太田述正コラム#1301(2006.6.17)
<中共の恥部(その4)>
(2)軍人の腐敗
4月10日に、中共の5人の海軍副司令官(一説には海軍副参謀長)の一人で全人代議員(一説には中央軍事委員会委員)で海軍中将の王守業(Wang Shouye。62歳)は、彼が陸軍将官として、軍全体の後勤部(兵站部)副部長であった1997??2001年の間に1億2,000万元(1,500万米ドル)注5)の賄賂を業者から受け取った(一説には公金を横領した)として軍法会議で死刑を宣告されました。(刑の執行は免除された。)
(注5)一説には1億6,000万元(1,900万米ドル)
王は収賄(一説には横領)の嫌疑がかけられた軍人としてはこれまでの最高位の人物です。
王の横領(一説には横領)には、4人の陸軍少将と7人の陸軍上級大佐が関わっており、この11人は懲戒免職ないし降格されました。
王は妾を5人も持っており、彼女たちに1,200万元(150万米ドル)以上つぎ込んでいましたが、そのうちの1人からのカネの無心を断ったため、王の収賄(一説には横領)の事実を告げ口されたようです。
この事件については、香港の新聞やロイター電等が報じているだけで、中共本土内では、一切報道がなされていません。漏れ聞こえてくる情報だからでしょう、事実関係がはっきりしない部分があり、だからこそ、「一説には・・」と記さざるを得ませんでした。
ちなみに昨年には、空軍司令学校校長で全人代議員で空軍少将の劉广智(Liu Guangzhi)が、昇任を願う部下達から賄賂を受け取っていたため(公表はカネにからむ不祥事のため)、校長を懲戒免職され、全人代からも追放され、13年の刑を宣告されています。
(以上、http://www.guardian.co.uk/china/story/0,,1797774,00.html(6月15日アクセス)、及びhttp://www.theepochtimes.com/news/6-5-19/41696.html、http://in.today.reuters.com/news/newsArticle.aspx?type=worldNews&storyID=2006-06-14T175742Z_01_NOOTR_RTRJONC_0_India-254643-1.xml(どちらも6月16日アクセス)による。)
1998年に軍がホテル・カラオケバー・劇場等を保有することを禁じられて(ガーディアン上掲)からも、中共の軍人はカネの世界との腐れ縁が断ち切れないでいるようです。
それにしても、王の事件が中共本土では報道されない、というのですから、中共当局が本気で役人や軍人のカネに絡む不祥事を根絶しようとしているのか疑問です。
いずれにせよ、「漏れ聞こえてくる」軍人の不祥事情報は氷山の一角と見るべきでしょう。
もう一つ、世界の軍事的常識に反することに、王は陸軍の将官から海軍の将官に転じています。
私の友人の周伯栄(Zhou Borong。コラム#1075等)も、陸軍上級大佐から海軍少将に転じていますが、これよりもひどい話です。将官クラスにもなって、統合部隊の長ないし副になるのならいざ知らず、陸軍から海軍に転じて使い物になるとは到底思えません。
(3)結論
中共の軍は、装備の面でも人の面でも、相当お粗末である、と言えそうです。
こういうことからも、これまで何度も申し上げてきているように、少なくとも現在及び近い将来においては、中共の軍事力は、(その核弾道弾を除き、)日本にとっては脅威ではありませんし、いわんや米国にとっては脅威ではないのです(注6)。
(注6)よくまとまっている最新の米国人による小論として、http://www.slate.com/id/2141966/(5月28日アクセス)がある。
5 恐るべき精神病院
(続く)