太田述正コラム#2217(2007.12.6)
<J-WAVE台本>
1 始めに
4日に生放送されたJ-WAVEの番組用に用意した台本・・というか、私のアンチョコをご披露します。だぶるので、未公開のコラム#2213と2214の公開は行いません。
なお、前半に関しては、商社逆マネーロンダリング装置論(コラム#2161)の話が出てしまってしまったこともあり、「防衛省が他の省と特出して腐敗しやすいということなのでしょうか?」の問がはしょられてしまいました。
また、後半に関しては、思いやり予算売国論(コラム#2111等)の話になってしまい、アンチョコは全く役に立ちませんでした。
これは、むしろパーソナリティーの野中さんの当意即妙の対応を誉めてあげるべきでしょう。
2 15MINUTES台本
野中 東京・六本木ヒルズからライブでお送りしています、 81.3 J-WAVE JAM THE WORLD. つづいては15MINUTESのコーナーです。 リポーターは高橋杏美さんです。 高橋 (あいさつ)
飄々と、のらりくらりと記者会見をこなしながら、その腹の内は
グツグツと煮えくり返っていたのでしょうか?ついに福田総理が
防衛省改革に乗り出しました! きのう、政府は、
不祥事が相次ぐ防衛省を抜本的に変えることを目的とした
「防衛省改革会議」の初会合を開きました。
じつはこの会議、町村官房長官の下(もと)に設置された、
いわば、「官邸主導」の会議。つまり、防衛省の自浄能力に
期待していられない! という福田総理の想いが表れているとも
とれるんですが・・・野中さんは一連の防衛利権に絡んだ問題を
どう捉えていますか?
野中 (受けて) (★省から庁への格下げ論や解体論まで飛び出している!)
(★官邸主導で改革を考えるのはいいが・・・内情を知っている人の
意見も聞かないと根本的な治療にはならないのでは?)
高橋 (受けて)
そこで今夜は、あの守屋容疑者と同期で、事務次官の座を争った
元防衛キャリアでありながら・・・
「防衛省の日常業務はすべて不祥事」とまで言い切り!
先月末、現役閣僚の口利き疑惑を暴露して注目を集めた
太田述正さんをお招きして、防衛省で不祥事が続く原因から、
改善策についてお話を伺いたいと思います。
太田さんこんばんは! よろしくお願いします!
太田 (あいさつ) 野中 (あいさつ)
★以下、次のような質問で展開★
高橋Q まず・・・太田さんは、守屋容疑者とは同期ということで、当然、
面識があるワケですが・・・元同僚として、守屋容疑者に対して
どのような印象がありますか?
私の知っている守屋は、ごく普通の優秀で真面目で、しかも謙虚な人間ですよ。
*それは、キャリア同士だったからでは? 下のノンキャリと
呼ばれる部下の人にとってはキツイ存在だったのでは?
いや、結構人気があったのではないでしょうか。
野中Q 元同僚の逮捕についてはどう受け止めていますか?
かわいそう、の一言に尽きます。
*もしも、太田さんが事務次官になっていたら、
こうはなっていなかった?
私が事務次官になることなどありえなかったわけですが、仮になっていたとすれば・・ちょっとカッコ良すぎることを言わせていただきますが、・・昨年の防衛施設庁の官製談合事件の時には、私が全責任を負う形で自白し、その他の人に累が及ぶことを避けたことでしょう。
また、この官製談合事件が露見しなかった場合ですが、私がゴルフやカネをもらって逮捕されるようなことはなかったでしょうね。
とはいえ、私が逆立ちしても天下りを中心とする政官業癒着構造そのものに切り込むことは不可能であったことでしょう。政治が変わらない限り官僚にできることには限界があります。
ただし私は、自らは天下りをせず、退職後、政官業の癒着構造について問題提起を行ったと思いますよ。
高橋Q 太田さんは、防衛省について
「日常業務すべてが不祥事」と辛辣な発言をされています。
では、具体的に、「日常業務における不祥事」とは
どんなコトがあたるのでしょうか? いくつか挙げていただけますか?
防衛省キャリアは、軍事や安全保障に関する知識を身につけようともせずに仕事をしている上、IT音痴、英語音痴、会計音痴の三重苦の世界に生きています。
インターネットは米国防省から生まれたというのにITにからっきし弱く、米軍相手の仕事の比重が大きいというのにパーティー英語すらできない人ばかりであり、装備品の調達が最大の仕事とさえ言えるのに全く原価計算の知識がない、というわけで、要するに彼らは全く仕事をしていません。仕事をする手段を何一つ身につけていないのですから・・。
水増し請求が見抜けないはずですよね。
だから私は防衛省の「日常業務すべてが不祥事」だと言っているのです。
(*では、普段、防衛省のキャリアはどんな仕事をしていた?)
*それは太田さんも?
