太田述正コラム#2395(2008.3.1)
<皆さんとディスカッション(続x76)>
<ちんみ>
 –息を吐くように嘘を吐く 増田好平防衛事務次官–
 片腹痛いとはこのこと。
 増田次官は「当日の正午から大臣室に航海長を呼び、石破防衛大臣やわたし、統合幕僚長ら幹部10人程度で事情を聞いた」と説明したうえで、その内容について「正式な議事録はとっていない。メモをとっていたかどうかもわからないし、少なくとも自分はとっていない。どんな内容だったか覚えていない」・・だと。
 “聴取の内容 覚えていない”なんぞぬかしている増田次官ですが、これが本当だとすると、重度の記憶喪失症の者に防衛事務次官職を託している 防衛省の危機です。大丈夫か~。
 緊急に(極秘裏に)事情聴取して、録音はおろかメモ?すらないのですか~ あー そ-ですか。
 所詮“戦争ごっこ”で禄を食むことができる公務員だものね。
 スタグフレーションで、生活破綻(及び予備軍)が多発する 今日の日本国民から見ると、まっこと羨ましいかぎりです。
 増田次官、朝起きたら 耳から脳みそ垂れているのではないでしょうか・・枕を確認することをお奨めしたい。(ひょっとすると、狂牛病で脳がスポンジ状態なのかも。)
 もう、国民をなめきっているとしかおもえない増田次官の言動・・記者会見にて、目が泳いでいて、どんどん どつぼに嵌ってゆく様は、みていて痛いほどでした。
 で、わざわざ呼び出した航海長から聞いたことを忘れるはずがない。これは口裏を合わせたとは言えないので、ウソをついている。
 「邪(よこしま)な相談をしていたに違いない」=と国民からおもわれて当然です。
 その通りの、邪(よこしま)な輩なのでしょう。
 しかも今度は、↓飲酒していた疑いがあるとして…(ほんとうかどうかは判りませんが)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080229-00000009-jij-pol
もう、なにがあっても驚きませんね。(あきれ疲れた)
 所詮、キャリアはじめ 上級職で現場経験皆無の幹部(ほんの研修程度の現場をなぞっただけで、全てを把握したつもりの者)は、“現場”のことが判るわけが無い。
 現場において、訓練されて、緊急避難行為を頭ではわかっている“筈”であっても、それが行動に移せるか否かは別物で、自分が未経験の事象に対しては緊急事態であろうと直ぐには危機感と繋がらない。
 緊急時であろうが、(おどろくことに)“非常ボタン”すら押せないのが現場なのだ。
 自分以外にも他の者がいるから安心・・で、緊急時には他の誰かが処置する筈…危機感・責任感なんぞ皆無の、ゆるい環境になっているのが“組織”であり、これは自衛隊に限ったことでは無く、公安職の公僕から民間の会社までにいえることですね。
(独りだけで組織の全責任を負う勤務すれば善いのだが、この個人すら組織は信用しない)
※ 自衛隊法第42条は「隊員は、懲戒処分による場合及び次の各号の一に該当する場合を除き、その意に反して、降任され、又は免職されることがない」と定めたうえ、分限処分の対象として、次のように定めている。
1 勤務成績がよくない場合
2 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合
3 前二号に規定する場合のほか、その職務に必要な適格性を欠く場合
4 組織、編成若しくは定員の改廃又は予算の減少により、廃職又は過員を生じた場合
 さて、どうするのでしょうか。
<太田>
 前に申し上げたことと一部だぶりますが、まず、石破大臣と増田次官と海幕長を更迭し、しかる後に、防衛省キャリア(のうち少なくとも課長以上)は全員キャリア資格を一時停止した上で他官庁に「放逐」し、他官庁から(防衛省キャリアよりはちょっとはマシであるところの)キャリアを受け入れた上で、彼らに内局の運用部門を統幕の運用部門に吸収し、内局を背広組と制服組の混成組織につくりかえる、ということを骨子とする防衛省改革案をつくらせ、防衛省改革を断行すべきでしょう。
 もとより、これは防衛省改革の第一歩に過ぎません。
 自衛隊に戦う任務を与えるかどうか、与えないのなら自衛隊を大幅に縮小する、与えるのなら、それにふさわしい自衛隊につくりかえることをやらない限りは、防衛省の退廃、腐敗は続くことでしょう。
<Yoshu>
 コラム#2026「ホロコーストの真相」を読んでから、ホロコーストシリーズを読みました。
 今まで知らなかったホロコーストに対することを発見できて、驚いてます。
 “シンドラーのリスト”“ソフィーの選択”“ブリキの太鼓”など、ホロコーストやナチスドイツ時代が背景になった映画を観たり、原作を読んだりしているので、とても参考になりました。
 一民族をこの世から、抹殺するという考えに恐怖を感じました。
<太田>
 口幅ったいが、大切なことは、日本人としての視点を忘れないことです。
 例えば、南京事件等の日本軍の国際法違反事例とナチスドイツのホロコースト、日本の植民地統治の「苛酷さ」と欧米の中では最もマシであった英国の植民地統治の「残虐さ」(コラム#2030等)とを比較することです。
<コバ>
 週刊ダイヤモンドで、野口悠紀雄氏が、戦前の日本企業は株主の影響力が強いアングロサクソン的なものであったと論じています。しかし、第二次大戦中に岸信介ら革新官僚によって産業の国家統制が主張され、戦時経済の要請の下で、その考えが優勢となり、日本の企業構造は大きく変わってしまった。経団連も戦時中の「統制会」の上部団体が名前を変えたもので、政府による介入や統制に反発する「財界」が現在の日本には存在しない、との ことです。
 弥生・縄文モード論でいえばどう論じることになるのでしょう。(多分)弥生人たる岸信介ら革新官僚は、日本企業をアングロサクソン的なものから 日本オリジナルの閉鎖的企業構造を作り上げてしまったのでしょうか(弥生化? 縄文化?)。
 その構造が現在の腐敗した政官業癒着の原因となっているのか?
