太田述正コラム#1545(2006.12.3)
<中東の分断最前線のレバノン>(有料)
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1 始めに
イラクの状況は複雑であり、シーア派とスンニ派との間の対立・内戦状況であるとは必ずしも言えない、と(??#1541で)申し上げたところですが、レバノンこそ、中東全般のシーア派とスンニ派の対立の最前線の様相を帯びつつあります。
2 レバノンにおけるシーア派とスンニ派の対峙状況
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1970年半ばから1990年まで続いたレバノンでの前回の内戦は、単純化して言えば、親イスラエル・反パレスティナのキリスト教勢力と反イスラエル・親パレスティナのイスラム教勢力との間の内戦<でし>た。レバノン情勢が変化した背景には、シーア派の人口の相対的増大があ<ります。>
3 対立の最前線
(1)始めに
猫の額のような国土と400万人弱の人口しかないないレバノンが内戦に突入しようがしまいが、どうでもよい、というわけにはいきません。
レバノンが内戦に突入した場合、それが中東全域のシーア派とスンニ派の紛争へと発展しかねないからです。
それがどうしてなのかを説明しましょう。
(2)スンニ派側の動き
シーア派側は、・・もともとスンニ派側の人間が多い治安部隊(Internal Security Forces)に目をつけ、ほぼスンニ派側の人間ばかりで治安部隊を11,000人増強して約2倍にふくらませ、来るべきシーア派側との内戦に備えています。
約1ヶ月前にこの増強部隊に武器が供給されましたが、その費用を出したのは、スンニ派国であるアラブ首長国連邦・・です。
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(3)シーア派側の動き
レバント紛争の際、700人のソマリアのイスラム勢力・・が、レバノンにやってきてヒズボラとともにイスラエルと戦ったことが、11月中旬、・・明らかに<なり>ました。
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そのお返しとして、ヒズボラからは、その庇護者であるイランとシリアを通じてソマリアのイスラム勢力に訓練を施し、武器を提供したというのです。
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また、レバント紛争の北方戦域(レバノン戦域)での停戦以降、イランはシリアを通じてヒズボラへの兵器の密輸補給に努めており、すでに、この紛争でヒズボラが発射したロケットの半分くらいは回復したとされています。
また、ダマスカスとレバノンのイラン大使館は、ヒズボラに指令を送る指揮通信中枢の役割を果たしていることは明らかだ、という情報もあります。
これら情報を調べ、発信しているのが、イスラエルだけではなく、サウディアラビアであることは、サウディアラビアがスンニ派のいわば旗頭として、いかにシーア派勢力の伸張に神経をとがらしているかを示しています。
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更に、・・米国・・は、・・イラクのシーア派民兵の一つである、サドル・・師率いる・・マーディ軍の要員1,000??2,000人が、今年、レバノン内でヒズボラによって訓練を受け・・イランもシリアもこれに一枚かんでいると<言い出しています。>
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4 感想
せっかく、レバント紛争の南方戦域(ガザ戦域)でも停戦が成立し、レバント紛争がようやく終わったばかりだというのに、新たに、今度は中東全域を巻き込みかねない紛争がレバノンでいつ起こっても不思議でない状況です。
イスラエルに心底、同情せざるを得ません。