太田述正コラム#2413(2008.3.10)
<日本をめぐる話題(その1)>
1 始めに
このところの、私の目にとまった日本に関わる記事を見繕い、それぞれのさわりをご紹介しましょう。
2 国際貢献
日本は2001年には世界一の経済援助国だったが、2006年にはGDPが半分の英国に抜かれて第三位になり、早ければ今年にドイツとフランスに抜かれる見込みだ。
日本のこれまでの経済援助が被援助国ないし被援助国際機関から必ずしも感謝されなかったことと、日本が相対的に貧乏になったことから、経済援助予算が減らされてためだ。
日本が相対的に貧乏になったというのはこういうことだ。
日本の名目GDPは1997年の第二四半期に頂点に達し、現時点でまだその時より0.4%下回っている。これに対し、同じ期間に米国は69%、ユーロ地域は52%も名目GDPが伸びている。その一方で日本の国家債務はGDPの150%にも達するに至った。
こういうわけで、日本の経済援助は次年度予算まで、毎年9年間にわたって減らされてきており、つごう40%以上減額された勘定になる。
では、経済援助と対でとらえられることが多い軍事面での国際貢献の方はどうなっているのだろうか。
日本は憲法上の制約から、軍隊の海外派兵は行わないことにしており、国連平和維持活動でも、既に平和が確保された所にしか自衛隊を派遣していない。
2月末時点で日本は、50人の自衛官しか国連平和維持活動に派遣していない。(その大部分はゴラン高原に派遣されている。)日本と同じく戦後軍事嫌いになっているドイツですら、アフガニスタンだけで3,500人、全体としては10,000人も国連平和維持活動に派遣しているというのに・・。
(以上、
http://www.ft.com/cms/s/0/4a2aabc4-e548-11dc-9334-0000779fd2ac.html
(2月28日アクセス)による。)
→コラム#1869「国際貢献を放棄した日本」(2007.7.17)とほとんど同じ内容の記事ですが、外国のメディアに面と向かって言われると本当になさけないですね。(太田)
<太田による補足>
日本のODA経費(当初予算)は、1997年の11,687億円がピークで、2008年は7,002億円。11年連続の減少と言ってもよい。(1998年から1999年にちょっと戻しているので、それからなら9年連続の減少ということになる。)ピーク時に比べて59.9%に落ちている。
(ただし、実績ベースでは、1995年の14,489億円がピークで2003年は8,880億円、2004年が8,906億円。対国民所得比では、1984年の0,34がピーク、2004年は0.19%。)
他方、防衛関係費(当初予算)は、2002年の49,560(50,237)億円がピーク。2008年は47,796(48,451)億円なので、6年連続の減少。ピーク時に比べて96.4%(96.4%)と目減り程度。なお、()内は情報収集衛星関係経費を含む。
このような両経費の取り扱いの違いは、米国の「指示」によると考えればよかろう。
例えば、ゲーツ米国防長官は、昨年11月に日本に防衛努力強化を求めている(
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20071110i201.htm
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-gates9nov09,1,6454016,print.story?coll=la-headlines-world
(どちらも11月11日アクセス)による)。
3 捕鯨
プリンストン大学生物倫理教授シンガー(Peter Singer)
反捕鯨団体のシーシェパードが日本の捕鯨船に乗り込むという事件が起きたが、反捕鯨派を擁護しているオーストラリアは30年前まで捕鯨国だった。
日本は欧米の反捕鯨派は文化的信条を日本人に押しつけようとしていると批判する。
それに対し欧米の反捕鯨派は、不必要な苦痛を動物に与えることは悪いことだとする観念は普遍的なものであり、日本の仏教にだってそのような観念はあるはずだ、と反批判する。
しかし、このような反批判には弱点がある。
欧米諸国においても、不必要な苦痛を動物に与えている例に事欠かないからだ。オーストラリアのカンガルー虐殺しかり、狩猟しかり、と殺工場しかりだ。
だから、このような反批判をしたいのであれば、その前に自分達の国において動物に不必要な苦痛を与えているのを止めなければならない。
(以上、
http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2008/01/24/2003398629
(1月24日アクセス。英ガーディアンの記事の転載)による。
日本で沿岸捕鯨を行っている町に行けば、捕鯨について日本人がどう考えているかがよく分かる。
彼らは、特定の種類の動物が絶滅に瀕している時には、経済的理由やそれが日本の伝統だという理由でその動物を獲りつづけることはいけないと言う。
しかし彼らは、その種類の動物の数を減らさない範囲で獲ることまで駄目だ言う権利は誰にもないのであって、これは正義の問題だ、と考えているのだ。
(以上、
http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/7281989.stm
(3月8日アクセス)による。
→英国の有力メディアが、捕鯨問題で日本の立場を擁護する記事を掲載してくれていることを忘れないようにしましょう。(太田)
(続く)
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太田述正コラム#2414(2008.3.10)
<「太田総理・・」ダブル収録記>
→非公開
日本をめぐる話題(その1)
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2 国際貢献
について意見いたします。
日本の自衛隊を海外に派兵しても血を流すリスクにさらされないのは、日本の現役指導層の世代に血を流した世代がいないことが大きいと思います。
先の大戦後に、日本はそういった世代の断絶を生じさせていますので、将来、そのようなリスクを若者にお願いしたときに、今の指導層の世代が毅然と説けるのかが疑問です。
各国の詳細は無知ですが、多少なるとも流血のリスクは世代間を通じて継承がなされていると想像します。
太田さんはいかがお考えでしょうか。