太田述正コラム#2332(2008.1.30)
<皆さんとディスカッション(続x52)>
<遠江人>
>日本人・日本政府の移民に対する態度は、日本が属国の立場であることと関係があるのではないでしょうか?(コラム#2330。rotbelleさん)
大いに関係あると思います。
太田さんの以下の言のとおり、
「考えてみると、日本が敗戦によって180度変わってしまったことの第一が軍事の放擲だとすれば、第二が移民容認から移民拒否への転換であり、この二つの根っこは同じではないかと思うに至りました。」
属国になったことが契機になっていることは疑いの無いことのように思います。
そしてコラムで度々言及されていることですが属国化を望んでいるのは他ならぬ日本自身であり、日本をそうさせている原因を解く鍵となる可能性があるのが縄文・弥生モード論ではないでしょうか。
私は日本の古代の歴史の知識はほとんど無いし詳しく調べることもできそうにないので、みなさんの縄文・弥生モードについての積極的な議論を興味深く見守らせていただいていますが、一つだけちょっと感じていることを言わせてください。
世間でもよく言われていることで以下のコラムでも言及されていることですが、
太田述正コラム#276(2004.3.2)
<縄文モードの日本>
http://blog.ohtan.net/archives/50955557.html
ネット等で江戸時代の庶民の文化(挿絵入り読み本、浮世絵(春画を含む)、風刺、等々)を見たり読んだりするにつけ、戦後のサブカルチャーやオタク文化といったものと、いろんな意味でよく似ているなぁと感じることが多々あります。平和で経済的にも余裕のある世の中である一方、大きな変化や波の無い平坦な日常が続く中で、閉鎖しているのに開放している文化、というか・・・。ここらへんはうまく言葉にできませんが、こんなところからもやっぱり今は縄文モードなのかなぁ、などと思ってしまいます。
<大阪視聴者>
地方参政権とか人権擁護法とか盛り上がりそうなお話を提案させていただきました。うーん、議論は活発になりましたが、ブログランキングは下がりましたね。
多くの太田ブログ読者にとっては、議論の内容が気に入らなかったのかもしれません。
太田さんも縄文モード・弥生モード論で活性化してましたしね。
妄想ですよ。いくら自然科学でないといっても酷すぎます。
<太田>
ついに私の縄文モード・弥生モード論そのものの根底的批判が現れたか、と心が躍ります。
ぜひ、もう少しご意見をお聞かせ下さい。
<オリン>
アメリカの大統領選挙の太田分析(~コラム#2329。未公開)を読ませていただきました。黒人、ヒスパニック、格差のある白人種、男女別、資本・労働が、判りやすく混沌とする様子が観えるのがアメリカですね。それもお祭り気分で。日本となると、本来ごちゃ混ぜ人種なのにヤマトでないと落ち着かない人たちがいる他は、在日複合外国人種、非差別、アイヌ、琉球、都会・田舎、等、まったくアメリカのそれと同じなのに、「偽」と陰湿さを感じています。音楽をアバウトな5線譜にしてしまうような合理性と賢さを彼らから学び取りたいと思います。
<バグってハニー>
NYタイムズは一応、共和党の候補としてはジョン・マケインを推しているので(消極法ですが)。私の一押しなので、ご参考までに。
Editorial
Primary Choices: John McCain
http://www.nytimes.com/2008/01/25/opinion/25fri2.html?_r=1&ref=opinion∨ef=slogin
話は変わりますが、ブット氏だけじゃなくてムシャラフ大統領も英語が流暢なんですねえ。
ムシャラフ大統領を見た
http://geopoli.exblog.jp/7980789/
<太田>
インド同様、多言語社会であるパキスタンも、指導層の共通語は英語です。
英語が流暢じゃなきゃ陸軍でエラくなれません。
いわんや、陸軍参謀総長や大統領になどなれません。
<バグってハニー>
太田先生へ。
法律論と政策論は完全に区別して議論できる代物じゃあないと思いますが。両者は相補的な関係にあるものでしょう。
SSSのサイトには女性の徴兵についても書かれていました。現在、女性は徴兵登録制度から除外されています。これは徴兵法にそのような規定があるからです(法律論)。一方で、米軍には女性兵士は第一線では用いない、という運用がある(政策論)。両者は鶏と卵の関係みたいなもんです。
さらに、徴兵法の上位にある憲法には法の下の平等がうたわれている。だから、法の下の平等と女性の兵役免除の関係は繰り返し議論されている、と書かれていました。WWIIでは従軍看護婦の不足を埋めるために女性を徴用することも考慮されたそうです。女性の徴兵が必要な事態になれば、SSSにはその任務を果たすための準備はあると書かれていました。男女平等の理念や公共の福祉という概念は時代とともに移ろうものだからなのでしょう。
一応、URL
BACKGROUNDER: WOMEN AND THE DRAFT IN AMERICA
http://www.sss.gov/wmbkgr.htm
単純にいって、日本の政府がのんきな答弁をしてきたのは(法律論)、軍事が日本にとって差し迫った問題ではなかったからでしょう(政策論)。トルーマンが注意深くなくて、日本が旧ドイツのような分断国家になっていれば、日本の安全保障がこんなみょうちきりんな形にはなってなかったはずだと思います。
<太田>
法律がからむ話になると、プロの法律家でない私と、俊秀なる基礎医学研究者であるバグってハニーさんとの間でさえ対話に齟齬を来すというのでは、裁判官と熊さん八さんが対話しなければならない日本の裁判員制度は、やはり到底機能しないであろうことが請け合えますね。
