太田述正コラム#2132(2007.10.18)
<報道の自由「後進国」の日本・再訪>(2007.11.19公開)
1 報道の自由「後進国」日本
 2005年11月7日付のコラム#936、「報道の自由「後進国」日本」を覚えておられますか。
 あれから2年経ちましたが、今年も国際的NGOの「国境なき記者団」が「2007年世界報道自由度ランキング」を発表しました。
 それによると、調査対象169カ国中、昨年51位だった日本が37位に上昇し、31位だった韓国は39位に下がりました。
 (以上、
http://www.chosunonline.com/article/20071018000012
(10月18日アクセス。以下同じ)による。)
 日本は、42位(2003年)→37位→51位→37位(コラム#936も参照した)、と一貫して低い順位に低迷しています。韓国とデッドヒートを演じていると見られているなんて恥ずかしい限りではありませんか。
 ただ、いくら何でも昨年の51位というのは低すぎます。
 確認するため「2006年世界報道自由度ランキング」の原典(
http://www.rsf.org/IMG/pdf/asia_report.pdf
)にあたったところ、日本についての記述だけが欠如していることを発見しました。
 とんでもない誤りが見つかって削除された可能性があります。
 ちなみに、米国は、17位(2002年)→22位→44位→53位→48位 とつるべ落としに転落してきており、これは私の言う、米国のファシスト国家化の進行の端的な現れであると言えるでしょう(
http://www.csmonitor.com/2006/1027/dailyUpdate.html
http://english.chosun.com/w21data/html/news/200710/200710180016.html
及びコラム#936による)。
 「2007年世界報道自由度ランキング」の原典(
http://www.rsf.org/IMG/pdf/rapport_en_bd-4.pdf
)にあたってみたところ、日本の報道が、政府が右翼に対して甘いことによって歪められていることと、日本には閉鎖的な記者クラブ制度があることが挙げられていました。
 これらは一貫して日本が批判されている点です(コラム#936参照)。
2 記者クラブの存在による病理
 記者クラブの存在による病理であると最近思えてならないのが、防衛記者クラブ会員社であるところの新聞社やTV局等の主要マスコミが、どこもほとんどと言ってよいほど防衛省不祥事を取り上げていないことです。
 これだけ長期間にわたって、直販誌やミニコミ紙やインターネット上で取り上げ続けられてきているというのに・・。
 その結果、おかしなことが起こっています。
 民主党が17日の参院予算委員会の理事会で、御手洗冨士夫日本経団連会長ら経済財政諮問会議の民間委員4人と、公明党を除名された福本潤一前参院議員の参考人招致のほか、防衛省の守屋武昌前事務次官の証人喚問を要求したのですが、守屋氏を証人喚問する理由が、氏が防衛局長時代に海上自衛隊のインド洋での給油活動での給油量の訂正や航海日誌の破棄などが相次いだことへの責任を問うためだけだというのです( 
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20071018k0000m010042000c.html
)。
 実施は全会一致が慣例なので、これらの招致、喚問が実現するかどうかは分かりません(毎日上掲)が、せっかく守屋氏を証人喚問するのであれば、少なくとも併せて防衛省不祥事についても問い質すべきでしょう。
 天下りとのからみで業者の選定等に不当に手心を加えた可能性があるというのですから、給油活動をめぐる不祥事に勝るとも劣らない深刻な問題であることは明白です。
 取り上げれば、守屋氏は本当のことを言わなければ偽証罪に問われるのであり、検察の防衛省不祥事捜査の後押しにもなります。
 民主党が取り上げようとしない最大にして唯一の理由は、主要マスコミが本件をいまだに報道していないことだと私は見ているのです。
 野党の個々の議員にせよ、政党にせよ、個人から信頼できるたれこみがあるか、主要マスコミが取り上げてくれるかしないと、手がかりがないので動きようがないのです。
 主要マスコミの幹部や記者の皆さん。
 報道の自由「後進国」の日本の抜本的変革に向けて、どうして行動を起こさないのですか。