太田述正コラム#1511(2006.11.16)
<美人論(その1)>

1 始めに

 ワシントンポストの編集委員(staff writer)のDavid Von Drehle(ドイツ語読みならドレーレだが、英語読みなら何て読む?)が書いたLooking Good という、記事(
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/11/08/AR2006110801477_pf.html
。11月14日アクセス)を読んだ時、紹介されていたところの、科学的な美の理論に基づいた美人論にびっくりしました。

 しかし、ひょっとして知らなかったのは自分だけかも知れないと不安になり、ウィキペディアの「美」http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%BE%8E(日本語)、及びhttp://en.wikipedia.org/wiki/Beauty(英語)、並びに「美人」http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%BE%8E%E4%BA%BA(日本語)にあたってみました(いずれも11月16日アクセス)。

 その結果、これらのどこにも上記記事に書いてあった話が出てこないので、これはぜひ皆さんに紹介すべきだと考えた次第です。
 最初のあたりは数学が出てきますが、それから先には出てこないので、しばらく我慢してください。
 (以下、特に断っていない限り、ワシントンポスト上掲による。)

2 科学的な美の理論

 南カリフォルニアの整形外科医のマルカート(Stephen Marquardt)は、美とは、われわれのDNAに組み込まれている観念であると主張している。

 単純な例から始めれば、美人になればなるほど体が左右対称であることが分かっている。
 最近ポーランドで行われた実験によれば、24歳から36歳までの女性で、左右の薬指の長さの違いが2ミリ以上違う者を左右非対称とみなして、左右対称の者と比較したところ、生殖能力を司るホルモンestradiolの量が、前者のグループは後者のグループより13%少なかった。
 このうち、経済状況が悪く生活が厳しいのでホルモン分泌が異常である可能性がある農村地帯の女性達を除外したところ、左右非対称のグループのestradiolの量は左右対称のグループより28%も少なかった。

 マルカートは、美人とは、顔が左右対称であって、かつ目、鼻、唇等の配列が黄金比(Golden Mean=Golden Section=黄金分割)(注1)に合致している者であることを発見し、ここから、美とは黄金比及び黄金比と密接な関係のあるフィボナッチ数(Fibonacci numbers)(注2)で構成されたものに係る観念である、という理論(
http://goldennumber.net/
。11月14日アクセス)を導き出した。

 (注1)黄金比とは、線分ABをPで分けるとき、AB:AP = AP:PB または、AB×PB=AP2 となる比率を指す。数学的には、1:(√5+1)/2=1:1.618・・・、のこと。これをφ(=Φ=ファイ)と表示することがある。面白いことに、1:φ=0.φ:1 なのだ。貝殻の渦や細胞の成長にも見られ、日本の官製はがきの縦横の比率もこれに近い。
http://www.nowdo.com/production/j_golden_sec.htm。11月16日アクセス)

 (注2)フィボナッチ数とは、1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144, 233, 377, 610, 987, 1597, 2584, 4181, 6765, 10946, 17711, 28657… という、どの項もその前の2つの項の和となっている数列の各項の数を指す。フィボナッチ数(数列)とφとの関係式は、テキストファイルでは書き表せないので、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%9C%E3%83%8A%E3%83%83%E3%83%81%E6%95%B0
(11月16日アクセス)を参照のこと。

(続く)