太田述正コラム#2354(2008.2.9)
<皆さんとディスカッション(続x61)>
<ueyama>
>オバマが暗殺されでもしない限り、オバマは民主党の大統領候補となり、米国の大統領になることでしょう。(コラム#2351。未公開)
暗殺については結構本気で憂慮しています。CNNなんかでぼんやり見ているだけなので、的外れでしたら申し訳ないのですが、それほど厳重に警備されているようにも見えません。大丈夫なのでしょうか?
>予想がはずれたらどうするかって? クリントンが大統領になったって、女性差別撤廃論者でもある私としては、祝杯を挙げるつもりですから、別にどうってことありません。
現状ですと、共和党マケインとの戦いになるんだと思いますが、今のところマケインも充分な支持を得ているように見えます。
2/3に発表されたワシントン・ポスト/ABC放送の共同世論調査
・今日が「本選挙」なら「どちらに投票」するか
● クリントン(46%)⇔マケイン(49%)
● オバマ(49%) ⇔マケイン(46%)(
情報屋台(有料サイト)のマイクさんの「米・大統領選:予備選挙と本選挙での当選可能性」-2008年02月04日)
マケインが大統領になるというのは、アメリカ側から見た場合、オバマ、クリントンに比べてインパクトも少なく、つまらない(といっては何ですが)結果にも感じますが、とはいえ、日本の少なくとも現行体制にとっては、喜ぶべき結果であるという感じがします。それに、私もオバマの魅力については、特に「声」について完全に同意しますが、マケインの表情は、もしかするとそれと同じくらい魅力的に感じます(100%情緒的な話です)。
ところで先日から議論(と呼べるものかわかりませんが)させていただいていた各種問題に関しては、最近ちょっと時間がとれないこともあって、時間がとれるようになったらまたじっくり考えたいと思います。
太田さんと話させていただいて、特に徴兵制に関して随分考えが変わり、その周りにある移民問題・国籍問題等に関しても、だいぶすっきりしました。
狭義の軍事問題は私には本当に難しく感じるので、このあたりから考えを広げていければと思っています。
<太田>
米大統領選の本選挙の展望については、近々とりあげますので、それまでお待ち下さい。
オバマとクリントンの争いについて、もう一つ、面白い論考を見つけたのでご紹介しておきます。
http://www.nytimes.com/2008/02/08/opinion/08brooks.html?ref=opinion&pagewanted=print
(2月8日アクセス)です。
私の言葉に直すと、オバマは理念(experience)志向の政治家であるのに対しクリントンは実益(commodity)志向の政治家だというのです。
この論者は、だからオバマは高学歴層に受けが良く、クリントンは低学歴層に受けが良いのである、と指摘します。
しかし、思うに、これはオバマが男性に受け、クリントンが女性に受ける理由でもあるのではないでしょうか。これは、決してオバマが男性であり、クリントンが女性であるからではないのです。
つまり、オバマは男性であると同時にすこぶる男性的な政治家であり、クリントンは女性であると同時にすこぶる女性的な政治家でもある、と言ってもよいのではないでしょうか。
このように考えてくると、日本の宗主国とはいえ、他国のことではありますが、どちらが米国の大統領になるにせよ、片方が副大統領になることが望ましいという気になってきますね。
いずれにせよ米国は、男性が男性らしく、女性が女性らしくある社会らしい点で、日本より「真っ当な」社会だと思います。
現代の日本が男女とも著しく中性化している「異常な」社会であることにお気づきですか。
これも現代の日本が私の言うところの縄文モードにある端的な現れである、と私は見ているのです。
(フィクションではあるけれど、私の言うところの縄文モードの時代である平安時代の中性的な光源氏のことを思い出してください。)
(以上、コラム#276参照。)
<ueyama>
コラム#2352で、大阪の川にゃさまは次のようにおっしゃっています。
>確かに海水が温まると水蒸気が多くなって雲ができ雪が多く降るのは正しいでしょう。しかし、タイムラグが生じる可能性が大です。
>例えば、まず空気が温まり今世紀中はどんどん氷が解けて海面が上昇します。そしてその後南極海の水温が上昇し始め、22世紀には、南極大陸の雪の量が増えるのでしょう。そして、23世紀にはなんと20世紀の海水面と同じ高さに戻る、というものです。
これはどのような情報を元に発言されていますか?
