太田述正コラム#2441(2008.3.23)
<皆さんとディスカッション(続x93)>
<藤九郎>
「日本国の国益追求」(コラム#2436)とは何なのか。
巷の大勢は、目先の利益の獲得に汲々としている姿以上のものは感じられませんが、公正なルールに基づく国際秩序を求めることこそ「日本国の国益」だろうと思います。太田先生の見解をお聞かせ下さい。
<太田>
おっしゃるとおりでおおむねよろしいかと思います。
政官業の三位一体的癒着構造をつくりあげたのは、「目先の利益の獲得に汲々として」きた日本の有権者達です。その結果が自民党、防衛省、外務省、財務省、国交省、厚労省、農水省等の官僚機構、更には政府と関わりの深い業界、業者の腐敗・退廃となって長期的な損失をこの有権者達にブーメランのようにもたらしているのです。
対外政策だって、「目先の利益の獲得に汲々と」しない形で推進されない限り、長期的な利益を日本にもたらすはずがありません。
ただし、日本の場合、その前に政府の自立・・三位一体的癒着構造からの解放と米国からの「独立」・・を果たさなければなりません。
<有料読者OS>
質問させていただきます。
所謂”民主主義”が国家の政治形態として成立するのでしょうか。成立している国はあるのでしょうか。(どこまでを成立と呼ぶのは難しいでしょうが。)つまり、日本の今の腐敗政治に対する批判として、「そのような政治家を選んだ国民であるあなた方が行けないのだ。」(コラム#2438)が成立するのでしょうか?
政治が科学者や経済学者のような(ただし、一流の)プロが担当すべき専門職であれば、それを素人の国民が評価し、選任するなど、本来無理ではないのか? 本音のお考えを是非いただきたいと思います。
<太田>
政治が専門職であれば、政治家養成校が先進民主主義国のどこにでもあるはずですが、日本の松下政経塾くらいしか思い浮かばないところを見ると専門職ではなさそうですね。
(米国を見ると、ロースクール(法科大学院)が相対的に多くの政治家を輩出している専門職養成校ですね。たまたま、現在の民主党大統領予備選を戦っているオバマもクリントンもロースクール出身者です。ちなみに、昨日投票が行われた台湾総統選を戦った馬も謝もそうです。)
そりゃそうであって、人間は社会の中で生きている社会的動物である以上、多かれ少なかれ、誰しも政治を実践しているのです。ですから、特定の政治家が政治が上手か下手かを判断することくらいは、大抵の有権者にとって可能であると考えてよいでしょう。
<HUNA>
–コラム#2438と3/21の「太田総理~・・」–
選挙に投票することに対する責任の認識の差が問題なのではと思いました。
自分達が選挙で代表者を選んで政治をするシステムなのに、それをお上とごっちゃにしていることが問題なのでは?