 いずれにしても、戦後レジームからの脱却を説くリーダーは、吉田ドクトリンや岸の、産業の国家統制思想の抜本的な見直しをせねばなりませんね。
<太田>
 (岸氏個人の出自はともかくとして、)昭和期における日本の縄文モード化は、普通選挙の導入による縄文人(大衆)への権力委譲を背景に、かつての藩閥による任命制に代わって、試験選抜によって就任した、従って次第に縄文人が多数を占めるに至っていたキャリア官僚や陸海軍将校が、弥生人エリートの権力を下克上的に奪取することによって進展して行ったのです。
<消印所沢>
 
 興味深い記述を発見したので・・<略(太田)>・・そのままお送ります.
 世代的には,永田元議員は貴兄の後輩ということになりますよね?
<引用始め>
 ・・私〔森喜朗〕は彼〔永田寿康〕のことを「偏差値教育の結果だ」と言っているんだ.
 今,東大,京大に行く子供は,比較的恵まれた家庭の子が多い.塾に行かせたり家庭教師をつけたりできる家庭ですね.
 そういう家の親たちは,東大に行くことが人生における目標だと子供に教え込む.
 そこに行くためには,まずいい中学校に行く.それはラサールか開成か灘ということになる.
 そのためにひたむきに勉強させ,余計なことはさせない.
 <中略(太田)>
 <このうようにして東大に行き、更に官僚になり、そして(太田)>若くして官僚を辞めた人には,・・<略(太田)>・・だから常識がない.
 永田君に至っては民主主義の原点がわかっていない.
 自分が反対していた法案が通ったりすると,廊下で号泣するわけでしょ.
 森内閣のときも,彼は本会議場のいちばん前でさかんに野次ってましたよ.
 それで松浪健四郎議員はアタマにきて水をぶっかけたんです.
 そのとき蔵相だった宮澤喜一さんが,
 「森さん,大変な人たちが出てきましたね. あれは何者なんでしょうね」
と言うから,
「大蔵大臣,何をおっしゃいますか.あれがあなたの大学の後輩であり,役所の後輩です」
と言ったら,
 「おやまあ,えらい時代になりましたねえ」
って.(笑)
<引用終わり>
―――『森喜朗 自民党と政権交代』(森喜朗著,朝日新聞社,2007/10/30),p.287
<太田>
 永田元衆議院議員は、東大に入って工学部物理工学科を卒業しているところ、慶應志木高校出身ですから、中学がどこかは知りませんが、親が「東大に行くことが人生における目標だと子供に教え込」んだケースだとは必ずしも思えませんね。
 いずれにせよ、同氏は東大卒である限りにおいては、私の後輩ということになります。
 なお、キャリア官僚として旧大蔵省に入省したと言っても、理科系ですからどの官庁でも同じですが、傍流です。(私はそのような扱いを是認しているわけではありません。念のため。)
 (以上、事実関係は、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B8%E7%94%B0%E5%AF%BF%E5%BA%B7
(3月1日アクセス)による。)
 この永田氏が相当の奇人変人であることは確かですが、だからと言って、(既に故人ですが)宮澤さんだけには「おやまあ,えらい時代になりましたねえ」 なんて言われたくありませんね。
 宮澤さんは、公的には吉田ドクトリンの墨守に政治生命をかけたと言って良い日本の戦後の国賊ナンバーワンだと私は思っていますし、私的には酒乱だからです。(酒乱の話は宮澤さんに仕えた旧大蔵官僚から直接聞きました。)
<Jiangmin>
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20080301/1204331655
■[刑事事件][表現の自由]名誉棄損「ネットは別基準」 書き込みで無罪 東京地裁
 こんな判例が出たようです。
<太田>
 そのようですね。
 ネットでは一般メディアの場合と違って真実性の証明の程度が低くて良い、という判旨であるようで、エリート裁判官の中にも少しはネットの常識をわきまえた人がいて安堵しています。
 千葉氏が2度にわたって私を提訴した事案は公共性のある事案であることからすれば、私による真実性の証明の程度は更に低くて良い、ということになるのではないでしょうか。同氏の提訴は市会議員2名が歴とした出版社から出したという信頼性の高い本に拠って私が書いたコラム#195に関わるものであり、もともと名誉毀損にはあたらない、と言いたいところです。
<野呂康之>
