太田述正コラム#2312(2008.1.21)
<皆さんとディスカッション(続x43)>
<ケンスケ2>
 「太田総理・・」見ていました。
 今いかに政権交代が必要かが,よく分かりました。
 マスコミも政権交代なしには,真実の報道なんて出来ないでしょう。
 江戸時代の瓦版程度にお茶らかしを言うのが精一杯で。
 お笑い芸人を使って。
 大変ですね。
 芸人さんに混じって素人さんが発言するのも。
<太田>
 いや、むしろ私は私と共演させられる政治家の皆さんや芸人の皆さんは大変だろうな、と同情しています。彼らはほとんどご存じないことについて、しかも自由にモノが言えない立場で何か言わなければならないからです。
 しかも、少なからぬ政治家は、不祥事がらみで脛に傷を持つ身であるだけになおさらきついのではないでしょうか。
<大阪視聴者>
 「太田総理」拝見させていただきました。太田さんの意見を爆弾発言として、視聴者に意識されるように放送していましたね。日本テレビ、いい感じでした。
 ただ、太田さんの3つの意見の一部しか放送していません。数多い出演者の中では優遇されていましたので、仕方ないかなあ、と思いました。
 コラム#2306で、北方領土問題・佐藤優について読者からのコメントに対して太田さんの意見を述べておられます。
 千島問題については、太田さんのご意見に賛成です。
>ハボマイ・シコタン両島だけの返還をめざすスタンスをとったものの、ソ連を敵視するに至った米国によって(四島返還に切り替えなければ、小笠原・奄美等を返還しないぞ)と恫喝されスタンスを変更した。
という事実については、石原慎太郎さんも以前テレビでのべておられました。
 また、佐藤優さんも『国家の謀略』(77~79頁)で「1956年の日ソ国交回復交渉の中で変更し、・・・歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島の北方四島は、日本固有の北方領土であるという新しい神話を作った。」とのべておられます。
 ただ、日本による千島列島の放棄は、ロシアがそこに居座る国際法的根拠はない(『インテリジェンス人間論』96頁)。ので外務官僚は国益を考え論理構築すべきとも述べています。
 それと少し気になっていることがあるのですが、どなたも指摘されませんので。
>こういう話を「日本にとってメリットがある」かどうかで判断しようとする発想そのものが、奴隷の発想です。これだって私の「ご意見」なのではなく、真実です。
>この20~30年来日本人が外国について書いたものは基本的に読まないようにしている私を見倣ってください。
 うーん。そうでしょうけど。インパクトが必要なテレビではないので、ブログではもう少し親切で丁寧に装うほうが良いのでは。私も毎日1度は必ずクリックしているのですが、ブログランキングもなかなか上昇しません。
 意見は沢山の人に認識されることも必要です。読者が信者中心になっては革命活動にも支障がくるでしょうから。
<大阪の川にゃ>
>吉田ドクトリンを墨守する買弁政治家・評論家等・・「右翼」と「左翼」とを問わない・・がよってたかって見て見ぬふりをしてきた・・・
><しかし、>「王さまは裸だ」とTVで叫ぶ私のような人間が現れた・・・
 とんでもないです。日本の政治家の多くも、日本が保護国だと思っています。
 1年位前、テレ朝の「ビートたけしのTVタックル」
http://www.tv-asahi.co.jp/tvtackle/
で、浜田幸一さんが、居並ぶ自民・民主の政治家に対して「この中で、日本が米国の植民地でないと言う奴はいるか?いるなら言ってみろ。」と発言しました。すると、全員沈黙して、黙示で植民地(保護国)である事を認めました。
 実は暗黙の秘密なんですね。
<大阪視聴者>
 あれ?<今読んだばかりですが、>コラム#2310は急に親切丁寧ですね。
>日本が属国であることは広汎な日本人の間で結構暗黙の常識であるようですよ。
 田原総一郎の「朝まで生テレビ」ではよく出る意見です。田原さんも常識と認識しています。政治に対してアメリカの影響力が大きいのは明白でしょう。その保護国の状態を改善する運動をしなければなりませんね。
<KAZU>
はじめまして。49才の会社員です。
ご活躍をいつも拝見し、ご発言内容にも理解の度は別にして勝手に親近感を抱いているものです。このようなプロの方の本音の言論を聞く機会にやっと恵まれたと嬉しく思っています。
日本が属国である云々の認識は、1970年~80年代は江藤淳氏や小室直樹氏が随所で発言されていましたし、1990年代は副島隆彦氏がタイトル通りの本を出し、今もそのモチーフでの言論をされています。私も大変影響を受けました。
