太田述正コラム#1666(2007.2.20)
<ポルノと強姦(その1)>(2007.3.20公開)
1 継続的かつ大幅に減少した米国での強姦
タイトルを見て仰天した読者もおられるかと思いますが、至って真面目なコラムですのでご安心を。
昨年6月18日付のワシントンポスト電子版は、1970年代に比べて、米国における強姦件数が85%も減ったと報じました。すなわち、米司法省の12歳以上の人々を対象とする社会調査に基づく推計によれば、1000人当たりの強姦発生率は1979年には2.8件であったのに、2004年には0.4件まで減ったというのです。
強姦の非申告率が増えたわけではありません。
同じく米司法省の推計によれば、1996年には非申告率が69%であったところ、現在は61%まで減っているからです。
ところが、この記事は、強姦のこのような劇的な減少がどうして起こったかについては、ほとんど触れていません。
(以上、
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/06/18/AR2006061800610_pf.html
(2月20日アクセス)による。)
半年以上経った今年の2月18日、ロサンゼルスタイムスは、同じ趣旨の記事を電子版に掲載しました。
目新しいことと言えば、強姦発生率の低下は、統計を取りだした1959年から一貫して続いているということと、若年層になればなるほど、強姦する率についても強姦される率についても、低下が大きい、ということを報じた点くらいです。
そして、やはり、どうして減ったかについて、説得力ある説を紹介していません。
(以上、
http://www.latimes.com/news/opinion/la-op-males18feb18,0,2951664,print.story?coll=la-opinion-rightrail
(2月19日アクセス)による。)
少なくとも後者の記事は不誠実であるとの批判を免れません。
というのは、昨年8月までに、かなり説得力のある、衝撃的な説が発表されていたからです。
2 ポルノ普及説
(1)ダマト教授の説
昨年、米ノースウェスタン大学ロースクール教授のダマト(Anthony D’Amato)は、強姦減少の理由はポルノの普及にあるという説を発表しました。
この説の概要は次のとおりです。
強姦が減った理由として、通常、麻薬がらみの犯罪全体が減った、女性が防衛する術を教えられた、強姦を犯すような人物の多くは他の罪で服役中である、性教育の結果青年達はダメなものはダメだという観念をたたき込まれた、といったことが挙げられているが、説得力に乏しい。
本当の原因はポルノの普及にある。
ハードコアポルノ映画「ディープ・スロート(Deep Throat)」が封切られたのは1972年であり、その後ポルノがVHS、更にはDVDでレンタルショップで簡単に借りられるようになっていく。1970年代と80年代にはポルノ雑誌も数が爆発的に増えた。やがて、インターネット・ポルノの時代となる。その売り上げは三大ネットワークであるABC、CBS、MBCの売り上げの合算額を超えるに至っている。これによって、事実上、未成年もポルノ漬けになっている。
さて、米国でインターネット普及率が最も低い4つの州で、強姦発生率は1979年以来の25年間で53%も増えたのに対し、インターネット普及率が最も高い4つの州では、強姦発生率は27%も減っていることからも明らかなように、ポルノが普及したからこそ、強姦が少なくなったのだ。
その理由としては二つ考えられる。
一つは、ポルノを見ることで、欲望が満たされ、実行に移す必要がなくなってしまうことであり、もう一つは、ポルノがセックスから神秘性をはぎとってしまって強姦の魅力が減退したことだ。
(以上、
http://anthonydamato.law.northwestern.edu/Adobefiles/porn.pdf
(2月20日アクセス。以下同じ)による。)
(2)傍証
このところ、米国では凶悪犯罪全体が減少してきているのですが、1980??85年と2000??2005年は凶悪犯罪全体は減少しなかったにもかかわらず、強姦はこの間も一貫して減少し続けました(http://abstractnonsense.wordpress.com/2006/08/30/porn-and-rape/)。