 コラム#2012に検索でたどり着きました。
 交通事故防止@安全と安心のポータルサイトの野呂と申します。
 死の差別化ですか!面白い表現です。日頃から日本国内でも1万人近い人が、コンスタントに交通事故で亡くなっています。しかも1種類の工業製品で!!と話をするのですが、確かに差別化という切り口も、インパクトがありますよね。人間の危機意識を呼び起こし維持するにはどうしたらいいのでしょう?いつもその悩みと闘っています。
 これからも宜しくお願いします。
<太田>
 あたごの事故で2名の方が行方不明になっており、日本中で大騒ぎになっています。
 他方、日本の海難事故で昨年1300名弱もの方が死亡したり行方不明になったりしています(
http://www.kaiho.mlit.go.jp/info/kouhou/h20/k20080110/k080110.pdf)。
 また、あたごの事故は、漁船の業務中の事故であっても、いわゆる労務災害には必ずしも該当しないとは思いますが、日本の労災による死者は毎年1,500名も出ています(典拠省略)。
 しかし、死者や行方不明者が出た個々の海難事故が全国ベースで報道されることはほとんどありませんし、労災事故死に至っては、およそ報じられることすらまれです。
 ここにも死(行方不明を含む)の差別化が見られますね。
<KY>
 有料会員の支払いはカードにしてもらいたい。
 希望はダイナース セゾン です。宜しくお願いします。
<太田>
 事務能力的にそこまでの対応は不可能です。
 そもそも、カード払いにしたところで、インターネットバンキングでお振り込みになる場合と手数的にはほとんど変わらないのでは?
 話は変わりますが、先日、ネット上で、中国新聞の2月21日付の次のような記事を発見しました。
 「元防衛官僚で評論家の太田述正(59)は1月末、自らのブログ<(コラム#2255(太田))>で英文のメモを公開した。仙台防衛施設局長時代の2000年11月、米総領事の一人に手渡したという。「岩国は滑走路沖合移設が終われば、最もNLP(夜間離着陸訓練)に適した場所になる」。そんな文言が含まれていた。 防衛施設庁首席連絡調整官として日米協議にあたった経験もある太田は当時、ある案を関係者に打診していた。米軍三沢基地(青森県三沢市)に第二の滑走路を建設し、NLPの代替施設として使いたい―。論点を整理したこのメモの中では、岩国を将来のNLPのメーン施設と位置づけるのが前提となっていた。・・国が事業推進を決定する2カ月前の92年6月18日。防衛施設庁、広島防衛施設局、山口県、岩国市の実務担当者が、後に「密約」と指摘される合意議事録に署名した。 国からの「NLPについては、将来とも受け入れてもらえることを前提に…」との照会に対し、県、市は「将来とも受け入れざるを得ないと思料」と回答していた。 ・・太田はそのころ防衛庁人事局にいて沖合移設にタッチしていなかったが、事業化の決定に「費用対効果が小さい。よく査定を通ったな」と感じていた。・・」
 この記事が、誕生日を2月17日に迎えたばかりの私の年齢や、1992年当時の私のポストを正確に記していることに(当たり前と言うべきかも知れませんが)敬意を表します。
 しかし、長時間取材を受けた私に、この記事の載った紙面くらいは送って欲しかった思います。
 さて最新の動きですが、岩国市の福田良彦新市長は、2月28日、米空母艦載機部隊受け入れを正式に表明しました(
http://www.asahi.com/politics/update/0229/SEB200802280013.html?ref=rss
。3月1日アクセス)。
 しかし、同市長がNLPの岩国基地での実施まで認めたわけではありません。
 艦載機部隊の基地が空母の母港から遠く離れることが本決まりとなった一方で、NLPが比較的岩国の近傍で実施できる目途はたっていない、というのですから、一体防衛省は何を考えているのでしょうか。
 どうせ、米軍がなし崩し的に岩国でNLPを実施することになるだろうが、滑走路の沖合移設工事が来年度中には完了しているので、騒音問題に火が付くことはあるまいと高をくくっているのでしょう。
 岩国の皆さん。お覚悟を。
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太田述正コラム#2396(2008.3.1)
<アフガニスタンに行ったハリー(続)>
→非公開