自分で言うのも何ですが、私は随分仕事をしたと思いますよ。
しかし、すればするほど回りから疎まれ、浮き上がり、左遷させられていきました。
野中Q 防衛省が他の省と特出して腐敗しやすいということなのでしょうか?
それとも、どこも同じようにやっているが、たまたま今、
問題になっているのが防衛省ということなのでしょうか?
日本は米国の保護国であり、外交・安全保障の基本を米国にぶんなげているので、本来の仕事をやらせてもらえない外務・防衛両省から退廃・腐敗が始まり、深刻化し、それが全省庁に波及している状況だということです。
社会保険庁なんていい例ですよね。
国会議員も(地方議員と異なるところの)本来の仕事に携われないので退廃・腐敗しがちです。
国家の存立や大勢の人間の生死に関わる仕事に携わっていれば、人間自ずから粛然とするものなのですがね・・。
その退廃・腐敗の程度は、1955年以降、基本的に常に政権の座にあった自民党の国会議員が最も深刻です。
そもそも権力は退廃・腐敗するものですが、恒久的権力であれば、絶対的に退廃・腐敗するのは当たり前です。
このように官僚や政治家が退廃・腐敗しているので、政府に関わりの深い業界・業者も退廃・腐敗するに至っています。
そして、この政・官・業が三位一体的癒着構造の下にあるのです。
癒着構造における最大の問題は、官の業への天下りです。
自分の能力・知識・経験だけで再就職できる官僚なんて100人に1人いるかどうかです。天下りをしている人の大部分は、実質的な仕事をせずに多額のヤミ年金をもらっているのです。
そのカネは、官庁が、購入する財・サービスの価格を水増ししたり、規制を手加減したりして捻出されています。
そして、この天下りシステムのいわば用心棒代を政治資金等の形で政治家がせしめている。
これが日本が抱える最大の問題です。
この最大の問題を解消するには、退廃・腐敗議員を排除するような形での抜本的な政界再編をなしとげるしかありません。
いずれにせよ、先程述べた癒着構造を粉砕することによって、初めて日本は本質的な問題であるところの、米国からの自立、に取り組む条件が整うのです。
これができるのは、政治家でも政党でもマスコミでもありません。
国民の皆さんです。
高橋 ということで・・・政・官・業の癒着構造が問題と指摘する太田さんは
先日、守屋容疑者を通して、額賀財務大臣から
口利きがあったと公表して話題となりました!
この疑惑について、額賀大臣は完全否定しています。
これについて、太田さんはどのように感じているのでしょうか?
一曲聞いていただいたあと、太田さんに伺います!
M /
高橋 J-WAVE・JAM THE WORLD・15MINUTES!
今夜は、守屋容疑者と事務次官の座を争った、
元防衛キャリア官僚、太田述正さんをお迎えして、
防衛省腐敗の原因から、その改革案についてお話を伺っています。
太田さん、後半もよろしくお願いします。
太田 (あいさつ)
高橋 さきほど、前半では・・・(前半を要約)
太田さんは先日、仙台防衛施設局長時代に
守屋容疑者を通して、内閣官房副長官だった額賀氏から
特定の業者に仕事を回すようにと「口利き」があったと
公表されています。この疑惑について、額賀大臣は
完全に否定しています。この状況をどう思われていますか?
当時は大した話だとは私自身思っていませんでした。他により深刻な不祥事だらけだったからです。だから、防衛庁を飛び出した2001年に出した本の中でも政治家の口利きについてはほとんど触れていません。
実際、当時まだ斡旋利得処罰法はありませんでしたし、仮にあったとして、そしてその構成要件に合致する口利きを政治家の皆さんがやっていたとしても、既に時効が成立しているであろう古い古い話です。
ところが、それにもかかわらず、建築・土木事業に関する口利きについては、額賀さんとともにリストに登場する政治家すべてがこれまでのところ、事実を全面的に否定されています。
私はむしろこのことにびっくりしています。
政治家の皆さんは、当時既に相当やましい気持ちをお持ちだったのだな、と考えざるをえません。
★以下、次のような質問で展開★
野中Q 疑惑を暴露したキッカケは、
守屋容疑者が国会の証人喚問で「政治家からの口利き」を
語っていたのを見て「これは、事実を明らかにしろ!」という
守屋容疑者からのメッセージと受け取って行動に移した、
ということですが、、、それはつまり、守屋容疑者を援護するため?
守屋を擁護するためではなく、守屋の犠牲を無にしないためです。
高橋Q 疑惑を暴露した根拠は、当時、太田さんが付けていた
日記ということですが、それ以外に裏付けはない?
人間の記憶なんてあてにならないものですが、ほぼリアルタイムで詳細に記述してある私の日記は確かなものです。
それに、私は、守屋を含め、証言をする人が必ず出てくると思っています。
また、私自身、額賀さんを追及するための次の一手を考えています。
*額賀さんと守屋容疑者との関係については、民主党から
会食疑惑もあがっていましたが、これも結局、
うやむやのまま、証人喚問もお流れになる情勢です。
もう少し、確固たる証拠を掴むまでは、
軽々に暴露するのもどうかと思いますが、いかがですか?
