太田述正コラム#12779(2022.5.29)
<皆さんとディスカッション(続x5184)>

<七氏>

 ホームズは、それまでの警察が「前近代」方法として、怪しい人を単に(適当に)犯人にして処罰していたが、ホームズは証拠を積み上げて犯人を特定する「近代」方法を行い、その違いを見せた。
 もちろん、これが話題とこれまでの警察の適当さを炙り出し、称賛をあびて、かつ、今はもちろん「近代」方法が当たり前とされている。
 そういう意味で、戦後日本の歴史家と呼ばれる者たちの、あまりの適当な「研究」をばさっと切り捨ててきた太田っちは、まさにおーたん・ホームズと言えますな。

<太田>

 感想なのか解答なのか定かじゃありませんが、仮に後者だとすれば、そりゃ違いますよ。
 だって、ホームズは理系で1次資料2次資料併用主義で消去法的アプローチをとるのに対し、私は文系で基本的に2次資料だけに拠り直感的アプローチ・・私の言葉で言うところの、補助線を引いてみるアプローチ・・をとる、という具合に全然異なりますからね。
 (結果論ながら、この私のやり方が、口伝主義の伝統がある日本の歴史を扱うのには向いているわけですが・・。)
 もとより、「よくアブダクションを使う」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%BA ←以上の事実関係
点は共通ですが、これは、「近代」人であれば、みんなそうでしょう。

<US>

 アーサー・バルフォア ではないでしょうか?
 スタートのホームズの小説は、「海軍条約文書事件」。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%B7%E8%BB%8D%E6%9D%A1%E7%B4%84%E6%96%87%E6%9B%B8%E4%BA%8B%E4%BB%B6
 ここから、モデルがアーサー・バルフォア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%95%E3%82%A9%E3%82%A2
の名前が出てきます。
 WIKIを見ると、英国は日本をしてロシアの脅威を防いだという内容が出てきます。
 真の首謀者は、同じように米国をしてロシアの脅威を防ぐことを思いつき属国政策を実施したのではないのでしょうか?
 で、あれば、アーサー・バルフォアは日本が属国となった準首謀者といえるのではないでしょうか?

<太田>

 今まで私が提供したヒント群をもっと生かしていただきたいですね。
 ちょっと反省しているのは、終戦までの日本史についての私の解釈はいまだに私だけの解釈であるところ、そのような解釈に私が到達したのは数年前でしかなく、また、戦後日本の属国化戦略の首謀者が誰かに至っては、その人物を突き止めた・・と言ってよいと思います・・は私だけである上に、それは今年の4月に入ってからだというのに、私が今回皆さんに対して行った問いかけは、この首謀者を私がどうしてつきとめられたかを当てろと言っているに等しい以上、皆さんがすぐ解答を示せないに決まっているじゃないか、ということです。
 とはいえ、皆さんの大部分は、その他の世界中の人々とは違って、「終戦までの日本史についての私の解釈」を御存じのはずであり、その点は大変な強みですが・・。
 もちろん、今、申し上げたこともヒントのつもりなのですが、大して足しにならないばかりか、かえって、より混乱させてしまうかもしれませんね。

<IkIS3yjM>

≫帝国海軍ダメ論は太田日本通史の落穂拾いの対象となる可能性が高いわけですが、≪(コラム#12775。太田)

 同じよう<な問題意識の下でか、>「陸軍幼年学校が存在したのに、なぜ海軍幼年学校は設立されなかったのかを論述した文献はないか」という項目で、調べられ<た人が>います↓

