太田述正コラム#1549(2006.12.6)
<中東の分断最前線のレバノン(続)>(有料)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――<コラム1548の補足>
ブレア首相はまた、米国の核抑止力に依存するだけでは万全ではないとし、「英国が脅迫されても米国が脅迫されていない状況における追加的保険としての意味も、英国の独立した抑止力は持っている。・・このような状況が生起するようなことはほとんど考えられないが、絶対無いとは言い切れない。」と語りました(
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-trident5dec05,1,7084084,print.story?coll=la-headlines-world
。12月6日アクセス)。
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太田様、来年もお願い致します。該博な知識、広範なカバー、精力的な情報収集に感銘しています。精読して、細かくチェックする時間がとれないのが残念です。引用文献の表示や、過去の掲載場所にいちいちチェックが入れられないという意味ですが、長い間読んでいると、自ずと理解はできるような気が致します。主張と平行して、別の見解の紹介と評価があると好いと思います。
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(本篇は、コラム#1545の続きです。)
1 ヒズボラ支持者の考え
中東全域を覆うスンニ派とシーア派の対立の最前線であるレバノンの、シーア派の中核であるヒズボラ支持者は一体どんな考え持っているのでしょうか。
・・
2 ヒズボラが攻勢に出た理由
ヒズボラ支持者がこのような現実から遊離した考えを抱いているのは、ヒズボラによるインドクトリネーションの結果でもあるのでしょうが、このようなヒズボラ支持者の考えが、イランやシリアの「指導」とあいまって、ヒズボラを、このたびのレバノン政府打倒闘争に向かわせた、と見てよいのではないでしょうか・・。
つまり、イスラエルとの戦争に勝利したというウソが暴かれることを懼れるがゆえに、ヒズボラはレバノン国内で攻勢に打って出た、と私は考えているのです。
内政での失敗に対する追及を避けるため対外戦争で打って出る、ということは、一国の政府がよくやる手ですが、その逆をヒズボラはやった、ということです。
いくらシーア派の人口が急速に増えつつあるとは言っても、推定で、レバノン総人口の30%しか占めておらず、スンニ派と拮抗する程度でしかないシーア派・・の代表格たるヒズボラが、このたびの戦いに勝算ありと見て戦いの火蓋を切ったのは、現レバノン政権こそ親米であるけれど、・・レバノンのスンニ派も嫌米感情を抱いていることから、スンニ派の相当部分を味方にできると見ているからではないでしょうか。
2 シーア派とスンニ派等の対峙
エジプト・ヨルダン・サウディアラビア等の中東の主要スンニ派諸国やイスラエル、そして欧米諸国は、ヒズボラがレバノン政権打倒に成功するようなことがあれば、その先に待っているのは、キリスト教徒のレバノン大量脱出によるレバノンのイスラム国家化、そしてレバノンのイラン的なシーア派宗政国家への緩慢な変貌であり、中東の戦略バランスはシーア派・・に決定的に傾き、その結果、ヒズボラが再びイスラエルに武力抗争を挑んだり、パレスティナのハマスがイスラエルとの停戦を破棄したり、イラクのシーア派がスンニ派を力で抑えつける方向に動いたり、イランが安んじて核保有へ向けて突っ走ったりする懼れがある、という強い懸念を抱いています。
・・
中東の主要スンニ派諸国中、最も強い危機意識を抱いているのは、イランとペルシャ湾を挟んで向かい合っている、スンニ宗政国家であるサウディアラビアです。
サウディアラビアは、パレスティナのアッバス議長/ファタやレバノン政府等、スンニ派勢力に対し、武器やカネの支援を行っているほか、いざとなれば、石油を大増産して産油国のイランの石油収入を減らしたりすることまで考慮している、と伝えられています。 以上が、レバノンで、シーア派陣営とスンニ派等の陣営が、それぞれヒズボラとレバノン政府を支援する形で内戦が勃発する可能性を否定できないゆえんです。