太田述正コラム#2288(2008.1.8)
<韓国に次々に抜かれる日本>
1 始めに
 2006年の8月、私は「購買力平価による一人当たりGDP、すなわち豊かさにおいて、韓国は2015年までに日本を凌駕することは本当にできるのでしょうか。結論から先に申し上げると、私は困難ではないか、という感じを持っています。」と申し上げたところです(コラム#1389、1391)。
 この結論について、まだ修正する必要はないと思っていますが、この間にも韓国人の体格と知力の日本人と比べての相対的向上にはめざましいものがあります。
2 再び身長で日本人を抜いた韓国人
 1月6日付の朝鮮日報(電子版)で同紙東京特派員は、「80年代まで、韓国の若者は日本の若者より小さかった。70年に1.9センチだった身長差は80年に2.3センチまで開いた。韓国の若者が日本の若者より小さかった時代は、80年代末まで続く。当時、日本に行ったことのある韓国人が「日本の若い人って大きいねえ」と言っていたのが印象的だ。日本が世界最大の経済大国を目指し、日進月歩していた時期だった。韓国の若者の身長が日本の若者の身長を追い越し始めたのは90年代だ。正確に言えば93年に0.2センチ差で逆転、その後2005年には2.8センチまで差を広げた。逆転に何年かかったかはよく分からない。でも「日本人は小さい」という昔の記録や俗説から推測するに、90年代に起きた現像は「逆転」ではなく「再逆転」だったと見るのが正しい。」と記しました。
 これにはびっくりしました。
 かつて(コラム#2003で)「米国の成人の平均身長は、かつては男女とも世界一高かったけれど欧州諸国に抜かれてしま<いました。>・・まだはっきりとした原因は分かっていません。」としつつ、「米国の相対的衰退は、意外な所にまず現れましたね。」という感想を記したことがあるからです。
 上記特派員は、この記事の末尾を、「2008年は韓国が日本に追いつく「元年」として歴史に残る可能性が高い。なぜなら国民が政府を変えたからだ。」という文章で締めくくっており、彼もまた、私同様、韓国人の身長での再逆転を、日本の相対的衰退の前駆現象と見ています。
 (以上、
http://www.chosunonline.com/article/20080106000027
http://www.chosunonline.com/article/20080106000028
(1月7日アクセス)による。)
3 英語の成績で日本人を抜いた韓国人
 1月7日付の朝鮮日報(電子版)は、「英語を母国語としない人を対象とする国際コミュニケーション英語能力テスト(TOEIC)・・を運営する米国の非営利団体ETS(教育テスト・サービス)が・・2005年にフィリピン、ブラジル、タイなど53カ国・地域の成績を比較した結果、韓国人の平均成績は598点で、非英語圏で最高となり、日本(562点)、台湾(529点)、タイ(501点)などを上回った。06年も韓国人は601点で世界最高だった。2000年までは、韓国は日本とトップを争い、順位が入れ替わっていたが、01年以降は日本を10-30点リードするようになった。・・05年の全世界の受験者450万人のうち、韓国人は200万人(日本人は170万人で2位)で、半数近くを占めた。」と報じました(
http://www.chosunonline.com/article/20080107000024
。1月7日アクセス)。
 つまり、韓国人の英語能力は質的にも量的にも日本人を上回るに至ったということです。
 このことと関連し、「ハーバードの韓国人留学生は91~92年には97人で、中国(220人)、日本(179人)、カナダ(163人)、台湾(115 人)に続く第5位にとどまっていたが、それ以降着実に増え、97~98年には174人でカナダにつぐ第2位まで上がった後、99~2000年から現在まで 第3位を維持している。ハーバードの韓国人留学生数は、16年前に比べると3.1倍も増えている。半面、日本は減り、台湾は似たようなレベルにとどまっている。」(
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=94326&servcode=400&sectcode=410
。1月8日アクセス)ことも気になります。
4 感想
 旧日本帝国の一部であった朝鮮半島の南部の人々に体格と知力で、・・更に近い将来豊かさでも(?)・・追い越されたってかまわないと言えばかまわないのですが、このところ世界の中での日本の存在感が急速に希薄化しつつあることとこのことがダブって見えるのは私だけでしょうか。
<参考>
 「平成18年の日本経済の決算書に相当する国民経済計算・・によると、日本の名GDP (国内総生産)は4兆3755億ドル(1ドル=116円換算で約508兆8707億円)となり、世界全体に占める割合は、前年の10.2%から1.1ポイ ント低下し9.1%となった。比較可能な昭和55年以降、最低となった。・・世界全体の名目GDPに占める日本の割合は、バブル経済末期の<平成>6年に17.9%を占めピークを記録した。しかし、その後、バブル崩壊による長期の景気低迷で下降<し>た。」(
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/071226/fnc0712261939009-n1.htm
。1月8日アクセス)。
—————————————————————
太田述正コラム#2289(2008.1.8)
<KBS用Q&A>
1 始めに
 明9日午後、予定通りKBS京都ラジオの番組に午後2時33分~43分の10分間電話生出演します。
→以下、非公開