太田述正コラム#13312006.7.3

<朝日の記事>

1 始めに

 朝起きたら、私を中共に連れて行ってくれた日中交流人士から電話がかかってきて、朝日新聞の一面に仙台防衛施設局での政治家がらみのひどい話が載っていますよ、と言われてあわてました。(朝日の電子版には載っていない。)

 うちは日本経済新聞だからです。

 そのうち、各種メディアから問い合わせが殺到し、今日こそ、記事等の過去ダウンロード分の読み残しが読み終えられるかと期待していたのに、それどころか、まだ、本日分のダウンロードすらできない状況です。

 

2 私の感想

 (1)その1

 とにかく、自民党系政治家の口利き、特にその役所の大臣や政務次官等をやった政治家による違法ないし不当な口利きがどの役所においても日常的に行われており、その口利きに役所が「真摯」に対応していることなど、役人をやった人間にとっては常識の部類に属すわけで、あんな話が今更のようにニュースになり、しかも新聞の一面を飾るなんて、不思議で仕方がありません。

 いずれにせよ、ここで重要なのは、自民党系の政治家や役人もある意味では被害者だ、という点です。

 支援者等から違法ないし不当な依頼を受けた場合でも、それを役所につながなければ、その支援者等からの票や政治献金等がなくなるだけではなく、そのうわさはあっという間に広まり、次の選挙では落選する懼れが出てきます。

 また、政治家からの違法ないし不当な口利きに「真摯」に対応しなければ、役人は、その政治家が現役の大臣や政務次官等を動かして、その役人を左遷するかもしれない以上、「真摯」に対応せざるをえないわけです。

 最も悪いのは有権者である一般国民です。

 自民党系政治家に口利きを依頼してきたのも一般国民ですし、そもそも自民党の一党支配を半世紀にわたって維持してきたのも一般国民です。

 政治家や役人を、こんな違法ないし不当かつ非生産的な裏業務から解放し、本来業務に専念させるためには、どんなにひどい野党であろうと、本格的な政権交代を図る以外に方法はないのです。

 本格的な政権交代が実現すれば、野党に転落した自民党系政治家は、昔取った杵柄で、政権政党の政治家の口利き活動に目を光らせ、違法ないし不当な口利きの防止及び糾弾に努めることは必至だからです。

 

 (2)その2

 だからと言って、政治家と役人が免責されるわけではありません。

 そこには自ずから責任の軽重があります。

 政治家は国民の選良であり、国会は国権の最高機関です。

 当然、責任は最も重い、と言わざるをえません。

 役人も、キャリアと非キャリアとでは違います。

 特権的地位が与えられているキャリア・・ここでは、文系の狭義のキャリアを指している・・の責任は非キャリアよりも重い、と考えます。実際問題、非キャリアは、キャリアの作ったシステムの運用者に過ぎません。

 政治家からの違法ないし不当な口利きに対処するシステムにしても、例えば、防衛施設庁の建設部系統について言えば、「xxという会社をよろしく」と政治家から口利きがあれば、この会社が資格要件を満たしていないという例外的かつ非常識なケースを除けば、指名競争入札において指名する、というルールをつくったのは防衛庁の(内局)キャリアであるはずです。

 指名する、というのは大変な優遇措置なのです。

というのは、つい最近まで指名競争入札は100%近く自主的な談合の下で行われており、指名すれば、談合の民間仕切り屋がそのことを配慮して、何回か後には必ず受注させてくれるであろうからです。

何か役所で不祥事が起こった時、責任の最も重い政治家、そして政治家に次いで責任の重いキャリア官僚には手を触れずに、非キャリアの処罰だけでお茶を濁すことが余りに多すぎることはまことに残念に思います。