太田述正コラム#1669(2007.2.22)
<官製談合について(続)>(2007.3.24公開)
1 始めに
官僚機構における天下りや不祥事の解消を図るための施策が種々講じられていますが、余り実効があがっていないようです。
2 天下り対処をめぐって
先だって(コラム#1663で)「天下りは再就職とは言えません。天下った官僚は、業者にとっては人質のようなものであり、出勤はしても基本的に仕事はせずに給与だけをもらっているからです。」と申し上げたところですが、そもそも官僚は天下りはできても再就職ができるような知識や能力は身につけていないのが普通であることが分かる、以下のような面白い記事(
。2月20日アクセス)を見つけました。
「人材バンクは、50歳以上の本省課長以上の事務職を対象に人材情報を登録。求人情報と照合し、再就職を仲介する仕組み。現在の登録者は約700人。2000年4月の運用開始からこれまでに99人の求人があったが、条件が折り合わないケースが多く、実際に再就職が決まったのは私立大学客員教授に迎えられた1人だけ。7年間にかかった費用は、システム構築やパンフレット作製など約7000万円だった。」
しかし、同じ記事によれば、「今春からは登録対象者を地方勤務の本省課長・企画官級や技術職にも広げ、対象者は約5000人に増えるという。また民間の職業紹介業者と提携し、「幅広く求人情報を集めたい」(総務省人事・恩給局)としている。」とのことであり、人材バンクが全く機能していないというのに、総務省は更に国民の血税をドブに捨てたいと見えます。
官僚を再就職させることなどあきらめて、年金を手厚くした上で、官庁による天下り斡旋を厳罰をもって禁じるべき(コラム#1663)なのです。
ところが、国家公務員法改正をめぐって現在論議されているのは、幹部職員が職務と密接な企業などへの自らの再就職の要求、交渉をすること、及び、再就職したOBが退職後2年間、退職前5年間の職務に関係する契約や処分の要求を元の在籍官庁にすること、を禁止し、違反者には懲戒処分や過料を科すことであり、官僚の再就職を原則2年間禁止している現行の天下り規制は、暫定的に2年程度存続させた後、廃止するというのですから呆れます。
官房の担当官僚が天下りシステムの管理やキャリア官僚の個別天下りをやってくれているのですから、何もキャリア官僚が自分で天下り交渉をする必要などないのです。(プロ野球選手が大リーグ移籍にあたって代理人を立てるように、そもそもこの類の話は、自分が直接やらない方が良いのは常識です。)
また、天下ったOBが直接口利きを元の在籍官庁にする必要もまた全くないのです。
天下りシステムは、官房の天下り担当官僚が、契約や政策の担当官僚に指示して官僚の天下り先の企業などに便宜を図るシステムであり、天下った官僚は、何もする必要はないし、むしろ何もしてはいけないのです。
それなのに、肝腎の天下り斡旋については、企業などへの「押しつけ的な天下りの斡旋」を防止すると称して、斡旋にあたって不正な行為をした場合に刑事罰を科すだけにとどめようとしているというではありませんか。
天下りの斡旋を受けた企業は、官製談合等を通じてその官庁に確実に儲けさせてもらえるのですから、何も「押しつけ」なくても喜んで天下りを受け入れるものなのです。
どうやら官僚機構も、政府自民党も、官僚の天下りシステムに手を付けるつもりは全くなさそうです。
(以上、事実関係は、
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070216i301.htm?from=main3
(2月16日アクセス)による。)
3 不祥事の解消をめぐって
この問題についても、面白い記事を見つけました。
「国務大臣のいる・・・1府12省庁のすべてが、公益通報者保護法が施行された2006年4月までに、職員が通報<(内部告発)>できる内部窓口を設置。21の外局のうち金融庁や公正取引委員会、国税庁など7機関は独自の内部窓口を設けていたが、林野庁や消防庁など残る14機関は所管省庁に窓口を一本化していた。このうち、<全省庁の申し合わせに沿って>外部の弁護士事務所にも窓口を設置していたのは、内閣府、総務省、金融庁の3府省庁だけだった。外務省は外部窓口を持たないが、調査を担当する「監察査察官」に同省に勤務する検事や公認会計士を指定。「外部の弁護士と同様の公正性と透明性を確保している」(同省)としている。残る30省庁・委員会では、ほとんどが人事や総務担当課に通報窓口を置いており、課長級職員ら「身内」が調査責任者になっていた。外部窓口を置かない理由については、「通報自体がない」(厚生労働、農水省)、「予算の関係」(防衛、環境省)などと回答。今後についても「状況を踏まえて判断したい」(財務省)と述べるにとどまっている。通報の件数は昨年12月までに計49件で、内訳は、外務省31件▽内閣府10件▽総務省3件▽法務省2件▽社会保険庁2件▽海上保安庁1件。外部窓口かそれに準じる態勢をもつ3府省が約9割を占める一方で、内部窓口のみの31省庁・委員会のうち27機関は「通報ゼロ」だった。通報内容については、外務省が「内容は明らかにできない」、海上保安庁が「調査中」としている以外は、不正の発覚や処分に結びつく有益な内容はなかったという。また、農水省と警察庁、海上保安庁は法施行時に文書で通知した後は、窓口の電話やファクシミリの番号、メールアドレスなども職員が直接人事部門などに問い合わせないとわからない態勢になっていた。」(
http://www.asahi.com/politics/update/0219/001.html
。2月19日アクセス)
嗤っちゃいますね。
せっかくできた中央官庁の内部告発制度も、仏造って魂入れずのようです。
これでは、官製談合等について内部告発がされることなど、期待できそうにもありません。
4 官製談合の現状
市町村レベルでは、現在なお公共事業において官製談合が花盛りのようであり(
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20070220/119375/
。2月21日アクセス)、遅ればせながら、官製談合の防止のために、市町村でも一般競争入札を導入する動きがあります(
http://www.tokyo-np.co.jp/flash/2007021601000648.html
。2月17日アクセス)。しかし、すべてを一般競争入札にするわけにもいかないであろうことから、一朝一夕では官製談合はなくなりそうもありません。
しかも、中央レベルでも、公共事業以外で依然談合が広汎に行われていることは明らかであり(http://www.asahi.com/national/update/0220/TKY200702190332.html。2月20日アクセス)、恐らく公共事業以外での官製談合もまた、行われているに相違ありません。
5 終わりに
やはり、決め手は自民党恒久政権の打破です!