ここの認識を変えないと日本はいつまでたっても変わらないような・・。
<名も無き戦士>
コラム#2414「「太田総理・・」ダブル収録記」を読みましたが、同感です。
所詮、芸能人のバラエティ番組に過ぎません。
それほど重要な番組でもなければ、公平公正な議論が出来る訳でも無いでしょう。
その辺を割り切って考えないと、マスゴミの思う壺ですよ。
<コバ>
朝日新聞で、見返りの少なくなった官僚になるよりも金融などの外資系企業への道を選ぶ東大生が非常に多くなったという記事がありました。他のエリート大学生なども、日本の腐敗した官僚機構よりは、外資系などの給与が非常に良く、風通しの良い企業を選ぶようになっているのでしょうか。日本に失望した若い弥生人エリートが外資系企業に流出しているのかもしれません。
恩給制度を導入するとか、給与をもっと充実させることでやる気のあるエリートが官僚になる道を選ぶようになるものでしょうか。外資の給料って日本のそれと段違いっぽいし・・。
<太田>
上述したような政府の自立を実現できれば、官僚機構に勤務することの魅力が大幅に増し、敬遠し始めた優秀な若者達は再びキャリア官僚の道に目を向け始めることでしょう。
恥ずかしくない現役生活を保障できる給与と、恥ずかしくない退職後の生活を保障できる恩給さえ確保できれば、キャリア官僚へのそれ以上の金銭的見返りは不要です。
<チンさん>
– チベット動乱! 五輪中止! バブル崩壊!–
チベット動乱で五輪はなしになるでしょう。中国バブルは春四月までに崩壊するでしよう。中国発世界大恐慌が起こるかもしれません。
たぶんそうなるでしょう。そうなれば 中国全土で暴動や略奪が起こるでしょう。 中国は無神論国家のためモラルがありません。このため収集のつかない事態に陥る危険があります。今年は世界にとって極めて艱難な年となるでしょう。
<大阪川にゃ>
>チベットを属国化しただけでは飽きたらず、強引にその植民地化を押し進めている中共
植民地だなんてそんな大人しいものでしょうか。チャイナはチベットを民族浄化(絶滅化)しようとしていると見た方がよろしかろうと思います。
チベット出身のペマ・ギャルポ教授によると、チベット人600万人の5分の1に及ぶ120万人が殺されたようです。
http://yoshiko-sakurai.jp/index.php/archives/392?PHPSESSID=db77ecb6d30298a22798db080a527d6c
<太田>
お二人とも、(1939年の平沼内閣総辞職の時の平沼騏一郎首相の発言をもじって言えば)世界情勢は複雑怪奇であると肝に銘じる必要があります。単純な善悪二元論で割り切れることなどまずありません。
欧米諸国におけるチベット支援運動の高まりは、欧米諸国における捕鯨禁止運動・・鯨の「殺戮」、「絶滅」を図っているとして日本による調査捕鯨を非難・・の高まりと同根の背景があるかもしれない、とまで申し上げるとちょっとお二人には刺激が強すぎるかな。
鯨もチベット人も欧米諸国の人々から見て保護すべき珍獣ではないのか、そして彼らのこの思い入れのとばっちりでとんだ迷惑を被っているのが、一方は自由民主主義国の日本であり、一方はファシスト国家の中共だ、と見ることもできるのでは、ということです。(ここまではっきりとは書いてはいないが、「チベット騒擾」シリーズ(コラム#2430(公開)、2433、2435、2437、2439(以上未公開))、とりわけコラム#2439参照。)
少なくとも、
>チベット人・・120万人が殺された
と本日朝のフジTVの番組でもペマ・ギャルポ氏がそう言っておられるところ、これは1937年のいわゆる南京事件における死者数十万人説並のデマです(
http://www.nytimes.com/2008/03/22/opinion/22french.html?ref=opinion&pagewanted=print
(3月22日アクセス)、及び
http://en.wikipedia.org/wiki/Tibet
(3月23日アクセス))。
ダライラマだって「文化的ジェノサイド」とは言っても「ジェノサイド」とは言っていませんよ。
ついでに、英米はチベット問題で余り発言権はない、とも申し上げておきましょう。
英国は、1903年12月に開始した英軍のチベット侵攻期間中の1904年3月31日、無抵抗に等しいチベット軍兵士500人~1,300人を三方から機関銃を撃ちかけて殺戮しています。
米国に関しては、戦後の米CIAの暗躍があります。
