太田述正コラム#2178(2007.11.14)
<政治家による官僚の接待>(2007.11.30公開)
 (本篇は、当分の間、公開しません。)
1 始めに
 公務員倫理規定(自衛隊倫理規定を含む)には触れないことから、いまだに盛んに行われているのが政治家による官僚の接待です。
 今回は、私が受けた政治家による接待のうち、特に記憶に鮮明に残っている2件についてお話しましょう。
2 中村喜四郎防衛政務次官(当時)による接待
 1983年に自民党の中村喜四郎衆議院議員(日大卒。2世議員)が防衛政務次官に就任したのですが、しばらくすると、防衛庁(当時)の私を含む若手キャリアを10人ほど集めて小料理屋で接待してくれました。
 宴が終わりかけた頃、中村政務次官は、「君たち、私にしてもらいたいことを聞かせて欲しい」と言い出し、一人一人順番に願い事を言わされました。
 他のキャリア連中は、自衛官のための○○手当を新設して欲しい、といった無難な予算がらみの陳情ばかりを口にしていましたが、最後近くの私の番になった時、私は「集団的自衛権の問題を何とかして欲しい」と言ったのです。
 その時、中村次官は、きょとんとした顔つきで数秒沈黙し、おもむろに「君、変わっているね」と宣ったのです。
 彼も驚いたのでしょうが、私だってびっくりしました。
 中村次官は相当おかしい、と思ったのです。
 それから約10年経った1994年に、彼は斡旋収賄罪で逮捕され、起訴され、2003年、最高裁で実刑が確定し、収監され、議員を失職します。
 「相当おかしい」と感じた感覚は正しかった、と私は思いました。
 しかし、そんな彼を2005年、再び茨城の有権者は議員に復帰させ、私をがっかりさせます。
 (以上、事実関係は、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E6%9D%91%E5%96%9C%E5%9B%9B%E9%83%8E
(11月14日アクセス)による。)
 (秘書の不祥事で一旦議員辞職した自民党の加藤紘一(やはり2世議員)を議員に復帰させた山形の有権者とこの茨城の有権者はいい勝負です。)
3 谷川和穂防衛庁長官(当時)による接待
 時期的にほとんど同じなのですが、1982年に防衛庁長官に就任した自民党の谷川和穂衆議院議員(慶大卒。2世議員)は、翌1983年、やはり防衛庁の私を含む若手キャリアを10名ほど、ご自分の箱根の別荘に招待してくれました。
 土曜日の朝、自分達の車に分乗して箱根に向かい、別荘に着くと、飲み食いしながらの歓談が始まり、やがて、いかにもお坊ちゃん然とした大臣は、別荘のアップライトピアノに向かい、演奏を披露してくれました。
 そこで、太田もピアノができるという話になり、弾かざるをえないムードになったので、私も演奏をしたのです。
 途端に大臣のご機嫌が斜めになりました。
 今は見る影もありませんが、当時、私はシロウトの耳には上手に聞こえる程度の腕前であり、大臣の技量よりは相当上だったので大臣はご機嫌を損ねたのでしょう。
 結局最後までしらけたムードが続いてしまいました。
 大臣は、接待をされるばかりで接待を行う立場にほとんど立ったことがないからこんなことになるんだな、とその時思いました。
 その年、総選挙が行われ、谷川防衛庁長官は現職で落選してしまいます。
 その時テレビのインタビューの場において記者の肩を両手で掴み「私はね、本当は選挙区に帰りたかったんです!でも、それが(大臣のための公務があり)できなかったんだ・・・!!」と揺すりながら号泣したエピソードは有名です。
 (以上、事実関係は
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B0%B7%E5%B7%9D%E5%92%8C%E7%A9%82
(11月14日アクセス)による。)
4 終わりに
 こういうやっかいな政治家の方々とうまくお付き合いをしていくための鉄則は、青臭い議論をしない、ゴマスリに徹する、ということだったのです。
 それに気付いたときは既に遅く、私は、これら政治家達からX点をつけられてしまったこともあって、その後次第に防衛庁の中枢から遠ざけられて行くのです。
 この私と対蹠的な存在であったのが、守屋だったというわけです。
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<太田>(2007.11.30))
 14日時点では、中村政務次官(当時)の発言を「君、変わっているね」と紹介しましたが、「あなた、真面目なんですね」だったように思います。文意は変わりません。
 また、「それに気付いたときは既に遅く、私は、これら政治家達からX点をつけられてしまったこともあって、その後次第に防衛庁の中枢から遠ざけられて行くのです。」はちょっとドラマチックに書きすぎました。
 「いずれにせよ、青臭い議論ばかりをし、全くゴマスリをしない私は、防衛省キャリアの中で浮き上がった存在になってしまい、政治家が私を月旦する対象となる地位に就く以前に防衛庁の中枢から遠ざけられてしまいます。」
に改めさせていただきます。