IPCCの報告によると「南極の氷床は質量を増す可能性が高いが,グリーンランドの氷床は質量を失う可能性が高い」「南極の氷床は21世紀には質量が増加する可能性が高いが,温暖化が続くと,質量が大きく減少し,今後1000年間で予測される海面水位の上昇量に数mほど寄与する可能性がある。」「1978年から2000年にかけての南極の海氷面積全体での明確な変化は観測されていない」(
http://www.gispri.or.jp/kankyo/ipcc/pdf/IPCCTAR_SYR_SPM_J_GISPRI.pdf
)
「グリーンランドや東南極の標高の高い寒冷な地域では、おそらく降雪量の増加が原因で氷厚が増しているが、氷河の流出の増大やグリーンランドでの表層の融解によるグリーンランド沿岸部や西南極の氷厚の減少分はこれを上回っている。」(
http://www.data.kishou.go.jp/climate/cpdinfo/ipcc/ar4/ipcc_ar4_wg1_es_faq_chap4.pdf
)とありますので、そこまで悲観的なシナリオは描かれていないように思いますし、タイムラグが生じる、といった話もありません。「・・・温暖化が続くと,質量が大きく減少し,今後1000年間で・・・」というのは、とはいえ気温が上昇し続けるとほとんど溶けてしまう、といっているわけですが、温暖化の原因が石油や石炭を燃やすことによる二酸化炭素の増加であるとするなら、今後1000年間それが続くわけはありませんので、あまり意味のないものでしょう。(何度上昇すればほとんど溶けるのかはわかりませんが、なんとなくイメージとして、そもそも、そんなにあがってしまったら人間は活動できない気もします。細かい数字による報告もありますが、ややこしくなるので割愛します。海面上昇に関しては、それほどびっくりするような数字はでてきません)
>風力発電に注目しない専門家は、経歴から見て電力会社の原子力巨大利権に関係があるのかな、とも想像しています。
せっかくなので武田先生のサイトを典拠にしますが、「太陽電池や風力発電などが可能性にあるものとして言われているが、ネットエネルギー(発電装置から得られるエネルギー(収入)から発電装置を作り維持するエネルギー(支出)を差し引いたもの)が正になる装置はまだ考案されていない。風力発電も特殊な環境以外では石油からの発電に比較して4倍程度の資源を使い、ネットエネルギーは負になる。」(
http://takedanet.com/2007/04/2005_0dbe.html
)
現在のところ、風力発電装置を作るエネルギーというのは石油である、ということです。また、風力発電装置は、その構造上、落雷(
http://www.kk-kk.net/page021.html
)や、ちょっと笑ってしまうような話ですが強風(台風等。
http://www.kk-kk.net/page023.html
)による被害で、特に台風による強風の多い日本の場合、維持コストは相当高くなってしまいます。
ただし、個人的な意見ですが、原子力については、仮に今後の技術革新に期待して原発事故のようなものを無視するとしても、ウラン採掘による採掘者への被害を考えると、あまり諸手を挙げて賛成できるものではないと感じています。そうなると、例えば地熱発電なんかは、特に日本では有望な発電方法なのではないかなぁ、と思っています。
<太田>
バイオ燃料については、現在補助金まで出してEUや米国でバイオ燃料の使用を増やす政策が打ち出されているところ、少なくともEUや米国に関しては、そのような政策は、地球温暖化防止という観点からは、完全に逆効果であることが科学的にはっきりしたようです(
http://www.nytimes.com/2008/02/08/science/earth/08wbiofuels.html?pagewanted=print
。2月8日アクセス)。
<コバ>
自民党系の立候補者を見事打倒した東国原知事ですが、道路特定財源については自民党の道路族と全く同じような主張(日テレの携帯サイトですが、
http://i21.4cast.co.jp/news/html/102847.jhtml?uid=NULLGWDOCOMO&sid=MYNI
)をしていて、残念です。以前もその立候補者を副知事に任命しようとしており、無所属で当選しても、自民党に媚びるようにしなければ政治生命を絶たれてしまうのでしょうか。
ウクライナでオレンジ革命が起こっても、エネルギー資源をロシアに握られてしまっていて、ウクライナの親ロシア派がまた再起の時を狙い続けているように、自民党を打倒するという決意が日本の有権者の間で確固たるものにならないと、細川内閣がすぐに崩壊しまったように、政権交代が実現しても、日本の政治はまたすぐに自民党に牛耳られてしまうように思えます。
民主党内でも元自民党系議員ばかりが目立っていて、自民党の延命はまだまだ続きそうです。民主党は生活が第一、というスローガンで勝利できたのだから、それを納税者にしっかり訴えて自民党打倒を呼びかけてもらいたいものです。
太田さんみたいな革命家も絶対数が少なすぎ!
