太田述正コラム#1341(2006.7.12)
<正気に戻った韓国(続)(その1)>
1 正気に戻っていない韓国?
韓国が反北朝鮮親日という正気に戻ったとした私の指摘に一見反するような韓国政府の言動が見られます。
韓国の大統領官邸は9日、北朝鮮のミサイル発射問題に関する声明を発表、「無理に日本のように未明から大騒ぎする必要はない」と述べました
(http://www.sankei.co.jp/news/060709/kok090.htm、http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/07/10/20060710000007.html
(どちらも7月10日アクセス))(注1)。
(注1)朝鮮日報は、これは対米批判でもある、と正しく指摘している
(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/07/10/20060710000006.html。7月10日アクセス)
日本政府は韓国政府のこの見解表明に反発しました
(http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20060711k0000m010119000c.html。7月11日アクセス)。
ところが、更に韓国の大統領官邸は11日、日本政府部内で喧伝され始めた対北朝鮮先制攻撃論について、「日本政府の閣僚たちが相次いで韓半島(朝鮮半島)に対する先制攻撃の可能性と武力行使の正当性を取り上げているのは、それ自体が深刻な事態<とし>、韓半島と北東アジアの平和を損なう重大な脅迫的発言<と、日本政府を批判し、>これは、日本が侵略主義的な性向を現したものとして大いに警戒する必要がある<とし、>北朝鮮のミサイル発射を口実に“先制攻撃”のような危険かつ挑発的な妄言で韓半島の危機をさらに増幅させ、軍事大国化の名分にしようとする日本の政治家のリーダーたちのごう慢さと妄動に対し、強く対応していく」との見解を表明したのです
(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/07/12/20060712000006.html。7月12日アクセス)
この日韓の軋轢には米国のメディアも関心を寄せており、ワシントンポストもニューヨークタイムスも大きく取り上げています
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/07/10/AR2006071000106_pf.html、
及びhttp://www.nytimes.com/2006/07/11/world/asia/11korea.html?pagewanted=print、
http://www.nytimes.com/2006/07/11/world/asia/11cnd-missile.html?pagewanted=print
(いずれも7月12日アクセス)(注2)。
(注2)この2紙に比べ、ロサンゼルスタイムスは、早い時点から、韓国政府の反日的言辞は米国に向けられたものでもあることを正しく指摘している
7月10日アクセス)。
2 やはり韓国は正気に戻っている
(1)ノ・ムヒョンの沈黙
韓国のノ・ムヒョン大統領(大統領官邸)は、テポドン等が発射された7月5日から丸4日間、沈黙を続けました
(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/07/08/20060708000016.html。7月9日アクセス)。
これは、ノ・ムヒョン政権が受けた衝撃の大きさを示すものです。
これはノ・ムヒョン政権が、金大中政権以来の対北朝鮮太陽政策が無惨な失敗に終わったことを痛感しつつも、ストレートにそうは言えないので、沈黙を続けざるをえなかったのだ、と私は見ています。
沈思黙考あるいは鳩首協議の結果が、斜に構えた上記の9日の見解表明であり、次いで日本政府部内の対北朝鮮先制攻撃論に対するためにするような上記の11日の見解表明である、ということです。
(2)韓国は対北朝鮮制裁を発動した
重要なのは、現実に何を韓国政府がやったかです。
韓国政府は、日本政府が国連安保理に北朝鮮制裁決議案を提出した7日、(翌8日に肥料を積んで出港する分は止めないけれど)10万トンの肥料、50万トンの米の対北朝鮮人道援助は、ミサイル問題解決まで凍結することを決定しました
(http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/5156464.stm。7月8日アクセス)。
また、(近々実施予定の釜山での南北閣僚級経済協力協議は予定通り実施するけれど、)テポドン等発射数日前に北朝鮮から提案のあった軍事協議を拒否することも同じ日に決めました
(http://www.nytimes.com/2006/07/08/world/asia/08nations.html?_r=1&oref=slogin&pagewanted=print。7月9日アクセス)。
だからこそ、中共に続いて韓国を訪問したヒル(Christopher Hill)米国務次官補は、韓国政府がやっていることに満足した、と言った(ロサンゼルスタイムス前掲)のです。
更にその後韓国政府は、上記南北閣僚級協議においては、初日に主宰国の首相が晩餐会が行う慣例であったにもかかわらず、今回は韓国の首相ではなく、格下の統一部長官に執り行わせることにしたところです
(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/07/11/20060711000004.html。7月11日アクセス)。
(続く)