太田述正コラム#2016(2007.8.22)
<第3の性(その1)>(2007.9.25公開)
1 始めに
情報屋台のコラムニストの一人に性同一性障害者の杉山文野さんがいます。
杉山さんによれば、性同一性障害(Gender Identity Disorder=GID)とは、身体(からだ)の性別(sex)とこころの性(gender)との間に食い違いが生じ、それゆえに何らかの “障害” を感じている状態を指すのだそうですが、杉山さんは、身体は女性でこころが男性の性同一性障害者です。
その逆のケースが、おすぎさんやピーコさん、そしてカバちゃんやカルーセル麻紀さんであり、これも杉山さんによれば、このうち、カルーセル麻紀さんはニューハーフで、それ以外はおかまなのだそうです。
(以上、
http://johoyatai.com/?page=yatai&yid=73&yaid=441
による。)
この性同一性障害者に、異性装者(transvestite)・・いわゆる「女装者」や「男装者」のこと・・を加えて第3の性と呼ぶことにしましょう。
日本は現在でも、先進国最悪の男女差別国です(
http://www.nytimes.com/2007/08/06/world/asia/06equal.html?ref=world&pagewanted=print
。8月7日アクセス)。
私が1974年に米国カリフォルニア州のスタンフォード大学に留学した時、最初にびっくりしたのは、ゲイの権利を叫ぶ性同一性障害者たる学生達のデモが連日のようにキャンパス内で繰り広げられていたことです。
当時の日本では、男女差別状況は現在の比ではありませんでしたが、性同一性障害者は更なる差別の対象であり、その存在すらほとんど抹殺されていたので、上記のデモに私がびっくりしたのは当然です。
その日本でも、今回の参院選に、大政党から立候補が認められたケースとしては初めてだと思いますが、比例区から民主党の候補者として元大阪府議の尾辻かな子さん(32歳)が、同性愛者であることを宣言して立候補するような時代になりました。(29位で落選。)(
http://news.livedoor.com/article/detail/3172831/
。8月18日アクセス)
ところが米国では、同性間の結婚が公に認められている州まで出現しています。
日本では第3の性について、もっともっと光があてられなければならない、と痛切に思います。
本シリーズでは、この第3の性をめぐる諸問題を取り上げることにしました。
2 アルバニアの男装者
つい最近まで、女性が地方選挙で選挙権を行使することが認められず、土地を買うこともできず、就ける仕事や、入れる施設にも多くの制限があった北部アルバニアでは、少なくとも15世紀以来、女性が生涯処女であることを誓うことによって男性として生きることができる、という慣習があります。
性転換手術のようなことをする必要はなく、髪を短く切り、男性の衣服を身に纏い、通常男性が従事するところの、羊飼いとかトラックの運転手とか政治家になったりするのです。
そして回りの人々は、「誓約処女」が女性であることを知りつつ、男性として扱うのです。
この慣習の起源は、一家の家父長が死んでその後を継ぐ男性がいなかった時に、女性を家父長の座につける必要が生じたためであろうと考えられていますが、その後、独立心の旺盛な女性や親が決めた結婚を回避したいけれど相手の一家の名誉を傷つけたくない女性等が「誓約処女」の道を選ぶようになったようです。
誓約は通常地域の長老達の前で行いますが、私的に行う場合もあります。
現在アルバニア全体で「誓約処女」は30人から40人しか残っていないと見られています。
中には、「誓約処女」になったことを悔いている人もいますが、以前と違って、誓約を破っても殺されることこそなくなったとはいえ、再び女性として認知されることはありえないことから、どうしようもないのだそうです。
もう新しく「誓約処女」になる女性は出てきていないので、早晩この慣習は消え失せることでしょう。
(以上、
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/08/10/AR2007081002158_pf.html
(8月12日アクセス)による。)
(続く)
第3の性(その1)
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