太田述正コラム#1564(2006.12.13)
<意気消沈の朝>
(有料講読の新規申し込みが3件で止まったまま増えません。また、コラムを書く等の助っ人ボランティアの方も現れません。赤信号が点滅しています。申し込みは、ohta@ohtan.net へ。)
1 始めに
本日は、邦字紙等の電子版等を眺めた時と情報屋台にチェックを入れた時の二回ガックリきました。
そのわけをお聞かせしましょう。
2 自己中かつ画一的な新聞記事
朝日新聞電子版は、クレジットが入っていませんが、当然自社記事でしょう、「空手の形で古川と諸岡がV、金は45個に アジア大会」という見出しの下、「ドーハ・アジア大会<で>は12日、・・日本の金メダルは45個となり、02年釜山大会の44個を上回った。 」と報じています。
(http://www.asahi.com/sports/update/1212/144.html)
東京新聞電子版は、「空手で金3個 日本の金、前回上回る」という見出しの下で、共同電の「日本の金メダルは46個となり、前回大会の44個を上回った。」と報じています。
(http://www.tokyo-np.co.jp/flash/2006121201000930.html)
讀賣新聞電子版は、「日本、金は前回の44個を上回る…アジア大会」という見出しの下、「読売取材班のクレジット入りで、「・・日本の金メダルは、前回の44個を上回った。」と報じています。
(http://www.yomiuri.co.jp/sports/doha06/news/20061212ie31.htm)
毎日新聞電子版は、「アジア大会:日本の金メダル45個に 前回上回る」という見出しの下、記者が現地から、「・・これで日本の今大会の金メダル数は45個となり、前回大会の44個を上回った。」と報じています。
(http://www.mainichi-msn.co.jp/sports/feature/news/20061213k0000m050175000c.html)
日本経済新聞本紙は、見出しには言及がありませんが、記者が現地から、「日本の金メダルは45個となり、前回大会の44個を上回った。」と報じています。
(日経2006年12月13日朝刊41頁)
産経新聞電子版は、本件について何も報じていません。
他方、朝鮮日報日本語電子版を見ると、「・・これで韓国は12日午前現在、金44個、銀39個、銅70個を獲得し、日本(金43、銀51、銅57)を金メダル1個差で上回っている。韓国は3大会連続総合2位に向けて残りの種目で2位固めと行きたいところ。一方中国(金124、銀70、銅49)は、韓国との差をさらに広げ、1位を独走している。」と報じています。
(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/12/12/20061212000057.html)
皆さん、これら日本の新聞の記事は異常だと思いませんか。
第一に、日本の金メダルが前回大会を上回ったことは事実だとしても、前回より種目数が増えている可能性が高いだけに、そんなことが見出しにまで取り上げるべきニュースであるとは思えません。しかも、種目数がどうなっているのか、これら記事では全然言及がありません。
第二に、そもそも、日本が今次アジア大会で活躍しているかどうかは、他国との比較でしか論じられないところ、韓国への言及をこれら記事では一切していません。
第三に、もっと恐ろしいのは、これら日本の新聞の記事が、書き手がそれぞれ異なっているにもかかわらず、画一的な内容になっていることです。正確に言うと、本件を主要6紙中5紙が記事にし、しかも4紙は見出しにまで本件を取り上げている、という画一ぶりです。
こんな単純は話でも、かくも自己中心的で画一的な記事が並ぶのですから、国際情勢の記事など、日本の新聞を読めば読むほど歪んだ認識を植え付けられる、と思った方がいいでしょう。
だからこそ、「まっとう」な認識を提供すべく努力している本コラムの役割は大きいと密かに自負しているのですが、読者がこうも増えないのではどうしようもありません。
2 紺屋の白袴?
昨日、情報屋台にハンドルネーム・マイク氏が、「イラク戦争と米国の「コスト」」と題するコラムを上梓されたのですが、「ジョンソン大統領は1965年から北爆(北ベトナムに対する大規模な空爆)を開始したためベトナム戦争は一挙にエスカレートして泥沼化。ベトナム側は民間人を中心に百万人以上の死者を出したが、ジャングルを利用した神出鬼没のゲリラ戦で世界最強の米軍を悩ませ、結局、1975年に南ベトナムの首都サイゴンが陥落して南北ベトナムは統一され、米国は全面敗北した。」という箇所を読んで、悄然としました。
マイク氏は、私が情報屋台に上梓した「日本・米国・戦争(その2)」の「米国は、ベトナム戦争に勝利したにもかかわらず、負けたと誤解した世論に押し流されて、せっかくの勝利を無に帰せしめてしまった」というくだりを読んでおられないか、読んでも無視されたか、どちらかでしょう。
彼が書いたことは、明白な誤りとは言えませんし、短い文章だからむつかしいとは思いますが、もう少し書きようがあったはずです。
「日本・米国・戦争(その2)」で展開した私の上記指摘は、現在の米国における常識だけになおさらです。
例えば、一昨日付のニューヨークタイムス電子版に載った南カリフォルニア大学名誉教授のコラム(
http://www.nytimes.com/2006/12/11/opinion/11fromson.html?pagewanted=print
。12月12日アクセス)にも、ジョンソン大統領はベトナムに更に20万5,000人米軍を増派したが、「1968年1月30日に開始したテト大攻勢に共産主義者達が大勝利を収めたと当時われわれの多くが誤った認識を抱いたために、この措置は無に帰した。」という箇所が出てきます。
マイク氏は、「総合商社に35年間勤務。アメリカ南部の「石油の街」ヒューストンと東部の「政治の街」ワシントンという全く異質な2大都市に駐在して国際ビジネスの最前線で格闘。現在はワシントン在住」(情報屋台より)だそうですが、もう少し文章を工夫されないと、紺屋の白袴だ、ということになりますよ。
いずれにせよ、情報屋台への私のコラム上梓もまた、日本人の意識改革に貢献しないまま徒労に終わる予感がしてきました。