太田述正コラム#1298(2006.6.15)
<中共の恥部(その3)>
(例の創価学会がらみの裁判の移送先の地裁での第一回公判期日が6月27日(午後)に決まりました。当日は、次回以降の期日の指定が行われるだけなので、出席するかどうかはまだ決めていません。)
4 お粗末な軍
(1)事故の頻発
中共の海軍は、2003年4月(?)に在来型潜水艦(注3)の事故で乗組員70人全員を失いましたが、当時まだ中央軍事委員会主席であった江沢民が、なくなった乗組員及びその家族に弔意電を発し、話題になりました(http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2003&d=0503&f=general_0503_001.shtml、及びhttp://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2003&d=0503&f=politics_0503_001.shtml(どちらも6月15日アクセス))。
(注3)「035型??明」級潜水艦。ソ連のロメオ型がモデル。
中共では軍の事故は隠蔽されるのが通例であるところ、亡くなった人数が多すぎ、マスコミの自由度の拡大やインターネットの普及を考えれば、到底隠しきれないと当局が判断したのだろう、といった論評がなされたことを記憶しています。
中共の在来型潜水艦と言えば、昨2005年の5月にも南シナ海で潜航中火災と見られる事故が発生し、航行不能となり、引き揚げられた後基地まで曳航される、という事故が起きたことを米軍が確認しています(http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__1188482/detail。6月15日アクセス)。
軍用機の墜落事故も頻発している可能性が高いと思われます。
福建省福州市の日系工場近くに6月12日、中国の国産戦闘機「殲7」とみられる軍用機が墜落し、パイロットはパラシュートで脱出し無事だったけれど、工場の守衛1人が死亡、付近にいたバイクの男性が行方不明となったと香港紙が報じました。
この報道を受けて、広東省広州市の日本の総領事館が調査を始めたところ、墜落はあったとみられるものの、中国当局が箝口令を敷いているとみられる上、総領事館が把握していない進出企業もあり、日系工場への被害は確認できていない、ということから、隠蔽された墜落事故が他にも沢山あるであろうことが推測できるのです。
(以上、事実関係はhttp://www.sankei.co.jp/news/060614/kok109.htm(6月15日アクセス)による。)
最近の大型軍用機の墜落事故としては、香港紙が報じたところの、6月4日に安徽省(Anhui Province)で40人の乗員全員が亡くなった、最新の空中警戒管制機(AWACS=airborne warning and control system)とみられる国産軍用機・・おそらくKJ-2000・・の墜落事故があります。
同型機4機中の1機が失われたこともさることながら、35名の航空・電子機器の専門技術者が死亡した損失には計り知れないものがあると考えられています(注4)。
(以上、http://www.nytimes.com/2006/06/07/world/asia/07china.html?pagewanted=print(6月8日アクセス)による。)
(注4)中共は、かつてイスラエル・フランス・英国・ロシアからAWACS技術を購入しようとしたが、米国の強硬な反対で実現せず、自前で開発することを余儀なくされた。KJ-2000はロシアのイリューシン(IL)–76輸送機を空中警戒管制機用に改造したものだ。このほか中共空軍は、国産のYun-8輸送機に警戒管制用レーダーを搭載する試みも行っている。
墜落した空中警戒管制機に沢山の航空・電子機器専門技術者が搭乗していたのは、電波を地上局に飛ばさずにシステムのテストを行うためであると考えられている。電波を飛ばすと米国によってシステムの能力を把握されてしまうからだ。
中共は、有人宇宙飛行を行いうる高いロケット技術を持っていることはご存じのとおりですが、一国の軍事工業力の水準を示す潜水艦や戦闘機について、事故が多発するようでは、軍事工業力は弱体であると見られても仕方がありませんし、空中警戒管制機の事故は、中共の電子技術と民生用航空機製造(改造)・メンテナンス・運用能力が依然発展途上国並であることを示しています。
(続く)