太田述正コラム#2298(2008.1.14)
<皆さんとディスカッション(続x36)>
<SF>
>それを考慮したとしてもユダヤ関係のイギリスの外交活動、それに取って代わって中東を引っかき回しているアメリカの行為と言うものを正当化できる話にはならないと思います
> 現代の日本人の価値観から言っても、アメリカの対中東政策、イスラエルパレスチナ外交は身勝手であると思う人が大半だと思います
(以上、コラム#2296より。)
 大学生さんは、身勝手に他者に介入することが問題だと思っておられるようですね。
 (大半かどうかは根拠が無いので無視します)
 敢えてありがちなことを申し上げるのは恐縮ですが、では「身勝手」でない外交姿勢とは具体的にはどのようなものでしょうか?
 相手を知らず、己を知らず、現実を直視せず、世界と自国の安全にかかわる問題が生じても我関せず、他者に介入しなければ非難されることもないだろうという能天気さで、皆が血を流して維持している安全にただ乗りする、そんな国は身勝手ではないのでしょうか?
 まずは、「自分だったらどうする?」という視点を持つことが第一歩かと存じます。
<大学生>
 「身勝手」の象徴はアメリカの国際社会におけるあらゆる面でのダブルスタンダードです。
 一例ですが、イスラエルには核を黙認し、イランには空爆をすると脅す。
 日本が中東諸国と同じような立場に立って、超大国から同じような態度を取られたらいくら温厚な日本人だって反米テロリストになってしまうだろうと思っています。
 そのような自称「世界の警察」が、無節操に近隣諸国や自国に侵略してきたら現在の中東情勢になるのは初めから分かっていた事だと思うのですが、それに盲従する日本も僕は同罪だと思っています。
 身勝手でない外交とは、相手政府や国民の文化や感情を汲み取る努力をするという外交です。
 少なくとも日本はアメリカに盲従すべきではありません。
<SF>
>「身勝手」の象徴はアメリカの国際社会におけるあらゆる面でのダブルスタンダードです
> 一例ですが、イスラエルには核を黙認し、イランには空爆をすると脅す
 これのどこがダブルスタンダードなのか、ご説明いただけますか?
>そのような自称「世界の警察」が、無節操に近隣諸国や自国に侵略してきたら
>現在の中東情勢になるのは初めから分かっていた事だと思うのですが
 無節操、侵略と断じた根拠をご説明いただけますか?
 また、「現在の中東情勢」の時間的、地理的範囲をきちんと定義していただけませんか?
 漠然と全体を米国の責任に帰するのも、無節操な態度かと存じます。
 大学生さんの中では、イスラエルとイランを核武装について平等に扱わないといけない、というお考えなのでしょうか?
 人間が一人ひとり異なるように、国家もすべて異なります。
 異なる相手に異なる対応をするのは別に不思議なことではありません。
 それぞれがどのような考え方によって対応されているかで判断すべきでしょう。
 引用が前後しますが、
>日本が中東諸国と同じような立場に立って、超大国から同じような態度を取られたら
>いくら温厚な日本人だって反米テロリストになってしまうだろうと思っています
 じゃあとっくになっていないとおかしいのではないですか(笑)
 冗談はさておき、私はならないと思いますね。
 前回の「大半」もそうですが、ご自身と同じように考えないほうがよろしいのではないかと存じます。
>身勝手でない外交とは、相手政府や国民の文化や感情を汲み取る努力をするという外交です
 汲み取る努力をしていないと断ずる根拠をご説明いただけますか?