 「・・・(『軍隊教育と国民教育 帝国陸海軍軍学校の研究』(高野邦夫/著 つなん出版 2010)の第二部「陸軍の教育」のp.196に「なぜ、幼年学校を設けたかの理由であるが、これは幕末以来、幕府をはじめ西南雄藩がつきあっていた当時の陸軍強国のフランス、ロシア、プロシア(オーストリア)の制度にならったものだといわれている。」と記載されている。一方、第三部「海軍の教育」のp.361-362には「戦力的にも陸軍が圧倒的に人力にたよっているのに対して、海軍は高度の科学・技術文明の所産である艦艇や飛行機なしには存在・活動し得ないので、人員も“少数精鋭主義”の名の下に平時はギリギリの人数でやっていかざるを得なかったのである。」等、陸軍と海軍の違いについての記述はあるが、幼年学校を設置しなかった理由は確認できなかった。
 なお、海軍の教育としては、『図説総覧 海軍史事典』(小池猪一/編著 国書刊行会 1985)第四部「海軍教育制度沿革史」(七)「海軍特別年少兵制度」のp.229に「長期にわたり且つ特別な教育を行うという海軍にとって画期的な教育制度」として設けられた「海軍特別年少兵制度」についての記載があり、志願者応募年齢は十四歳以上であった。」
https://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000308989
が、中々対象となる文献ないようですね、
 そもそも陸軍幼年学校を扱った文献が極端に少なく、例えば「陸軍幼年学校体制の研究 エリート養成と軍事・教育・政治」野邑 理栄子 (著)は数少ない文献の一つですが海軍との比較はまるでなく唯一目新しいのは「児玉源太郎の『欧洲巡廻報告書』に基づき・・・陸軍幼年学校・・・をめぐる従来の諸説・・・否定し、陸軍幼年学校の構想が児玉の発想によるものだとし、背景に民権的・反政府的な「悪風習」を排除した教育を幼少より施すことで軍人精神教育の強化・徹底をはかろうとしたのだという。」の点でしょうかね。↓

 「陸軍幼年学校体制の研究 エリート養成と軍事・教育・政治」書評」
https://honto.jp/netstore/pd-book_02624747.html

 まさしく縄文的弥生人をつくろうとした。
 いずれにしても陸幼の研究がほぼされていない以上海軍に幼年学校がない理由が謎のままになりそう…。

<太田>

 野邑理栄子本を読まれた、ということですか。
 他にも面白そうな箇所があったら、紹介していただけるとありがたい。

<3COgz.KA>(「たった一人の反乱(避難所)」より)

≫「・・・ロシア軍部隊がここ数日、約50年前に製造されたT62戦車を前線に配備した可能性がある・・・」≪(コラム#12777)

 ・・・The T-62 and T-55 are now mostly used by Russian reserve units for a possible secondary mobilization while some are kept in storage.・・・
https://en.wikipedia.org/wiki/T-62#War_in_Chechnya
 素人常識として、予備役に訓練すらしてない最新最強兵器vs熟練したお古な兵器どっちが組織的につおいかと聞かれて、ミリオタでなくとも勘づくかと思うね。
前者がウ軍で後者が露軍がとった選択。
 露軍がやる気ならオデッサもキエブも陥落路線。
 神風ドローンなんて敗戦フラグのネーミングをプロパガンダに使ってる時点で気付こうな、どっちが負けてるのか。

