太田述正コラム#13322006.7.4

<朝日の記事(続)>

1 始めに

 連日お断りばかりで申し訳ありませんが、まだ朝日の記事

http://news.goo.ne.jp/news/asahi/shakai/20060703/K2006070204140.html 。ただし記事全体の一部)の余波で席を温める暇もありません。

 有料購読者でコラムが届いていない方や、会費を振り込んだのに、希望したバックナンバーが送られてきていない方があったら、お申し出ください。

 また、そば屋の出前ではありませんが、85人目の有料講読申込者の方に、拙著をお送りするのも遅れておりますが、あしからず。

 こういうわけで、本日も無料版をお届けします。

2 朝日の記事に対する防衛庁の反応

 「守屋武昌防衛事務次官は3日の記者会見で、防衛施設庁の仙台防衛施設局元幹部が在職中、同局発注の建設工事や用地買収をめぐり、国会議員から「口利き」を受けたとするメモを作成していたとの報道について、「地元を抱える国会議員から業務に関して照会や陳情はある」と述べた。その上で「関係法令に基づき適切に業務を遂行している」と話し、問題がないと強調した。さらに、施設庁発注工事の指名業者登録をめぐり、防衛庁が業者側からの陳情を受けることについて、「仕事を希望する会社は審査を経て、指名登録業者になる。登録業者になったからといって、必ず落札する関係にはならない」と述べた。」(2006/07/03 17:52:39 NJ079 時事通信)

とのことです。

 このような記事が出ることは、かねてから防衛庁当局にとって「想定の範囲内」だったようで、上記守屋発言は、6月15日の同じく守屋次官による定例記者会見の際の発言とほぼ同じであり、想定問答が、施設庁官製談合問題が明るみ出た直後に既につくられていたことをうかがわせます。

 これまでの私のコラムを読んでこられた方にはお分かりのように、この発言には三つのウソがあります。

 第一のウソは、国会議員からの照会や陳情は「業務に関」するものではなく、特定の業者に関するものであることです。

 第二のウソは、陳情等を受けた場合、「適切に業務を遂行」せず、自動的に指名業者にしていることです。

 第三のウソは、「指名・・業者になったからといって、必ず落札する関係にはならない」のは、民民談合が行われていない架空の状況下の話であり、つい最近まで民民談合(うち一部は官製談合)がほぼ全ての指名競争入札で行われていたことを想起すれば、1回でも指名されたら官側のおすみつきがこの業者に与えられたと民間の談合仕切り役が認識し、この業者が早晩指名・落札に至ることは必至であることです。

 一体このような、関係者にとっては周知の真実が明らかになるのはいつのことなのでしょうか。

3 コラム#1331をめぐって

 (1)読者によるコラム#1331批判(ホームページの掲示板に転載済。ほんの少し手を入れた。)

コラム#1331の中で気になったことが2つありましたので一言。

1.政治家を選んだのは「一般国民」とのこと

 もう少し分析してもらいたい。利益志向に走った人、つまり自分の欲を将来的に増長するために、政治家を利用しようとしている人は国民の一部に過ぎず、決して一般国民ではない。「一般国民」とよく政治家も発言するが、迷惑な話である。

2.政治家も気の毒とのこと

 政治家が何で気の毒なのか。

欲、金、権力、地位等に自分の人生を掛けた政治家が欲のある国民に動かされて居るだけであり、欲と欲がうごめいて居るのが、日本国全般だと考えては困ります。

村会議員から国会議員まで、その程度の政治家しか居ないのが現状なのは非常に淋しい限りです。

(2)私のお答え

 戦後日本は経済至上主義の吉田ドクトリンを国是として墨守してきました。

 そうである以上、「利益志向に走った人」が一般国民に多く、また、「欲、金、権力、地位等に自分の人生を掛けた」人が政治家に多いことに何の不思議もありません。

 政治家だけが程度が低いのではなく、まさに国民の程度相応の政治家を戦後日本は持ってきたのです。

 以下は補足です。

 朝日の記事を見ると、一年ちょっとの間に実に4名の元防衛庁長官が仙台防衛施設局の管轄の工事に特定企業を受注させるべく口利きを行っていたことになりますが、もっと期間を長くとり、全国で考えれば、施設庁建設部関係だけでも、恐らく元防衛庁長官全員が揃い踏みするのではないでしょうか。これを防衛庁全体、更には全省庁にまで拡大して考えれば、自民党系の大臣経験者は一人残らず、違法ないし不当な口利き業に勤しんでいる、と考えざるをえません。

 大臣になることは、自民党系政治家全員にとっての目標ですから、これは、自民党系政治家はことごとく違法ないし不当な口利きをやっているかその予備軍である、つまりは自民党系政治家は「欲、金、権力、地位等に自分の人生を掛けた」人ばかりである、ということを意味します。

事実上半世紀にわたって自民党を政権の座につけ続けてくることによって、ここまで自民党系政治家の程度を劣化させてしまった、圧倒的多数の日本国民・・自民党系政治家に票を投じてきた国民と棄権することによって結果として自民党系政治家の選出に反対してこなかった国民・・の責任は重大です。

 この圧倒的多数の国民がルソーの言うところの、日本の一般意思(コラム#66)を過去半世紀間にわたって形成してきたのです。

 このような意味において、私は「一般国民」という言葉を使ったのです。