消印所沢通信11:自衛隊は空っぽの洞窟?(その4)
<消印所沢>
 前略 所沢です.
 「自衛隊は空っぽの洞窟(4)」の推敲の間,箸休めとして時事的な漫談を
お送りします.
 では,
 草々
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   【珍説】「地震死者数と自衛隊出動の有無とには脈絡がない」???
石原都知事「どうもー! シンちゃんでーす!」
井戸・兵庫県知事「イドちゃんでーす!」
2人「2人合わせて『知事ちゃんズ』でーす!」
石原「いやあ,ボクらも漫才コンビ組んで,もう長いけどね」
井戸「組んだの,ついこないだやないか!」
石原「お蔭様で,ボクも3期目を続投させていただくことになりまして」
井戸「ピッチャーみたいに言いなや」
石原「ボクも松阪世代やし,完投せなあかんと」
井戸「誰が松阪世代や! スタルヒン世代やろ!」
石原「そない古いわけあるかい!」
井戸「だいたい,完投って何すんねん?」
石原「せやな,まずはオリンピック招致!」
井戸「北京でやったあとに,そない立て続けにアジアでできるかい!」
石原「それやったら,『ラーメン・オリンピック』でもええ」
井戸「そっちのオリンピックかい!」
石原「あとは防災,特に地震対策」
井戸「それは大事やね」
石原「都民をみんなサイボーグにして,地震でも
死なない不死身の体にする」
井戸「機械帝国か!」
石原「ピンチのときには都庁がロボットに変形して出動」
井戸「だから機械帝国かって!」
石原「地震が起きたときには自衛隊の特殊部隊を
呼べるようにして」※1
井戸「特殊部隊はレスキュー隊とちゃうて!」
石原「阪神淡路大震災では,自衛隊の出動が遅れた
せいで余計に2000人死んでるわけやし」※1
井戸「そら,フカし過ぎや! 9割は即死やったんやから,
ええとこ救えて600人や」※2
石原「600人かて,めっちゃ多いやん!」
井戸「多い言うたかて,阪神の地震は不意討ちやったんやから,
出動要請が遅れもするやろ」※3
石原「不意討ちやない自然災害が,どこにあんねん!」
井戸「不意討ちやったさけ,死者の数と,自衛隊出動の
有無との間には,何の脈絡もない」※3
石原「脈絡あり過ぎやろ!
 阪神大震災は直下型やったから,建物に潰された人の
数が多かったっちゅうだけやん.
 関東大震災なんて,死者・行方不明者10万人のうち
圧死は7500程度で,あとの殆どは火災の犠牲者.※4
 2004年のスマトラ沖地震かて,2万人以上の死者の
殆どが津波被害で,即死者は殆どおらへんがな.
 そういう直下型やない地震に自衛隊派遣せえへんかったら,
死者はうなぎ上りやないか」
井戸「阪神・淡路大震災のケースでは,て言うてるやろが」
石原「アホ言いなや.派遣要請するときには地震が
直下型かどうか分かってた言うんかいな」
井戸「そもそも,『自衛隊の出動が人命を救うんだと
いうふうに考えている知事がいるとすれば,建物を
燃えなくしたり壊れなくしたりするほうの対策に力点が
入らなくなるという疑いが出てきます』」※5
石原「なんでやねん! 耐震対策もやってるて!※6
 それに,自衛隊派遣後も,自衛隊と自治体との
コミュニケーションはめっちゃ重要やねん.※7
 コミュニケーションとれるためには,自衛隊・自治体の
合同訓練をようけやらなあかんねん.
 話聞いてると,あんたンとこ,そのへんをチャンと
やってんのか,心配になってくるわ」
井戸「あー,そら大丈夫.
 いざとなったら,誰でも知ってる人を連絡調整担当者に
任命する.
 こん人やったら自衛隊とのコミュニケートも,自治体との
コミュニケートもばっちりや」
石原「そら,誰や?」
井戸「神戸市須磨区生まれ(※8)の石原慎太郎」
石原「ええかげんにしなさい!」
 end
<脚注>
※1 石原慎太郎発言,2007/4/8記者会見にて
※2 貝原俊民・兵庫県知事(当時)へのインタビューでは
「犠牲者の8割以上が,発生直後に圧死していた」
朝日新聞2007/4/9付
 また,
http://mltr.e-city.tv/faq05e.html#07113
も参照されたし.
※3 井戸・兵庫県知事定例記者会見,2007/4/9
http://web.pref.hyogo.jp/governor/g_kaiken070409.html
※4 武村雅之著『関東大震災』(鹿島出版会,2003.5)より
※5 筑紫哲也発言 on TBS「ニュース23」,2007/4/9
※6 東京都都市整備局サイト
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/kenchiku/taisin/index.html
より
※7 http://mltr.e-city.tv/faq05e.html#07882 参照
※8 佐野眞一著『てっぺん野郎 本人も知らなかった石原慎太郎』(講談社,
2003.8)より
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<太田>
 典拠つきの力作時事漫談でしたね。
 大変勉強になりました。
 今度の東京都知事選は、私が仙台にいた時の宮城県知事だった浅野さんと、
東京都民である現在の私にとっての知事である石原さんの事実上の一騎打ちで
した。
 浅野さんは、知事3期目に情報公開で肩に力が入りすぎて警察を敵に回し、
かつクリーンではあっても人間的魅力に乏しいこともあって最後まで県庁内を
掌握しきれず、結局宮城県政を自民党に熨斗をつけて贈呈してしまいました。
他方、自民党の国会議員であった石原さんは、消印所沢さんも触れておられる
自衛隊との連携を強化した防災対策、現役の警察官僚を副知事に据えた治安対
策、銀行への課税等、政策の妙とその人間的魅力により、日本の前衛である東
京都民を惹きつけてすっかり保守化させてしまい、一旦死に体となっていた自
民党の延命に、たくまずして小泉前首相とタッグを組んだ形で、大きな役割を
果たしました。
 国政において政権交代が絶対に必要であると考えている私からすると、地方
政治の話であるとはいえ、まことに罪の深いお二人です。
 こういうわけで、私は結局棄権することにしたのです。
(続く)