私が法律論と政策論を混同するなと申し上げているのは、これまでの文脈の中では、憲法論と立法論を混同するな、という趣旨です。
その上で、広義の徴兵制(以下、「徴兵制」という)に関し、憲法(憲法解釈を含む)でこれを禁止している例は、古今東西を見渡して、戦後の日本以外にないし、このような規定を憲法に盛り込もうとか、憲法を解釈変更して徴兵制を禁止しようとかいう動きが見られる国も一つもない、ということを私は申し上げているのです。
ここまではいいですか。
ですから、日本を除けば、ある国の国籍を持っている、あるいはある国の国籍を取得するということは、即、その国の(憲法上の)徴兵義務に服することを意味するわけです。
つまり、(日本以外の)特定の国の国籍の取得を考えている人は、取得の申請をする前に、その国の(憲法上の)徴兵義務を負う覚悟があるかどうかを自問自答する必要がある、ということに皆さんの注意を喚起したいのです。
これは、その国のその時点における法律に徴兵義務についてどう書いてあるか、あるいはその法律のその時点における運用がどうなっているか、とは全く無関係な事柄です。
国籍保持に伴う保護受給権や納税義務、更には民主主義国における参政権についても、基本的に徴兵義務と同じことが言えます。
どの程度の参政権や保護受給権を与えるか、どの程度の納税義務を課すかは立法論ですが、憲法上の参政権や保護受給権や納税義務そのものを廃止する憲法改正や憲法解釈変更は、およそ考えられませんよね。
ところが、戦後の日本では、世界でただ一国、憲法(解釈)上、徴兵義務を否定してしまったわけです。
それにしても、
>単純にいって、日本の政府がのんきな答弁をしてきたのは・・、軍事が日本にとって差し迫った問題ではなかったからでしょう・・。トルーマンが注意深くなくて、日本が旧ドイツのような分断国家になっていれば、日本の安全保障がこんなみょうちきりんな形にはなってなかったはずだと思います。
には目が点になってしまいました。
敗戦によって日本は幕末期とほぼ同じ領域に戻ったわけですが、幕末には基本的にロシアだけが日本にとって安全保障上の脅威であったにもかかわらず、当時の日本の指導層は「軍事が日本にとって差し迫った問題」であると考えたとのに対し、戦後はロシア(ソ連)に加えて支那(中共)まで安全保障上の脅威になったというのに、日本の指導層が「軍事が日本にとって差し迫った問題」であるとは考えなくなったのはどうしてだとお考えですか。
日本が分断国家にならなかったことが最大の原因だなどとおっしゃっていてよろしいのですか。
<バグってハニー>
1 あと、もう一つおかしいと思うのは、日本では日本人にも兵役がないわけで、外国人も日本人も兵役がない点においては同じであるわけですから、兵役の有無をもって外国人を区別することを正当化できないと思います。日本人からも参政権をなくすべきだ、という主張だったらともかく。
2 もう一つ書くと、自衛隊には国籍条項がありますよね。米国では志願することによって参政権への道が開くのに対して(SSSへの徴兵登録は帰化の要件でもあります)、日本ではこの道が絶たれている。日本は参政権を求める外国人に対してあまりにも理不尽じゃあないですか?日本は移民を前提としていないので当たり前といえば当たり前なのですが・・。
3 そもそも、女性が参政権を得たのはそれによるメリットがデメリットを上回ったからじゃなくて、社会の半分を構成する女性が政治では代表されないのはおかしい、という政治的不正を正すためじゃないですかね。
在日も日本の社会の一定勢力である以上、それが代表されないのは政治的に公正でない、ということになると思いますよ。男女間と同様に日本人と在日の間で価値観・利害の衝突は今まで同様に続くでしょうが、不満があるんだったら社会から出て行け!というのであれば、それこそ社会は成り立たないのと違いますかねえ。
<太田>
1 については、おっしゃる意味はよく分かります。
今まで申し上げたことがなかったけれど、私は、日本が旧日本帝国領域内の住民以外の移民を受け入れる段階になる以前に、徴兵制の(憲法上の)復活を図るべきであると考えています。具体的には、憲法改正をして憲法第9条第2項を廃止すればよいだけのことですが・・。
なお、日本への永住権を持っている外国人に中央レベルの選挙権を与えるべきではないと私が主張しているのは、それでは国籍を保持している人との差別化を図れないからです。被選挙権を現実に行使できる人なんて、国籍保持者でさえほとんどいないのですからね。
しかも将来、日本で徴兵制の(憲法上の)復活がなった暁には、永住権を持ち、かつ中央レベルの選挙権を持った外国人は、徴兵義務を負わないだけに、特権的な立場になってしまいます。
これは避けたい、というのが私の考えなのです。
2 については、全く同感です。
日本が仮に移民を受け入れないという愚劣な政策を続けるとしても、そして続けるならばなおさら、外国人を自衛官に採用できるようにすべきでしょう。
さもないと、少子化社会の中で、自衛隊を維持できなくなります。
更に言えば、日本だって傭兵部隊、外人部隊を編成することを考えるべきです。
3 については、前段には同意します。
後段については、日本人で「不満があるんだったら社会から出て行け!」と言っている人はほとんどいないのではないでしょうか。不満があるんだったら帰化しろ、という声があるのは確かですが、そんなにおかしな声だとは私は思いません。
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太田述正コラム#2333(2008.1.30)
<オバマ大頭領誕生へ?(続x3)>
→非公開
皆さんとディスカッション(続x52)
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