太田さんの属国論は、これらの方々の言説からの影響はあったのでしょうか。それとも、(無関係に)ご勤務上、自然に認識されてきた当然の思考だったのでしょうか?もし教えていただければ幸いでございます。
<太田>
 仕事を通じて認識した、と申し上げてよいと思います。
なお、江藤淳氏、小室直樹氏がその趣旨のことを書いておられた記憶は私にはありません。
また、副島隆彦氏はお名前は存じ上げていますが、ほとんど書かれたものを読んだことがありません。
 防衛庁を飛び出してからの7年間というもの、日本の論壇は全くフォローしていませんし、TVもニュース以外はほとんど見ていないので、浦島太郎になっているのかもしれませんね。
 日本が字義通りの米国の保護国であることを初めて指摘したのは自分だと思っているのですが、ひょっとしたらこの点でも先客がいらっしゃるかも・・。
<ケンスケ2>
>米国は日本が「独立」することを千秋の思いで待ち望んでいる
 太平洋のこちら側に近代軍備を備えた独立国が生まれた時、あの国がどんな行動を起こすかについては、日本人が一番よく知っていると思いますよ。腹の底から。多分アメリカ人自身よりも。
 その意味で、この国の人たちはアメリカ人が口先で言っているきれい事など全く信用していません。
 従って同盟国にはなり得ないのです。
 戦うか属国のままでいるかの二者択一です。
<太田>
 米国が仮に現在もそんな国であるとして、そんな国の属国のままでいたいとおっしゃる方の気持ちが私にはちょっと理解できませんね。
 第一、戦前の日本とは大違いで今や米本土を壊滅させる軍事力(戦略核兵器)を保有するに至った中共に対して米国が何の行動を起こす気配もないじゃないですか。
 さて本題ですが、先の大戦に至るまで何度も戦い仇敵の間柄だった独仏も、戦後はうって変わって大の仲良しであり続けています。
 そもそも、先の大戦直前まで、米国の最大の潜在敵国は一貫して母国の英国(含むカナダ)であった(コラム#1621)というのに、現在英国(及びカナダ)と米国はこれ以上はないと思われるくらい緊密な同盟関係にあります。
 その英国が戦略核兵器を保有していることはご存じでしょう。(現在英国が保有している戦略核兵器は米国が英国に有償供与したものです。)
 国と国との関係など、これほどもドラスティックに変わり得るのです。
 感覚でモノを言ってはいけません。
 というか、あなたのおっしゃっているのは奴隷たる日本人が吐いてきた言葉のいくつかある定型の一つに過ぎません。
 だまされたと思って、私のコラムのバックナンバー全体に目を通してみてください。
 なお、お疑いのようですが、「米国は日本が「独立」することを千秋の思いで待ち望んでいる」ことについては、長年にわたって米国の軍人等との交流があった私が請け合いますよ。
<Pixy>
 「日本はアメリカに吸収されてもいい」という意見がまあ笑い話だとしても、その意見が「そこそこ安全で豊かに暮らせるのなら、もう他人任せでも何でもいい」という奴隷根性によるものなのか、若しくは「日本がアメリカを乗っ取っれば、もっとマシにできる」という主体的独立の延長のオプションの一つと捉えているかによっても違いはあるかもしれません。まあ、100%前者でしょうから、憤るのは分かります。私も同じですし、当然の反応だと思います。
 日本が米国の保護国(属国)である現状を憂い、外交・安全保障政策について主体性を取り戻さないといけない。そのためには、政権交代なりの変革が必要で、最終的には選挙民である日本国民が現状を正しく認識して意識を変えないといけない・・といった太田さんの主張は、至極ごもっともですし私も全面的に賛成します。
 ただ、外交・安全保障政策の主体性を取り戻すためには、有権者の意識改革が必要・・という末期状態まで至ってしまった原因についてしっくり来ません。
 「日本人は自ら奴隷になり、自ら奴隷であり続けることを希求しているという、世界史上初めて出現した珍民族」のは事実として、果たして憲法9条、日米安保による吉田ドクトリンだけでこんなに酷い状態になってしまうものなのでしょうか。
 「ところが残念ながら、「右翼」であれ「左翼」であれ、私と物の考え方がほとんど同じ、と言える日本人とは今まで一人も出会っていません。 恐らく、皆さんがなべて安全保障音痴だからなのだと思います。」というのはその通りだと思いますが、
 例えば、アメリカの有権者は日本の有権者と比較して国際情勢、外交・安全保障に精通しているとはとても思えませんが、かの国は、国益重視で外交でも主体的にガンガン行動していますよね?