中共のチベット「征服」後、チベット自治区内とは違って、その外のチベット人地域は農地再分配の対象となっていたところ、これに反発したこれら地域の大地主たる貴族や僧院等が1956年にCIAの支援を得て叛乱を起こし、それが1959年にチベット自治区にも波及します。1959年にこの叛乱は鎮圧され、ダライラマらはインドに亡命しますが、CIAの引き続きの支援の下で散発的な叛乱はそれ以降も1972年に突然CIAが手を引くまで続くのです。
1959年に中共当局はチベット自治区での自治のレベルを引き下げ、この自治区内でも農地再分配を実施し、現在に至っています。
(以上、ウィキペディア上掲による。)
<コバ>
–台湾、国民党政権へ–
馬英九候補が謝長廷候補を破り、当選確実となったようです(日テレ携帯サイトですが、
http://i21.4cast.co.jp/news/html/105660.jhtml?uid=NULLGWDOCOMO&sid=MYNI
)。
中国との緊張関係は緩和するように見えますが、日本と台湾との関係はどうなるのでしょう。
<太田>
総統に当選した馬・・ハーバード・ロースクール卒でどうやら米国の永住権を持っているらしい(典拠省略)・・は、いわば、対中関係の現状維持を願っているところの、米国(とその属国たる日本)の傀儡であり、日本と台湾との関係に何の変化も起きようはずがありません。
これは余り人が言っていないことですが、馬の当選で一番当惑しているのは中共当局だと私はふんでいます。
その証拠に、本日付の人民網(人民日報の電子版)の日本語版は、午前中、馬が当選したということすらホームページで報じていませんでした。
それもそのはずです。
「馬氏は選挙戦中、対中関係について、(1)中国とは統一しない(2)台湾は独立しない(3)(中台間の)武力行使はしない――と、<米国と>住民の大多数が望む現状維持に向けた方針を打ち出した。」ところ、(1)を言われちゃ中共当局としては立つ瀬がありませんし、「「一つの中国」の立場ながら、「台湾の前途は、2300万人の台湾住民が決める」と、<米国の意向に沿って>人口の85%を占める台湾出身者に歩み寄る姿勢も示し」ている上、これまた米国の意向に沿って「天安門事件やチベット武力弾圧を厳しく批判する人権重視を打ち出している」からです
(以上、「」内は、
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080322-OYT1T00825.htm
(3月23日アクセス)による。。なお、コラム#2437(未公開)も参照のこと。)
民進党の総統であれば、敵対だけしていればよかったものの、国民党の総統になった以上は、経済問題等でアメをしゃぶらせなければならず、その挙げ句、見返りに何も得られない懼れがある、いやそれどころか、ひょっとすると民進党の総統の場合以上に厳しい批判が中共に投げかけられるかも知れないというのですから、中共当局は頭を抱えているのではないでしょうか。
<大>
<コラム#2438でのお答えを読みました。>
なるほど~、わかりました。
そう言われてみれば確かにそれが正論のような気がしました。
<記されてあった>コラムもきちんと読んでみます。ありがとうございました。
手取り足取り申し訳ありませんねー。
ついでに、
>天下り先ポストを増やすことに警察庁時代に血道をあげた平沢議員
この事実がうかがえる文献やバックナンバーがあれば教えてください。
<太田>
コラム#2227の追記部分で、「平沢議員には、警察官僚のときに、パチンコ業界にプリペイドカード使用を義務付けて、それを取り仕切る協会を、警察官僚の天下り先にしたという実績がある(
http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20060928
。12月22日アクセス)」と記したところです。
<ちょいまる>
「多くの官僚には、国民のために働いて「いる」ではなくて、働いて「やっている」と言う意識があるのか? 」に直接お答えをいただいていません。
また、天下りをしないと決めたのはどうしてですか。何が述正氏の正義を貫かせたのですか?
<太田>
しゃかりきに働いているとすれば、自分にとって面白いからに決まってるではありませんか。
そう思えない官僚は、若くして辞めています。
私が相当以前から天下りはしないと心に決めていたのは、法的根拠のないヤミ年金をもらうわけにはいかないし、「退職」してから実質仕事らしい仕事をさせてもらえず、しかも言いたいことも言えないのではハッピーでない、と思ったからです。
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太田述正コラム#2442(2008.3.23)
<台湾総統選挙>
→非公開
皆さんとディスカッション(続x93)
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