太田述正コラム#1533(2006.11.27)
<ポロニウム殺人事件と英露関係>(有料→2007.4.17公開))
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1 始めに
ポロニウム殺人事件発生以来、英露関係はにわかに険悪化してきており、英露ミニ冷戦時代が到来しつつある観があります。
2 険悪化する英露関係
(1)政治家の言等
まだ、英国の警察当局はこれを殺人事件と呼ぶことすら正式には避けているというのに、英国のヘイン(Peter Hain)北アイルランド担当相は、「ロシアにおいてプーチン大統領は、就任時の混沌の中から、国民の結束に成功し、経済的安定を達成するという業績を挙げた」が、そのロシアにおいて、「恥ずべき殺害が多数行われてきた」等、「個人の自由と民主主義に対する甚大な攻撃が行われてきたこと」は、「その業績に暗い影を投げかけている」とし、「プーチンが民主主義的な考え方を再びとることが強く求められている」と語りました。
また、ハウエルス(Kim Howells)外務担当閣外相は、帰化英国人が「英国の街中で外国人によって殺された」と述べました。
野党では、保守党のフォックス(Liam Fox)影の国防相は、英国市民が自国内で殺害されるなどということは容認できない、と述べました。ちなみに保守党は、ポロニウム殺人事件で議会審議を行うよう政府に求めています。
自由民主党党首のキャンベル(Sir Menzies Campbell)は、政府はプーチンに対して「もっと厳しく」対処しなければならないとし、仮にリトヴィネンコの死が「国家テロ」によるものだと判明したら、ロシアとの関係をどうするかを慎重に考えなければならない、と語りました。
ブレア首相自身は、本件に関してまだ何も言っていませんが、今年初めまでは、プーチンに対し敬意さえ払っておれば、何とかなるという見方をしていたけれど、次第にプーチンはロシアを後戻りができないくらい非民主主義的な方向に導きつつあるのではないか、という疑念を抱くに至ったようです。
ブレアが、新世代の原子力発電所群の建設にゴーサインを出したり、ノルウェーとのエネルギー協定に調印したのも、ロシアの石油と天然ガスに英国が依存しすぎるとエネルギー安全保障が危うくなるという認識に基づいているとされています。
そこへ、今回の事件が起こったわけです。
(2)あるジャーナリストの言
英デイリー・テレグラフやロンドン・イブニング・スタンダードの編集者を歴任したジャーナリストのヘースティングス(Max Hastings)は、概要次のような激しい内容のコラムをガーディアンに寄せました。
ロシアは、ギャング的文化を制度化しつつある。
それは、抑圧と究極的には経済破綻、更には恐怖と他の世界からの疎外をロシアにもたらすだろう。
今、ロシア内外に住むロシア人でまともな形で金持ちになった者はほとんどいない。
金持ちになる常道は、巨大なスケールの腐敗・暴力・悪徳と許可された窃盗だ。
ロシアは常に欧州に対して懼れと妬みと怒りの入り交じった感情を抱いてきた。
プーチンのやることなすこと、すべては外の世界から敬意を払われたい、にもかかわらず欧米が自分達を見下しているように思えることへの怒り、に発しているのだ。ロシア国民も同じだ。だから、彼らの大部分がプーチンの諸政策を支持しているのだ。
要するにロシア人は傲慢さと劣等感の複合物なのだ。
そのロシアで、プーチンの友人や支持者達は安全に豊かに暮らしているが、プーチンの敵は次々にひどい形で死亡して行く。これは偶然ではありえない。
プーチンはかつてのソ連の力と影響力を復活させようとしているのだ。
そんなロシアで自由と民主主義が定着することなどありえない。
ソ連時代の秘密文書が冷戦崩壊後公開されるようになったが、それが今ではほとんど非公開に戻されている。
ソ連の崩壊は、世界は自由の勝利と受け止めたが、プーチンはこれを20世紀における人類最大の災害だと言ってのけた人物なのだ。
(以上、
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/6186194.stm、
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/story/0,,1957729,00.html、http://www.guardian.co.uk/russia/article/0,,1957873,00.html
(いずれも11月27日アクセス)による。)