 つまり、アメリカの有権者は外交・安全保障なんて(対外戦争で戦死者が増えない限り)普段あまり意識もしないが、政府は主体的に判断して(良いか悪いかは別としてかの国なりに)行動しているのに対し、何故日本では当たり前の状態に戻すだけなのに、有権者の意識改革が必要という高いハードルが求められるのか・・という違和感があります。これは単にアングロサクソンと日本人の行動様式の違いで説明できるのでしょうか。
 また「吉田ドクトリンを墨守する買弁政治家・評論家等・・「右翼」と「左翼」とを問わない・・がよってたかって見て見ぬふりをしてきただけのことです。」というのはその通りだと思いますが、ひょっとすると(大部分の)有権者も実は日本はアメリカの属国だと気付いているけど、見て見ぬふりをしている可能性も考えられます。(というか、個人的には普通にニュースを見ていればそういう認識に至る可能性は高いのでは・・と思います)
 いずれにせよ太田さんの主張が一般に浸透して、日本はアメリカの属国というのが既知の事実となったとしても、一部政治家・評論家等が見て見ぬフリをしているなら、有権者も同じように振舞って結局何のアクションも起こらない可能性も考えられます。
 その場合、どうして見て見ぬふりをして声を上げないのか(日本人が好んで「自ら奴隷」となった原因と同じ?)についても更なる分析、対策が必要ではないでしょうか。
<太田>
>果たして憲法9条、日米安保による吉田ドクトリンだけでこんなに酷い状態になってしまうものなのでしょうか。
 日本人には生来、吉田ドクトリンを受け入れる素地があった、ということです。
 私の言う「縄文モード」が日本文明の基層にある、というのが私のかねてよりの主張です。
 弥生人が卓越した技術力と軍事力(稲作や鉄製武器)を携えて日本に渡来した時、日本の原住民である縄文人がこれに抵抗し、戦争が行われたという痕跡がない、という事実(典拠省略)はまことに興味深いと思いませんか。
 この関連で申し上げたいのは、
>アメリカの有権者は日本の有権者と比較して国際情勢、外交・安全保障に精通しているとはとても思えない
ことと彼らが安全保障感覚を身につけているかどうかとは無関係であるということです。
 つまり、米国の有権者・・というより、日本人以外の大部分の人間・・はしごく当たり前のこととして弥生人的感覚を身につけているのであり、安全保障感覚を持っているのです。
 
<Yoshu>
 コラム#1876を読みました。
 知っていたこともありますが、ひたすらひたすら、驚いてます。CIAのしたことは、殆ど彼らの思惑からはずれた方に行ってしまったのですね。やはり、裏でアメリカ(CIA)が動いてたのですね。まさか、日本の政権を決めるのにまでとは…!本当に日本はアメリカの属国ですね。自民党には、ガッカリです。期待してた方がばかなのでしょうね。
<大阪視聴者>
 <またコラム#2310についてですが、>
>醜悪な食品偽装問題等
 前段・後段とも明快で、うんうんとうなずけるものでした。でも食品偽装問題はどうでもいいのでは。私は食品偽装や再生紙偽装などどうでもいいことを、真面目に報道するマスコミに胡散臭さを感じています。報道機関ならもっと大切なことあるでしょう。
<太田>
 命に関わらないという意味では食品偽装も再生紙偽装もおっしゃる通りですが、同じことを製薬会社がやると命を失う人が多数出るわけです。
 私は基本的にこれらは企業のガバナンス、自己責任の問題だと思いますが、日本の政治家や官僚が堕落・腐敗していることが、政府の規制・助長行政の対象であったり政府が財・サービスを購入する対象であったりするところの日本の企業の多くを堕落・腐敗させている、というのが私の主張なのです。
<こくぴと>
 –天下禁止と恩給制度について–
 太田さんは官僚の天下を全面禁止して、代わりに恩給制度を設けるべきだとおっしゃってますが、これに関連して基本的なところで私にはよくわからないことがあります。
 そもそも、なぜキャリア官僚には早期退職の慣行があるのでしょうか?
 早期退職慣行がなければ、天下先の維持に努める必要もなくなるし、そうすれば、恩給制度(無駄な税金)を作るも必要ないのでは?、と単純に考えてしまします。
 早期退職慣行は「次官を頂点にピラミッド組織に維持するための人事慣行」という説明があったりしますが、民間では早期退職なんてなくても、組織は社長を頂点にピラミッド型になっているので(多くの人は中間管理職のまま退職)、なんでそもそもそんな慣行を続ける必要があるのか、よくわかりません。
 実際、早期退職慣行をなくすことで、天下りをなくしていこうとういう考えもあるようですが、太田さんは、この考えについてどう思われますか?
http://www.actiblog.com/ueyama/40401
<大阪のかわにゃ>
>早期退職慣行がなければ、天下先の維持に努める必要もなくなるし
 逆ではないでしょうか。天下りという非常においしい制度が確固としてあるから、安月給の官僚職なんかさっさとやめて早期退職慣行が行われているのでしょう。
<太田>
 ご名答!
<びり江>
 太田総理やここでの発言をみるに太田さんは軍事外交以外については発言を控えたい意向のようですが個人的には、それはちょっと残念な気がします。
 私は太田さんに是非とも上手く「お年を召」して頂きたいのですが・・・。
<太田>
 TVでは、まだまだ慣らし運転状態ですので、安全保障問題や国際問題以外の発言については控えていることは事実です。
 しかし、私のコラムのバックナンバーをお読みになれば分かるように、私は人間や社会に関わるあらゆる問題について書いてきています。
 強いて言えば、景気問題等、狭義の経済問題については書いていませんが・・。
 まあ、今後に期待してください。
 機会が与えられ続ければ、ですが・・。
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太田述正コラム#2313(2008.1.21)
<日本の若者達の劣化>
→非公開