太田述正コラム#2113(2007.10.9)
<海自艦艇インド洋派遣問題(続)(その2)>
3 給油はダメでもISAFへの自衛隊派遣はできる?
(1)始めに
小沢民主党代表は、国連決議に基づく国連の活動であれば、海外での武力行使でも憲法に違反しないという考えであるところ、10月に入ってから、インド洋での給油活動は国連活動でもない米軍等の活動に対する後方支援であって憲法が禁じる集団的自衛権の行使にあたるので許されないが、政権を担う立場になれば、アフガニスタンでの国際治安支援部隊(ISAF=アイザフ)への参加を実現したいと言い出しました。
(以上、
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20071003k0000m010162000c.html
(10月3日アクセス)、及び
http://www.asahi.com/politics/update/1006/TKY200710060001.html
(10月6日アクセス)による。)
この小沢氏の意向を受け、民主党執行部は、ISAFへの後方支援のための自衛隊派遣等の検討を始めました。
これに対し、石破防衛相は、「国連が決めたら突如として日本の主権が消えて憲法9条に反しないという理論が本当に党内で賛同されているのか」と、また高村外相は「陸上でのアフガニスタンはすべて戦闘地域みたいなもの。憲法解釈上難しいのではないか」と批判しました(
http://www.asahi.com/politics/update/1007/TKY200710070091.html
。10月8日アクセス)。
民主党内からも、疑問の声が出ています。
例えば枝野幸男元政調会長は、「国連軍(への自衛隊派遣)なら国の主権を離れる。だが(ISAFのような)国連のオーソライズに基づくものは、(憲法が放棄した)国権の発動(たる戦争)の側面も残る。石破氏の言う通りだ」と語っています。
(以上、
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/071007/plc0710071946003-n1.htm
(10月8日アクセス)による。)
一体この問題はどう考えればよいのでしょうか。
まずは事実関係を押さえておく必要があります。
(2)給油活動の位置づけとISAF
ア 給油活動
9.11同時多発テロを受け、2001年10月、米国は、他の国々とともにアフガニスタンのタリバンとアルカーイダ勢力を殲滅するための戦争を開始します。
これがアフガニスタン不朽の自由作戦(Operation Enduring Freedom – Afghanistan=OEF-A)です。
この不朽の自由作戦は、米国に関しては個別的自衛権、他の国々に関しては集団的自衛権の発動として開始されたのです。
翌2002年1月16日、国連安保理決議1390が採択され、全国連加盟国に対し、上記両勢力に係る資金凍結と要員の入国/通過の防止を求めるとともに、上記両勢力に対する軍事物資や軍事に係る技術的助言・支援・訓練の直接的間接的提供が国内から行われたり自国民や自国船舶・航空機によって行われることの防止を求めました。
(以上、
http://en.wikipedia.org/wiki/Operation_Enduring_Freedom、
http://en.wikipedia.org/wiki/War_in_Afghanistan_%282001%E2%80%93present%29、
http://72.14.235.104/search?q=cache:xd_KrW_5DJQJ:www.fatf-gafi.org/dataoecd/44/13/34346121.pdf+UN+Security+Council%3Bresolution%3BJanuary+16,+2002&hl=ja&ct=clnk&cd=2&gl=jp
(どちらも10月9日。以下同じ)による。)
日本が2001年11月2日に施行されたテロ特措法に基づいてインド洋に派遣した海上自衛隊の補給艦と護衛艦は、この不朽の自由作戦の海上阻止行動(OEF‐MIO:Operation Enduring Freedom-Maritime Interdiction Operation)に従事する米国等の艦船に対する支援活動を行ってきたわけです(
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E8%A1%9B%E9%9A%8A%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89%E6%B4%8B%E6%B4%BE%E9%81%A3)。
なお、私の指摘のように、海自艦艇が給油(給水を含む)以外の監視等の活動を行っているとしても、それらも支援活動の範囲であると言えるのではないでしょうか。
とまれ、海自の給油活動は、2002年1月16日の上記安保理決議までの間こそ、各国の自衛権に基づく海上阻止行動への支援活動であったけれど、決議採択以降は、各国の海上阻止行動も、海自の海上阻止行動支援活動も、どちらも国連にオーソライズされた行動なのです。
他方、不朽の自由作戦については、安保理決議において累次言及され(典拠省略)、オーソライズされてきていたところ、この作戦の一環であるインド洋での海上阻止行動については、その部分だけ取り出した形での言及がありませんでしたが、2007年9月19日の安保理決議1776中でわざわざこの行動に言及した上でこの行動に貢献した諸国に対する感謝の意が表されました。
海上阻止行動が、念押し的に国連によってオーソライズされるに至ったと言っても良いでしょう。
(以上、特に断っていない限り
http://www.undemocracy.com/S-RES-1776(2007).pdf
(10月10日アクセス)による)。
この安保理決議の文面は、日本政府が米国等を通じて入れさせたと指摘するむきもあることはご承知の通りです。
イ ISAF
次に、ISAF(International_Security_Assistance_Force)についてです。
(続く)
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有料版のコラム#2114(2007.10.9)「魔女狩り(その1)」のさわりの部分をご紹介しておきます。
海自艦艇インド洋派遣問題(続)(その2)
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