 典拠とまでは申しませんが、恐縮ですが、これでは印象論に見えてしまいます。
>少なくとも日本はアメリカに盲従すべきではありません
 この一文だけ捉えれば、同感です。
 それだけに、個々の主張や根拠が気になりますし、それ以上に、「じゃあどうすべきだと思っているの?」が気になるんですよね。
 がんばってください。では。
 
<匿名希望(男/30才代)>
 コラム#1865(キリスト教・合理論哲学・全体主義(その1))で指摘されている「狂気」は、最近の反捕鯨についてのグリーンピース、さらにはオーストラリア政府!の対応にも通じるようで、他人事と思えずぞっとさせられました。
<Pixy>
>>豪州人の反応コメントを読む限り、個人的な印象としては、「聞く耳」がないという指摘は事実としか思えないですね。
>豪州のメディアでは、私が以前指摘した英米のメディアのような「聞く耳」を示す動きが見られない、という理解でよろしいですか。(太田)
 反捕鯨の主張に「聞く耳」がないという所感は、メディアではなく、捕鯨関係のガーディアンブログやYoutubeにコメントを投稿している豪・英の個人(活動家?)についてです。
 豪州のメディアや英米のメディアの論調は、定常的にチェックしていませんのでコメントできません。
 昨年末に日本が調査捕鯨で当初予定していたザトウクジラの捕獲を(IWCの正常化について捕鯨反対国が協力する限りにおいて)取りやめるという動きがありました。
 捕鯨反対国はIWCの現状維持が好ましい訳で、正常化など怪しいものだと思い、チェックしたところ、BBCは一応日本側の言い分もきちんとフォローしており、中立的、Austraian News は豪州外交の勝利!みたいな一方的な論調で酷いという印象でしたね。
Japan drops humpback whale hunt(BBC)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/7155255.stm
Japan ‘backs down on humpback hunt'(NEWS.com.au)
http://www.news.com.au/story/0,23599,22950240-2,00.html?from=mostpop
 ガーディアンとオブザーバーの捕鯨関連記事を少し。
 事実を淡々というか、双方の言い分が載っていて、まあ、水産大臣が日本大使代理呼びつけて抗議する国のメディアとしては中立的に書いてくれてありがとう。という印象です。(太田さんのように行間、背景を読む能力はありませんので、文面のみの印象)
Green ships in deadly duel with whalers(The Observer)
http://www.guardian.co.uk/environment/2008/jan/13/whaling.antarctica
Australia increases pressure on Japan over whale hunt(Guardian)
http://www.guardian.co.uk/australia/story/0,,2237788,00.html
 南極海では、グリーンピース(非暴力の妨害)とシーシェパード(暴力も辞さない)とオージー政府の船(違法な操業の証拠集め)が日本の捕鯨船を追っかけていて大変なことになってる様ですね。何か事故があったらどうしてくれるんでしょうか。
<太田>
 グリーンピースによる妨害が結構効いているようですね(
http://www.cnn.com/2008/WORLD/asiapcf/01/13/antarctic.whaling.ap/index.html
。1月14日アクセス。以下断らない限り同じ)。
 何かよい対策はないものか・・。
 さて、もろもろのことをまとめておきます。
1 このたびの台湾立法院選挙で得票率では民進党は必ずしも負けていないとコラム#2297(未公開)で申し上げたところですが、台北タイムスは、3月22日に予定されている総統選挙では、民主党の謝長廷(Frank Hsieh)候補が国民党の馬英九(Ma Ying-jeou) 候補に対して優位にあると主張する、オーストラリアの学者のコラムを掲載しました。
 理由は、一、立法院選挙と異なり全国的イッシューが争点になる、二、その場合、謝が馬に議論で優位に立つだろうし、馬が台湾語(Hoklo。福建語の方言)が碌にしゃべれないことがハンデになる、三、国民党に全権を与えて良いのかと判断する有権者がかなり出るだろう、四、馬は外省人であり、8割を占める本省人(台湾生まれ)の多くが馬に投票することを躊躇するだろう、です(
http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2008/01/14/2003397223)。
2 ガーディアンが一体どういう風の吹き回しか、ギリシャ神話についての大特集を組み、連日何篇かの神話を電子版に掲載しています。
 総論で、ギリシャ神話の一、世界生誕譚を持たない、というか、単一の世界生誕譚を持たない、二、人間を神が造ったのか神を人間が造ったのか判然としない、という特異性が指摘されています(
http://books.guardian.co.uk/greekmyths/story/0,,2237826,00.html)。
3 以前(コラム#2275で)ブットの首相時代の唯一の成果として女性政策の推進を挙げたところですが、ブットの創設した女性銀行について、田舎の女性に言葉巧みに高利でカネを貸している等を暴露しています(
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/01/11/AR2008011103411_pf.html 
。1月12日アクセス)。
 やっぱり、ブットはまるでダメな首相だったようです。
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太田述正コラム#2299(2008.1.14)
<「太田総理・・」2008年初出演(続)>
→非公開