太田述正コラム#1479(2006.10.31)
<幸福の経済学(その2)>
3 幸福の経済学の到達点
英ワリック大学(University of Warwick)教授のオズワルド(Andrew Oswald。1953年??)は、今年8月に、幸福の経済学の現時点での到達点をまとめたペーパー
(Paper – PDF 344kb(
http://www.andrewoswald.com/
)から10月31日アクセス)を発表しているところ、その要点は次のとおりです。
幸福度が高いのは、女性、友達の沢山いる人、若者と老人、結婚ないし同棲している人々、高学歴者、健康な人、高収入の人、だ。ちなみに、結婚ないし同棲している人や高収入の人の方がそうでない人より健康だ。
幸福度が高い人は幸福度が高い配偶者を持っていることが多い。
幸福度が特に低いのは、失業者、離婚したばかりか同棲を解消したばかりの人、だ。
子供の存在は幸福度には影響がない。
仕事のストレスや鬱の度合いがここ何十年かどんどん増している。
騒音のレベルや環境の質は幸福度に大いに関係する。
経済成長はその国の国民全体の幸福度を必ずしも高めない。また、所得の増加による幸福度の上昇は、貧しい人の方が大きい。
すなわち、イースターリンのパラドックス(上述)は確かに存在するのであって、これは、収入の増加が国民全体や個々の人にもたらす幸福度は「収穫低減」するからではないか、と考えられている。
以上から、個人が幸福になるためには、良い友達を沢山持ち、幸せな良い配偶者を持つように努め、悪いことは思い出さず良いことを思い出すように心がけ、健康に留意することだ。更に言えば、他人と我が身を比べないようにする、何事も節度をわきまえる、超過勤務が少なく通勤時間が短い職場に勤める、といったことが大切だ。
また、社会全体が幸福になるためには、公共財や環境の改善を図ることが重要だ。
4 コメント
オズワルドは、以上は、幸福の経済学者達が、心理学者や医学者の助けを借りつつ、先進国や発展途上国を広く調査した成果であると言っています。
おおむねそんなところかな、と思いますが、「子供の存在は幸福度には影響がない」という研究「成果」には、私はアングロサクソン的バイアス(コラム#89)を感じます。
なお、女性は幸福になりやすい、という点は、ウェルドンの言っていること(コラム#1475)と符合しますね。
なるほど、最近の日本で、女性になりたい人の方が多いはずです。
(完)