<太田>

 ウクライナ問題。

 <ヨタってる露軍。↓>
 ・・・The Rosgvardia have previously been described as Putin’s “private army,” but a large group of the national guards’ members were fired after they rejected orders to fight in Ukraine. A military court in Russia’s southern republic of Kabardino-Balkaria assessed Wednesday that the sacking of 115 servicemembers was justified after they appealed the decision,・・
https://www.newsweek.com/putins-private-army-troops-fired-refusing-fight-ukraine-1711142
 <でも、そんな露軍がじりじり押している。↓>
 Russia takes two small cities, aims to widen east Ukraine battle・・・
https://www.csmonitor.com/World/Europe/2022/0528/Russia-takes-two-small-cities-aims-to-widen-east-Ukraine-battle
 <それならいいんだけど。↓>
 「西側諸国「6月反攻」に秘密兵器 ゼレンスキー大統領、東部苦戦に「装備の差」主張 これまでで最も殺傷力が高い榴弾砲供与か 「8月までは一進一退」識者・・・」
https://news.yahoo.co.jp/articles/2e8f13d5173f0c16fb6d218e2430aa77579ad984
 <もっと威勢のいい、なっかむーらサン。↓>
 「中村逸郎教授「ロシアのウクライナ侵攻は限界」と断言  国内は崩壊!?「復興に失敗すれば分裂も」・・・」
https://news.livedoor.com/article/detail/22238050/
 <でも、ゼレンスキーは開戦前までしか領土回復追求しないってさー。ベタオリじゃん。↓>
 Tonight, he said that he didn’t believe all the land seized by Russia since 2014, which includes Crimea, could be recaptured militarily.・・・
https://www.theguardian.com/world/live/2022/may/28/russia-ukraine-war-donbas-will-stay-ukrainian-vows-zelenskiy-as-fighting-rages-in-east-live-updates
 <火事場泥棒にも一応リクツめいたもんはある。↓>
 「・・・トルコが懸念するクルド勢力について、フィンランドのクルド人移民は少数派で国内には約1万5000人しかいない。フィンランド政府はEUのテロ指定に準拠してPKKを非合法として禁じている。その意味ではフィンランド加盟にトルコが反対する理由はクルド人擁護より、ロシアを刺激したくないという思いのほうが強いことがうかがえる。・・・
 スウェーデンはノルウェー同様、長年、海外で人権擁護活動とマイノリティの尊厳を守る活動に専心してきたことから、クルド人難民約10万人を受け入れている。基本的にはEU基準で受け入れを行っており、トルコに次いでPKKをテロ組織に指定した国だ。
 ただ、スウェーデン当局がYPGの政治部門であるクルド民主統一党(PYD)の代表と接触しているとトルコは指摘し、2021年にスウェーデン首相になったアンデション氏の当選にクルド系国会議員の支援が欠かせなかったことを挙げている。アンデション氏の社会民主労働党とPYDは密接な関係にあるとトルコ当局は見ている。
 さらにシリア北部のクルド人支配勢力の政治部門、シリア民主評議会(SDC)ともスウェーデンは協力関係にあるとしている。
 エルドアン氏は、スウェーデンとフィンランドのNATO加盟条件として、PKKとその関連組織に対する公の非難声明を要求している。さらにトルコ政府は、スウェーデンとフィンランドで活動するPKK協力者を取り締まることを望んでいる。・・・
 スウェーデンのアンデション政権は、トルコが要求するテロリスト引き渡しや対トルコ武器禁輸措置の解除に応じる構えは見せていない。・・・」
https://www.msn.com/ja-jp/news/world/%E5%8C%97%E6%AC%A72%E5%9B%BD%E3%81%AEnato%E5%8A%A0%E7%9B%9F-%E5%8F%8D%E5%AF%BE%E3%81%AE%E3%83%88%E3%83%AB%E3%82%B3%E7%84%A1%E8%A6%96%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%81%AC%E8%A8%B3-%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E3%81%A8%E3%82%B9%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%87%E3%83%B3%E3%81%A7%E3%82%82%E4%BA%8B%E6%83%85%E3%81%8C%E7%95%B0%E3%81%AA%E3%82%8B/ar-AAXOANg?ocid=msedgntp&cvid=973caaad29c94d4d82944904581ae5d5

 それでは、その他の記事の紹介です。

 「極左」が先に「女性天皇」を実現。↓

 ‘Empress of terror’: Japanese Red Army founder released from prison–Fusako Shigenobu, who served 20 years for French embassy siege, believed to have masterminded deadly Tel Aviv attack・・・
https://www.theguardian.com/world/2022/may/28/empress-of-terror-japanese-red-army-founder-released-from-prison

 知らんけど、食い物が辛い/甘いということからの類推で、分かり易いんじゃないの?↓

 「なぜ、韓国でベストセラーとなった本が日本でも読まれるのか?・・・」
https://news.yahoo.co.jp/articles/8b2625014fd4835f70d4518aebba6cbcc1735f07

