太田述正コラム#2031(2007.8.30)
<退行する米国(その8)>
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<バグってハニー>
 #2029のリンドの言い分はありえないと思うのですが。状況証拠その一を見ただけで、もうむりやりこじつけようとしているような気が・・。出身地で昔人種差別があったとか犯罪があったとか、どんな政治家にも当てはまりそうな気が・・。
 ブッシュ家はイギリス国王ヘンリー三世の末裔だから、ロスチャイルド家などのユダヤ資本と結びついている。だから、911はユダヤの陰謀、とか言ってる広瀬隆とあんまり変わらないような。
 ブッシュはややおつむが弱いことは、もう大統領選のディベートやインタビューなんかで明らかでしたよね。失言癖は父親譲りです。ただ、政治家には知性だけが必要というわけでもないと思うんですけどね。問題はこの演説の原稿が、知識のある側近によるチェックを受けずにそのまま出てしまったことにあるのではないでしょうか。まあ、だから米国(政府)が全体として退行しているというのはそうなのかもしれないですが。
<太田>
 
 前段については、今回のコラム以下をお読みいただくとして、後段については、情報屋台で、マイクさんが、
 「ブッシュは今回の演説で、「真珠湾攻撃後に元駐日大使がトルーマン大統領に”日本では民主主義は機能しない”と自信満々に進言した」というエピソードに言及したが、実は、ラムズフェルド国防長官(当時)も2005年6/4のアジア太平洋国防相会議での演説で「全く同じエピソード」に触れた上で、「しかし今や日本は世界の民主国家の模範となる経済大国になった」と続けた。
 即ち、米国の軍事行動を正当化するために「日独の民主化」という成功例を挙げるという「マニュアル」が米政府内に存在し、ブッシュもラムズフェルドも、これに基づいて発言してきていることは間違いない。従って、今後も、「日本を戦争で打ち負かして軍国主義から民主主義に大改革したのは米国の手柄→同じようにイラクも米国が大改革する」というブッシュ演説は続くだろう。」
と書いていますよ。
http://johoyatai.com/?page=yatai&yid=56&yaid=554
 まあ、例によって典拠がついていませんが・・。
<バグってハニー>
>ブッシュ演説以前から、ブッシュに対する嫌悪感が米国の知識人の間でどれほど高まっているかを示している。
 これはまあ、事実としては正しいですが、結局、民主党の支持者は都市部の高学歴のホワイトカラーですし、知識人はもともと一般的にリベラル・反戦・反共和党ですよね。別にブッシュ大統領になって急にそうなったという話ではないです。日本の知識人や大学なんかとおんなじ。
<太田>
 現在の日本の知識人や大学人が「リベラル・反戦」であるという印象は全くありませんねえ。
 「小泉「改革」支持(=セーフティーネットの破壊=反リベラル)・日本人拉致のみ糾弾(=北朝鮮体制変革推進=好戦)」のオンパレードじゃありませんか。
<バグってハニー>
 ブッシュが黒人差別的だという印象はないですね。ローザ・パークスが死んだときにも式典に出張ってましたし。その例↓
http://www.whitehouse.gov/news/releases/2005/12/20051201-1.html
<太田>
 
 今回のコラムの冒頭部分をお読み下さい。
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 しかし、考えてみると、パウエル(Colin Luther Powell。1937年~)は国務長官時代、ネオコン全盛のブッシュ政権内で浮き上がった存在であり、いたたまれず一期で退任に追い込まれましたし、ライス(Condoleezza Rice。1954年~)だって、パウエルよりは政権主流派に近い政治信条の持ち主ではあるものの、黒人にしてかつ女性である点を買われてこそ国務長官に抜擢されたことは否めません。
 そもそも、ライスの「出世」の原点となったスタンフォード大学副学長就任だって、当時のスタンフォードの学長が、確か、ライスが、黒人にして女性であることも考慮して副学長に抜擢したことを示唆していたと思います。
 ブッシュは有色人種差別主義者だけど、(2006年まで運輸長官を勤めたところのもともとは民主党の日系人(黄色人)たるノーマン・ミネタ(Norman Yoshio Mineta。1931年~)や、このたび辞任に追い込まれたヒスパニック(茶色人)のゴンザレス(Alberto Remora Gonzales。1958年~)司法長官のケースと同じく、)人気とり目的のために黒人二人をあえて立て続けに起用した、という意地悪な見方もできるのかもしれません。
 (以上、典拠省略。)
 (3)既にファシスト国家になった米国?
 (ブッシュのような著名な指導者や隆盛を極めるテキサス州の過半の住民だけがファシストであればまだしも、)今や米国そのものがファシスト国家になりつつある、と今年4月にガーディアン掲載コラムで主張して英米に衝撃を与えたのが、サンフランシスコ生まれのローズ奨学生(コラム#1009)にして「第三波の」フェミニストと形容される著述家のナオミ・ウルフ(Naomi Wolf 。1962年~)です。
 (以下、特に断っていない限り
http://www.guardian.co.uk/usa/story/0,,2064157,00.html
http://commentisfree.guardian.co.uk/take_two/2007/05/naomi_wolf_v_alan_wolfe.html
http://commentisfree.guardian.co.uk/take_two/2007/05/naomi_wolf_v_alan_wolfe_round_1.html
(いずれも8月28日アクセス)による。)
 彼女は、9.11同時多発テロ以降に誕生した国内安全保障省(Department of Homeland Security)のHomelandがナチス用語であることに注意を喚起します。
 その上でウルフは、主としてナチスドイツを例にとってファシスト国家の属性を10個あげ、ブッシュ政権下の米国(以下「米国」という)がいかにそれとそっくりになってしまっているかを描写するのです。
 ごくかいつまんで彼女の言うところをご紹介すれば次の通りです。
一、恐ろしい国内外の敵の援用
 ナチスドイツの場合は、脅威は、共産主義という現実の脅威とユダヤ人という仮想の脅威であったのに対し、米国の場合は、「文明を根絶」しようとしている「全球的カリフ主義(global caliphate)」の脅威(2001年米愛国者法)であり、この脅威に対する全球的戦争が宣言されている。
 米国では、第二次世界大戦の時等においても日系人の収容所送りといった人権抑圧が行われたが、今回の脅威、及びこの脅威との戦いに関しては、時間と空間において無制限であるという点がこれまでの戦争の際の脅威とは異なっており、各種人権抑圧が恒常化してしまう可能性が高い。
二、強制収容所の設置
 ナチスドイツの強制収容所については説明の要がないが、米国もグアンタナモに法の支配の外にある強制収容所を設立した。
 これに関連し、ナチスドイツが1934年に人民法廷(People’s Court)という、本来の司法システムを迂回するシステムを作ったように、米国も軍事法廷(military tribunal)を設置した。
(続く)