太田述正コラム#2417(2008.3.12)
<皆さんとディスカッション(続x82)>
<KAZU>
 コラム#2413の「2 国際貢献」について意見いたします。
 日本の自衛隊を海外に派兵しても血を流すリスクにさらされないのは、日本の現役指導層の世代に血を流した世代がいないことが大きいと思います。
 先の大戦後に、日本はそういった世代の断絶を生じさせていますので、将来、そのようなリスクを若者にお願いしたときに、今の指導層の世代が毅然と説けるのかが疑問です。 各国の詳細は無知ですが、多少なりとも流血のリスクは世代間を通じて継承がなされていると想像します。
 
<太田>
>日本の自衛隊を海外に派兵しても血を流すリスクにさらされないのは、日本の現役指導層の世代に血を流した世代がいないことが大きいと思います。
 それは違うでしょう。
 自分自身が血を流す立場にない政治家、ひいては一般国民が、集団的自衛権の行使はできないという政府憲法解釈なる自己規制をして自衛隊の海外派兵を認めてこなかったというだけのことです。
>各国の詳細は無知ですが、多少なりとも流血のリスクは世代間を通じて継承がなされていると想像します。
 戦後、国連平和維持活動に参加していないか参加していても犠牲者を出しておらず、内戦や戦争を経験しなかった国・・当然軍人の戦死者は出ていない・・は日本以外にもありうると思いますよ。
>太田さんはいかがお考えでしょうか。
 私は全く心配していません。ここでは理由の詳細には立ち入りません。
 一昨日、「太田総理・・」の収録に出演した元自衛官の6名は、予備自衛官に登録している女性も含め、大部分が、いざとなったら武器をとり、血を流す覚悟があると言っていましたよ。
<コバ>
携帯サイト日テレ記事(
http://i21.4cast.co.jp/news/html/104904.jhtml?uid=NULLGWDOCOMO&sid=MYNI
)によれば、オバマ、クリントン両名のドリームチーム(正副大統領同時就任)は難しそうですね・・。
<太田>
 11日、ガーディアンは、クリントンは副大統領候補には絶対ならないだろうが、オバマは含みを残したとしている(
http://www.guardian.co.uk/world/2008/mar/10/barackobama.hillaryclinton
。3月11日アクセス)のに対し、ファイナンシャルタイムスは、オバマが副大統領候補になることを拒否したとしており(
http://blogs.ft.com/crookblog/
。3月11日アクセス)、果たしてどちらを信用すべきか・・。
 とまれ、オバマは11日に行われたミシシッピ州の予備選で、61%対37%の大差で勝利しました。これは、予備選の終わった共和党支持者達が、相当数(総投票数の12%)民主党の予備選に参加し、その4分の3がクリントンに投票したことを考えると、地滑り的勝利であると言えるでしょう(
http://commentisfree.guardian.co.uk/richard_adams/2008/03/obamas_delta_force.html
。3月12日アクセス)
<Pixy>
 –ジョキッチ氏の反論–
>マルコームのコソボ史に対し、ロンドン大学ゴールドスミス校(Goldsmiths)のジョキッチ(Dejan Djokic)歴史学講師が反論を同じガーディアン紙上で行っているので、紹介しておきます。(コラム#2401)
 紹介ありがとうございます。太田さんの情報収集力と各論説を日本語で分かりやすく紹介される手際の良さには敬服します。
>更に、マルコームの、現在のコソボが社会主義ユーゴスラビアにおいて連邦の単位でありかつセルビアの自治州であるという二重の地位を(ヴォイヴォディナとともに)有していたという指摘は正しいが、
 ただ、太田さんのまとめの上記部分については、?です。反論要旨の紹介とは言え、少々まとめすぎではないでしょうか。
 反論中の下記部分ですので、
Malcolm is only partially right in claiming that Kosovo enjoyed a “dual status” in socialist Yugoslavia – as both a federal unit of Yugoslavia and as a highly autonomous province within Serbia. Kosovo was defined, both in the Yugoslav and the Serbian constitution, as one of two autonomous provinces of the Republic of Serbia (together with Vojvodina).
は、「更に、マルコームの指摘は、現在のコソボが社会主義ユーゴスラビアにおいて連邦の単位でありかつセルビアの自治州であるという二重の地位を有していたという「部分に限れば」正しいものの、ユーゴスラビア憲法及びセルビア憲法下ではコソボは(ヴォイヴォディナとともに)いずれもセルビアの自治州として定義されていた。」
でいいのではないですか。
 要旨というかそのままの訳ですが「コソボは実質的には自治州ではなくユーゴ連邦の一部だった」という説が先のマルコーム氏のコラムの重要な論拠だったかと思いますので、評価材料として反論にある憲法上の地位にも触れてほしいものです。
 ジョキッチ氏の反論を「コソボが連邦の単位とセルビアの自治州という二重の地位を有していたという指摘は正しいが」と紹介するのと「二重の地位を有してい たという指摘は部分的には正しいが、ユーゴ、セルビアの両憲法下ではコソボはいずれも自治州と定義されていた」と紹介するのでは、随分と読者の受け止め方 が違うかと思います。
<太田>
 当時のユーゴまたはセルビアの憲法に、コソボがユーゴ連邦の構成単位の一つであると読めるような規定、例えば輪番制でユーゴの大統領にコソボ代表が就くといった規定、があったかどうか(私には)分からない以上、私がジョキッチが憲法に触れた部分を紹介しなかったのは正解ではないでしょうか。
<Pixy>
ところで以前、コソボ独立は国際法上どうなんだ?という話があったかと思いますが、コソボ独立の法的な議論については、下記のBBCの2つの記事にそれぞれの立場の主張が詳しく書いてあります。
Saying ‘No’ to Kosovo independence
http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/7265249.stm
->Romania, Cyprus, Slovakia and Spainの4ヶ国のMEPの反対理由のコメント
 ジョキッチ氏の反論にもあった、コソボは憲法上、連邦から離脱する権利は与えられていないという部分は、上記のスペイン人の意見で初めて知りました。
Legal furore over Kosovo recognition
http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/7244538.stm
->EUの主張とセルビア、ロシアの反対意見
 EUの主張の不自然さ(安保理決議1244に書かれていない「精神」が独立を支持している。とか、同決議ではコソボはユーゴ連邦の一部とされているため、 独立でセルビアの主権は侵害しない→確認したが同決議ではそんな言及はない。恐らく決議文中の「Kosovo,Yugoslavia」という、どこにでも ある地名の表記を持って、コソボは連邦の一部だと強弁している。EU官僚恐るべし)は必見です。
<太田>
 ご教示どうもありがとうございます。
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太田述正コラム#2418(2008.3.12)
<日本をめぐる話題(その3)>
→非公開