 日・文カルト問題。↓

 <健闘を祈る。終り。↓>
 「「80兆ウォン規模のNAND市場掌握せよ」 米日の攻撃的投資でサムスン・SKの圧倒的優位揺らぐ ・・・」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/05/27/2022052781336.html
 <ご心配なく。↓>
 「韓米日vs朝中ロ…バイデン歴訪で大きくなった「新冷戦」の警告音・・・」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/05/27/2022052781335.html
 <いらはい。↓>
 「日本旅行が「目の前」に…「金浦-羽田、6月15日再開で最終調整」・・・」
https://japanese.joins.com/JArticle/291558

 デッブの勝ち。↓

 「「泣き顔だけど涙が出ていない」。ジョニデ弁護士がアンバー・ハードの“法廷演技”を突く・・・」
https://news.yahoo.co.jp/byline/saruwatariyuki/20220528-00298113

 一応、記録のため、紹介しておく。↓

 「粉ミルクが売っていない!全米で“危機的”不足のワケ バイデン政権の支持にも影響か・・・」
https://www.msn.com/ja-jp/news/world/%E7%B2%89%E3%83%9F%E3%83%AB%E3%82%AF%E3%81%8C%E5%A3%B2%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%AA%E3%81%84-%E5%85%A8%E7%B1%B3%E3%81%A7-%E5%8D%B1%E6%A9%9F%E7%9A%84-%E4%B8%8D%E8%B6%B3%E3%81%AE%E3%83%AF%E3%82%B1-%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%87%E3%83%B3%E6%94%BF%E6%A8%A9%E3%81%AE%E6%94%AF%E6%8C%81%E3%81%AB%E3%82%82%E5%BD%B1%E9%9F%BF%E3%81%8B-%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%A8%E3%83%BC%E3%82%AF%E7%89%B9%E6%B4%BE%E5%93%A1%E3%83%AB%E3%83%9D/ar-AAXQ6em?ocid=msedgntp&cvid=1723ecf24fe4483781acab24f18be255

 中共官民の日本礼賛(日本文明総体継受)記事群だ。↓

 <そうそう。↓>
 「「日本のお米は日本で食べてこそおいしい」のはなぜか・・・日本華僑報網・・・」
https://www.recordchina.co.jp/b894852-s25-c30-d0193.html
 <これも落穂拾いの対象にすべきか?↓>
 「・・・隠元禅師は1673年に入滅したが、その前日に後水尾法皇から「大光普照国師」の諡号を賜わった。日本の皇室はその後、約50年ごとに隠元禅師に新たな諡号を授けており、すでに7回も重なった。最近では今年(2022年)2月に、今上天皇から厳統大師(げんとうたいし)の諡号を授けられた。
 隠元禅師の弟子や孫弟子で、日本の皇室から諡号を授けられた僧侶もいる。しかしそれでも、外国人僧侶が皇室から諡号を授けられることは非常に珍しい。7回も授けられた隠元禅師は特例中の特例だ。このことは、隠元禅師が両国の文化交流に果たした歴史的な貢献が反映されていると考える。
 福建省の黄檗山で成立した仏教を中心とする一連の文化は黄檗文化とも呼ばれる。日本の著名な禅宗研究者である柳田聖山(1922-2006年)は、「近世日本の社会発展は、あらゆる面から見て黄檗文化の影響を抜きにしては語れない」と表明している。
 広義の黄檗文化とは、万福寺が唐代中期に建立されてから多くの高僧や文人が育み受け継いできた文化全体を指す。その中核は禅宗文化であるが、儒学や海のシルクロードの文化とも融合した豊富な内容を持つ。狭義の黄檗文化とは、隠元禅師をはじめとする多くの中国人僧侶や華僑が日本に渡り、仏教だけでなく、当時の中国文化や科学技術を伝えたことで、日本で発展・形成された文化だ。・・・」
https://www.recordchina.co.jp/b894769-s41-c30-d0198.html
 <出た、また出ーた、の収録忘れ分。↓>
 「羽生結弦と織田信成のツーショット、・・・中国版ツイッター・微博・・・」
https://www.recordchina.co.jp/b894854-s25-c50-d0190.html

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太田述正コラム#12780(2022.5.29)
<鈴木荘一『陸軍の横暴と闘った西園寺公望の失意』を読む(その17)>

→非公開