<太田>
口幅ったいが、ホントにそうですよ。
何で私のようなロートルが「革命」の最前線に立たなきゃならないのですかね。
皆さんとディスカッション(続x61)
- 公開日:
コラム#2354(2008.2.9)を受けて
1、風車が倒壊した事故は、エラー警告に運転員が気付けないマニュアルミスの可能性です。http://www.eurus-energy.com/data/20070316.pdf
風の豊富な東北・北海道に台風はほとんど来ません。しかも落雷対策の風車ができつつあります。http://www.ebara.co.jp/business/machin/energy_related/wind/epwhp2.html
もしも風力発電の生み出すエネルギーが、その製作に必要なエネルギーよりも大であるなら、メディアのチェックが厳しい独・米国・英国が、大規模な風力発電に取り組んでいる事実の説明ができません。http://www.nikkeibp.co.jp/news/eco07q2/535683/
日本の電気の単位発電量当たりのCO2量は346gですが、風力発電では25.9g以下です。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A2%A8%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB
続く
2、>IPCC「南極の氷床は21世紀には質量が増加する可能性が高い」<
>IPCC「東南極の標高の高い寒冷な地域では、おそらく降雪量の増加が原因で氷厚が増しているが、・・・西南極の氷厚の減少分はこれを上回っている。」<
IPCCは、前者では南極で21世紀に氷床が大きくなると言い、後者では氷厚の減少が上回ると言ってます。もちろん、揚げ足をとるつもりはありません。
温暖化が起こるのは確かなところ、南極の氷がどうなるかは不確定要素が多いので「そんなに解けないし、解けても降雪量が増えるのでトントン。」と安心するのは危険ではないでしょうか。
さらに、世界の降水量の変化が増大する可能性があります。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jdf/Dambinran/binran/TPage/TPOndanka3.html
続く
3、このまま風力発電を日本でほとんど導入しない場合に喜ぶのは、チャイナとの排出権取引によってCO2を削減するODA利権集団です。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080201AT3S3100U31012008.html
電力会社を中心とする原子力巨大利権と、この排出権ODA利権が、日本における反風力発電の本丸ではないでしょうか。
NHKに電力会社系の特殊法人の理事がでていて「風力発電は風に左右されて出力が変動するので精密機械メーカーに迷惑をかける。だからこれ以上増やすのは難しい。」と発言していました。ドイツには精密機械メーカーはないのでしょうか。
さらに、風力発電はエネルギー自給率向上の面でもご指摘の地熱発電と同じく重要なのに、ほとんどその点が指摘されません
大阪の川にゃ
1/4 TKaw(4つにわけました。)
TKawです。初めてコメントします。
(最近このblogを知った者です。有料購読者にまだなっておりません。考え中です。)
私は、環境にはまったくの素人ですが、
>少なくともEUや米国に関しては、そのような政策は、
>地球温暖化防止という観点からは、完全に逆効果であることが科学的に
>はっきりしたようです
この引用先ニューヨークタイムスの根拠になっているScienceの論文は、まだScienceExpressに置かれている(つまり発行号数やページがきまっていないがインターネットでの購読者のみ読める)論文で、
“Land Clearing and Biofuel Carbon Debt”, Fargione et al.のことだと思います。
先日、ニューヨークタイムスに限らず他の科学系のネットニュースでもこの論文をもとに、Biofuel(バイオ燃料)の見直しを促すような記事を読みました。
2/4 Tkaw
私が読む限り、この論文が言っているのは、「森林や泥炭地を、バイオ燃料のための耕作地にすることは、当面のCO2排出量の収支からみてあきらかに良くない」ということと、「abandoned agricultural lands(休耕地のこと?荒れ農地?)でのバイオ燃料のための穀物栽培」や「waste biomassをバイオ燃料の材料に使う」ことは、「COs排出量の収支からみて良い」ということです。
ところが太田さんが引用されている記事も含め、「バイオ燃料が石油燃料より悪い」に焦点をあてすぎていて、後半の「休耕地の復活は、良い」の部分が、軽視されているような印象を受けます。
3/4 Tkaw
以下、典拠となるもと記事が思い出せないのですが、(確か東大総長の小宮山さんの本だったと思います。以下の記事の最後のページにちょっとだけ触れられている
http://premium.nikkeibp.co.jp/em/report/09a/index.shtml)
日本は、減反政策をやめて米の休耕地を復活させ、バイオ燃料のもととすれば良いという、そういう動きがあるというのを読んで、感心したことがあります。とてもいいアイデアだと思いました。
>少なくともEUや米国に関しては、。。。逆効果
と、限定されているのは、そのような日本の動きのことに含みをもたしておられるのでしょうか。
4/4 TKaw
もっとも、いまネットを検索しましたら、
http://www.teamrenzan.com/archives/readers/takahashi/post_317.html
なるページに、日本のすべての休耕地を米や菜種にし、日本の廃食用油とあわせても、年間軽油の1.6%から2.5%にしかならない、と書かれていますから、この記事を信用すれば、根本解決からはほど遠いようです。
なお、わたしが住んでいるカリフォルニアのバークレーでは、近所の人から廃油を集めて、ディーゼル用に使えるようにして売っている人がいて、私の友人などは、安い燃料でディーゼル車を使用したりしています。
以上、投稿ルールを守っているか自信がありませんが、興味のあるかたがおられるかとおもい、投稿しました。