既に私の暴露は、世論に相当のインパクトをあたえつつあると思いたいですね。
先日も街の中で、「太田さんがっばって」と見知らぬ中年の女性から声をかけられました。
*額賀大臣への証人喚問はすべきだったと思いますか?
額賀さんはご自分を守るためにウソをついておられます。しかもそのウソの付き方が極めて拙劣です。
ですから、証人喚問等、あらゆる手段を使って彼を追いつめるべきです。
守屋夫妻をぶったたくことより、そちらの方がはるかに日本のためになります。
それは額賀さんに象徴されているところの、多くの自民党議員の退廃・腐敗ぶりを炙り出すことにつながるからです。
ただし、その前に私に対する参考人招致や証人喚問をまず行って欲しいものです。
野中Q 太田さんは「防衛省が本来なすべき仕事ができていないから、
癒着構造が生まれるのだ」とおっしゃっていますが・・・
「防衛省の本来の仕事」とは、どういう内容を指すのでしょうか?
冷戦時代だってソ連の脅威なんて実はなかったのですが、防衛省は、日本が本格的な武力攻撃を受ける可能性は見通しうる将来にわたってほとんどない、という基本的な情報開示をまずすべきです。
何と言うことはない。米国だって英国だってそうなのですよ。
その上で、今後の防衛力整備の在り方について、大幅削減案から漸増案まで、いくつかのオプションを提示すべきです。
ちなみに、大幅削減案以外のオプションは、すべて集団的自衛権の行使が可能になることが前提となります。
国民がどのオプションで行くのか決定してくれれば、防衛省・自衛隊は、朝鮮戦争が終わってからなくなっていた存在根拠を、再び与えられることになります。
つまり、「防衛省が本来なすべき仕事」ができるようになるのです。
ちなみに、発足当時の自衛隊、すなわち警察予備隊としてスタートした朝鮮戦争当時の自衛隊は、朝鮮半島向けの予備兵力だったのですよ。
高橋Q 最後に・・・「省」に格上げになっても実質の仕事は「庁」の時代と
変わらないということですが、「格下げ」「解体」を含め、
太田様がお考えになる防衛省腐敗防止対策とは
どのような内容でしょうか?
本来なすべき仕事ができない間は、防衛省が人材が育つような環境の職場でないことはもう証明されたと言っていいでしょう。
防衛省キャリアの採用は、「防衛省が本来なすべき仕事」ができるようになるまでの間、中止することとし、防衛省の内部部局は、他省庁出身のキャリアと幹部自衛官の混成組織とし、防衛省採用のノンキャリや幹部以外の自衛官が彼らをサポートする体制を構築することです。
他省庁キャリアや幹部自衛官の多くも退廃・腐敗していますが、防衛省キャリアよりはマシ、ということです。
なお、防衛省キャリアは、防衛省にキャリアを出向させた省庁に引き取ってもらうこととし、2年間程度の猶予期間を置き、使い物にならないと判断されたら、爾後ノンキャリ扱いにするのがいいでしょう。
なお、これと平行して、恩給制度の復活を見返りに天下りの全廃を図るべきです。
恩給制度が導入されるまでの間は、暫定的に、天下り先のOBの給与を一律2割カットする、といったことが考えられます。
この恩給制度は、全省庁にも拡大することとし、全省庁における天下りの全廃を図るべきでしょう。
*恩給ではなく、現役時代のお給料に
しっかり反映させる形で良いのでは?
*キャリアという地位を剥奪するというのは、
現実味が無いように思いますが・・・
*リアルなところで、まず、手を付けるとしたら?
今申し上げた措置だけで十分です。
そもそも、防衛庁、更に遡れば警察予備隊ができた頃の内局キャリアはみんな軍事にシロウトの一般官庁出身者だったのですよ。
野中 (よきところで引き取って・・・)
ということで今夜は・・・
元防衛官僚の太田述正(のぶまさ)さんをお招きして
防衛省腐敗の原因と改革案についてお話を伺いました。
以上「15MINUTES」のコーナーでした。
J-WAVE台本
- 公開日:
山田洋行を擁護はしませんが防衛省の輸入品契約に問題があることを提起します。現状は海外メーカーからの仕入値で官と契約し手数料は契約金額高に応じて逓減し数パーセントとなります(過日メールした通り)。わずかな手数料で仕入値で契約しろというのが無理である。今回の不祥事で今後海外メーカー見積書偽造ができなくなるとき商社の対応を推測すると1)随意契約を断り競争入札に誘導する。入札の場合メーカー見積書不用となる。(私のいた当時ままなら) 2)海外メーカーに商社マージンを上乗せした見積書を要求する。