太田述正コラム#2302(2008.1.16)
<皆さんとディスカッション(続x38)>
<読者SK>
回答ありがとうございます。
読みました。属国ですね。
とある番組でとある有名アイドルが米軍の高官相手に、日本を守ってくれますかなどと聞いていたのが思い出されます。
この事は、wikipediaの属国の定義に従うとすれば、属国だと証明しています。
彼は単に勉強不足なのかもしれませんが、魂が腐っています。
よろしかったら太田さんが日本が属国だと確信するに至った経緯を教えて頂けたらと思います。
私は以下の著書を読んでからだったように思います。
故片岡鉄哉著「日本永久占領―日米関係、隠された真実」
http://www.amazon.co.jp/
日本永久占領―日米関係、隠された真実-講談社プラスアルファ文庫-片岡-鉄哉/dp/4062563487/ref=pd_bbs_sr_1?ie=UTF8&s=books&qid=1200398157&sr=8-1
また、故江藤淳著「閉された言語空間」を読んだ時の衝撃もも忘れません。
この米国の政策の為日本人は腑抜けになったのだと思います。
http://www.amazon.co.jp/
閉された言語空間―占領軍の検閲と戦後日本-文春文庫-江藤-淳/dp/4167366088/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1200398352&sr=1-1
あとこのメールマガジンの読者の大半は日本が属国だという事実を認めているのでしょうか?
どの位この認識が広がっているのか気になります。
<太田>
防衛庁(省)に勤務していれば、日本が米国の属国であることは、フツーの知性のある人間であれば遅かれ早かれ分かってきます。(もちろん例外はあります。海外に長期滞在してもその地と日本との文明論的な違いに気付かない人があるのと同じです。)
強いて言えば、1989年に私が初めて当時の防衛施設庁に勤務したことが、決定的な契機になったと思います。(コラム#1057を参照してください。なお、このコラム全体をついでにお読みになることをお奨めします。)
脱線気味の補足ですが、防衛施設庁たたき上げの幹部達がどうして英語を身につけないかを当時あれこれ考えた挙げ句、日本が米国の属国であることの屈辱を日々味わわされる彼らにとってそれがせめてもの抵抗であることに思い至った、ということも挙げておきましょう。
そのたたき上げの幹部達と一緒に仕事をしてきた防衛庁(省)キャリア連中までが、それをたしなめるどころかマネした、ということです。その方がラクですからね。
まことに申し訳ない次第です。ま、私が謝るべきことでもないですが・・。
この関連で私にヒントを与えてくれたのが、そのずっと以前に読んでいた吉田茂の『世界と日本』です(拙著『防衛庁再生宣言』参照)。
日本は、自らの意思で他国の属国になるという人類史上初めての愚挙をしでかした国であり、その愚挙の張本人は吉田であるところ、吉田はその後自分の犯した過ちを痛切に反省し、自らを責めた、という風にこの本を読むべきだ、とその頃認識するに至ったのです。
何が言いたいかというと、江藤淳については、彼が占領下の言論統制を指摘したことは多とするけれど、この占領軍による洗脳の結果、「主権」回復後の日本人が米国の属国であり続けることを不思議に思わなくなったという彼の分析は必ずしも正しくないということです。
より端的に言いましょう。
日本が米国の属国である現状は、吉田を初めとする戦後初期日本の指導者達の主体的選択の結果であり、米国に責任はないということです。
というのも、私の見るところ、朝鮮戦争が始まった瞬間に米国は日本を独立させる方針、日本に独立を促す方針へと転換し、日本の主権回復後もこの米国の姿勢は一貫しているからです。
うざったく思っている宗主国・米国の願いを無視して半世紀以上にもわたって強引に属国であり続けているのが現在の日本なのです。
>このメールマガジンの読者の大半は日本が属国だという事実を認めているのでしょうか? どの位この認識が広がっているのか気になります。
太田述正コラムの読者と言えども、そのような事実など知らない人の方が多いでしょう。いや知りたくない人の方が多いと申し上げるべきか・・。
この後のやりとりもご覧下さい。
<読者AO>
札幌市のAOと申します。
私は太田氏が主張される「国家の自立」や「核武装」等を公に論じる前に、氏の歴史観を明らかにして欲しいと考えています。これは同様に日本も国家として諸問題に対処するにあたり、国家としての歴史観、特に先の大戦に関する一連の事象を明確に評価すべきと考えているのです。
前の総理である安倍氏は総理になるに当り、歴史の評価は後世の学者などの評価に委ねるべき等とのたまわり、無責任にも己の歴史観を隠蔽したまま国の「右傾化」作業を図って頓挫しました。
国家として(例えば国会が)国の歴史評価を明確にしない限り、日本はサンフランシスコ条約の条件を受け入れたままで、今後を論ずるしか権利が無いのだと私は考えています。
靖国や核武装を論じる前に、国として歴史評価を明らかにした上で、それらの国論を論ずべきと考えます。
<太田>
私に歴史観を問う前に、まずあなたの人間観を開陳していただきたいものですね。
プライバシーにかかわる?
いや、本名を明かされる必要はありませんよ。
具体的にお聞きします。
人間は前頭葉が異常に肥大した奇形哺乳類です。
幸か不幸かその結果、人間は内的自然環境(本能等)や外的自然環境の制約を超えて活動することが可能となりました。
換言すれば、人間は自由になったのであり、だからこそ一般にその自由を束縛されることを嫌います。
あなたは、自由が束縛されることを是とする人間観をお持ちなのか、否とする人間観をお持ちなのかをお聞きしたいのです。
前者であれば、あなたは人間であることを厭うておられることになりますが・・。
これだけでは身も蓋もないので、少しつけ加えます。
私自身は、人間らしくありたいと願っています。
その私の最大の問題意識は、私が国籍を有し、居住している日本が米国の属国である現状を何とかしなければならないというものです。
属国であるということは、重要な事柄について決定を宗主国に委ねることを意味します。
これは私に言わせれば日本人が総体として自由を放棄し、自分達を米国の家畜、いやより端的には奴隷に貶め、人間の尊厳を放棄しているということです。
この現状を打破するには、日本が米国と合邦し、米国憲法を日本に適用し、日本からも米国の議会に代表者を送り込むとともに米大統領選挙権を行使し、米国に納税し、米国による徴兵に応じるというオプションを目指すか、日本が米国から独立するオプションを目指すか、そのどちらかしかありません。
なお、後者を目指す場合、日本が(憲法を改正するか憲法の政府解釈を変更して集団的自衛権を行使できる形で)再軍備することが不可欠でしょう。
この二つのオプションは、どちらも法理論上日本の住民が自らの血を流すことにつながることも覚えておいてよいでしょう。
そのような観点から私は、日本を含む人類の歴史や文明を、微力ながら私なりに解明しようと努めてきたつもりです。
日本人はどうして自ら奴隷になったのか、日本人が奴隷になったアングロサクソンとは何か。米国は本当にアングロサクソンなのか、等々。
なお、私は見通しうる将来にわたって米国との合邦には反対です。
もう一度聞きます。
あなたは人間らしくありたいのですかそうでないのですか。
この際、ついでにもう一つ。
仮に人間らしくありたいとして、米国との合邦をお望みですか米国からの独立をお望みですか。
皆さんとディスカッション(続x38)
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