ですから、強姦の減少は、凶悪犯罪の増減とは別の理由で生じていることは間違いありません。
ダマト教授の説の傍証は、豪州、デンマーク、そして日本でも得られています。
豪州での最新の研究によれば、1995年から2005年にかけて、18歳以上で強姦の被害を受けた者は0.6%から0.3%に減少したのに対し、インターネットを導入している家庭は1998年の20%から2004??2005年には56%に増えています。
また、デンマークでの最新の研究では、18歳から30歳の年齢層の男性の98%、女性の80%がポルノを見たことがあり、その女性の約半分は少なくとも1月1回は、多くはパートナーと一緒にポルノを見ており、男性の約38%が週3回以上ポルノを見ていることが判明しました。
1991年の研究によれば、このデンマークでも、そしてスェーデンでもドイツでも、強姦の増加率は凶悪犯罪全体の増加率を下回っています。
日本の1999年の研究でも、ポルノとインターネットについて、同じ結論が得られています。
(以上、
http://www.melonfarmers.co.uk/aswhywar.htm
による。)
(続く)
太田氏の分析力には普段から感心しておりますが「ポルノと強姦」はちょっとどうかな?と疑問をもちます。そもそも社会学者はエセ科学者であり、その大部分は断片的資料からいい加減な結論を導く連中だと普段から考えております。厳正な実験を行うことができない事象について科学的推論を行うべきではありません。
ポルノが普及したから強姦が減ったというのも噴飯物だと思います。真面目に考えるのであれば下記の要素などを検討すべきです。
・多様な娯楽が生まれ生活が豊かになったことも背景にあるのではないか。
・女性の貞操観念が時代とともに低下し、風俗に行かずとも一般の婦女子と性交する機会が増えた。
・文化的違いも大きいし、その「発展段階」にもよる。むかしの日本はかなり強姦が少なかった。ところが文明開化するにつれ「性的想像」を誘発する機会が増え、逆に性的犯罪が増えていった。この場合、ポルノがマイナスの作用をしている。つまり(たとえば)「アフリカにポルノが普及すれば性犯罪が減少する」とはいえないこと。
・教育の質や普及度も影響する。男性の女性観の変遷なども影響するであろう。
・教育や情報の普及により、女性の強姦への警戒心がすすんだ。
・食生活も影響する。たとえば科学的根拠は未確認だが肉食化と性犯罪は因果関係があるとよく言われる。
・ポルノが影響するところは女性を性的玩具と見ること、つまり女性への「蔑視」である。強姦が減ったから肯定的影響があると考えるのは禁物。
・統計的分析を行うのであれば、過去の強姦者の属性についても分析すべきである。たとえば過去の強姦者に妻帯者が多いとすれば、結婚比率の低下は強姦減少の要因となりうる。
・「ポルノが強姦を減らす」という見方はむかしから左翼の常套句であり、過去の道徳を否定する文脈からたびたび言われた。
・ポルノは理性を十分にコントロールできない未成年には悪い影響を与えることが多い。
以上です
米1
噴飯物な要素でモノを語るのもどうかと
>「アフリカにポルノが普及すれば性犯罪が減少する」とはいえないこと。
アフリカでの性犯罪の多さの原因には、そもそも女性の人権が弱いことと、「処女を冒せばエイズが治る」という迷信(アフリカでのエイズ罹患率はかなり高い)が蔓延している事をあげる人は少なく無いのですが…(汗)
>たとえば科学的根拠は未確認だが肉食化と性犯罪は因果関係があるとよく言われる。
え?ご自分で「厳正な実験を行うことができない事象について科学的推論を行うべきではありません」って主張していながら、それを言うのですか?
あなたそれ、矛盾してませんか?
>>多様な娯楽が生まれ生活が豊かになったことも背景にあるのではないか
にもかかわらず強姦が増えている国もあるらしいですよ。
オーストラリアとか。
>>文化的違いも大きいし、その「発展段階」にもよる。むかしの日本はかなり強姦が少なかった。ところが文明開化するにつれ「性的想像」を誘発する機会が増え、逆に性的犯罪が増えていった。この場合、ポルノがマイナスの作用をしている。つまり(たとえば)「アフリカにポルノが普及すれば性犯罪が減少する」とはいえないこと
昔の日本は女性の権利が男性よりも低くだからこそ
女性の権利が今日向上しているのではありませんか。
昔の男尊女卑社会でそんなことを女性は今以上に言いづらかったはずですよ。