506。5月22日アクセス)。この批判は傾聴に値する。村上龍氏等、日本のキューバに甘い有識者の諸君にも聞こえたかな?
(続く)