太田述正コラム#13531(2023.6.8)
<皆さんとディスカッション(続x5556)>
<コラム#13529の訂正>(ブログ修正済)
その前にプーチンによるクリミア併合があったところの
→
その前にプーチンによる一方的なクリミア併合等があったところの
<七氏>
ウクライナ南部ヘルソン州でカホフカ水力発電所のダムが決壊⇒すぐに黄河決壊事件を思い出した。けど。
<太田>
ロシアがやったとすれば、だけど、外国から侵攻した側がやったことになり、侵攻された側の蒋介石政権がやったところの、黄河決壊事件
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%84%E6%B2%B3%E6%B1%BA%E5%A3%8A%E4%BA%8B%E4%BB%B6
とは、その点が違うな。
<TSY>
● 復習 フィンランドのNATO加盟はGDPの物差しからはどう見えるか
フィンランドのNATO加盟は JETROによると20230404。
NATO加盟国のGDP基準の軍事費の比率は、防衛省によると、2021年度のNATO発表の各国国防費のGDPに対する比率は英国で2.25%、フランスで1.93%、ドイツで1.49%。足して3で割る単純計算で平均値を出し、それをNATOのノルマとすると、1.89%。(引用終了の後に本文続く)
フィンランドの2021年の国防費は5903.50 Million USDで、名目GDPは297,900 Million USD。
割り算すると、1.98%。フィンランドはNATOのノルマは達成している、ということがわかる。
「フィンランドただ乗り疑惑」はなさそうです。
● 戦略に必要な目的とは、
BritannicaのiOS用アプリは、Strategyの項目をどこかで聞いたことのある Eliot A. Cohenが書いています(A4びっちりぐらいの文字数で27ページの分量)。
そこで冒頭の定義をみると、Strategy, in warfare, the science of employing all the military, economic, political, and other resources of a country to achive the objects of war.
countryとobject of war というのを、ここでは気にしたいと思います。
もう一つだけ、Military Strategy(A. J. Echevarria II著 2017年 Oxford刊 岩波新書半分ぐらいの分量 A Very Short Introducitonシリーズの一つ)という本では、Strategyをmilitary strategy is the practice of reducing an adversary’s physical capacity and willingness to fight, and continuing to do so un<t>il one’s aim is achieved とあります。one’s aim が Cohenのobject of warに相当するということになります。
この二人のStrategyの定義の特徴。とくにその違いを論じるのもおもしろいテーマですが、ほっといて先に進みます。
考えてみたい仮説があり、書くとこんな風になります:
『戦略により到達したい目的とは、人-間主義の現実化を理想とする人間集団を、発展させることである』
人-間主義を定義するのは、難しいですが、理解するのは、容易だと、僕は思っています。
権力者(為政者、金持ち(大株主経営者)、役人)のあんまりに無茶な非道な行為が、世の中には満ち満ちていて、それがあまりに極端なので、それを「非人-間主義的」と指弾することは、難しくありません。非道な行為を、見聞きしたとき、その人に人-間主義の芽が育っていれば、非道の行為に対して、問答無用の強烈な嫌悪感が、とめどなく湧き上がってくるはずです。日本語が読めれば人-間主義密度の非常に濃い、宮澤賢治の童話を読んで自分と一体化させることも可能です。
おそらく、人-間主義の最大の敵は、素のままであればこみ上げてくる嫌悪感の対象となる非道な行為を、お化粧する技術でしょう。ろくでもないものを、よいものだとウソを言って売るのは広告の技術です。広告代理店的なプロ組織による、非道な行為の、お化粧技術。非道と非道でないことの区別がつくことが、「人-間主義」の第一歩なので、ここを曖昧にされることは、「人-間主義」の崩壊につながります。
論旨が、グチャグチャになってますね。人-間主義は理解しやすいものだが、広告代理店には気をつけろ、ということで、ひとまず。
戦略の目的を書け、と言われれば「国益(日本だと日本の国益)」としたり「共通の価値観(日本だと国体の護持)」と書く人が多いような気がする。そういう答と「人-間主義の現実化を理想とする」を比べてほしい。人-間主義のほうが、手応えある、具体性と、血の通った理想を、イメージしやすいと、僕は思う。
「共産主義の現実化」というのは、「人-間主義の現実化」とちょっと匂いが近い。人-間主義がどの程度、日本の風土や、日本人の遺伝的な(後天的な教育にあまりよらない)生物学的資質に依存して形成されていくものか、一応、クエッションボックスに入れておくとする。人-間主義が後天的教育によって継承可能だとするという仮説が、太田さんから提出されている。毛沢東以来の中国の指導者は日本製の人-間主義を継承しようとしている、という説だ。太田さんの論述を追うと、とくに中国に溢れる日本文化礼賛記事群をみると、太田説に、僕は賛成したくなる。
さて、ここで、後天的教育に目をとめると、共産主義のやっかいさがわかってくる。「国益」を教育しようとした人もいただろう、「共通の価値観」を教育しようとした人もいただろう、しかし、その両派より、現実的に、お金も時間もかけて、共産主義者は、「共産主義の教育」に熱心に取り組んできた(反対者からは、「洗脳」ということになって、100%否定的に評価されるわけだが)。もし、共産主義者の教育手法が本物なら、その教育手法を使って、定着させられる「人-間主義」も本物になるかもしれない。ここは、見守っていきたい。
国防を論じることが、戦略を論じることを含むことに、異議のある人はいないと思う。だけど、戦略立案には、目的が必要で、その目的を論じないことには、戦略はたたないことは、最初の戦略の定義から明かな気がする。この目的をよくわからんまま、「国益」とか「共通の価値観」という適当な言葉で、お茶を濁すことは、戦略を弱くし、曖昧にする。どこに行くかはっきりしないのに、歩きだすのと同じ。「人-間主義」についてはっきりした理解(方向感覚)があると、戦略は堅固になり、現実化に耐えられる。戦略を「人-間主義」でチエックし、戦略の迷いを減らすために、「人-間主義」をより深く把握するという、ダイナミズムもある。自分の、ほんとうに、信じられる目標は何か、よくつきつめることなしに、戦略を考えることは、できないのではないか。
<太田>
「自由/民主主義」よりも「人間主義」の方が人類共通の価値にふさわしい、というご意見だと受け止めました。
同感ですが、前途遼遠ですねえ。
<太田>
安倍問題/防衛費増。↓
なし。
ウクライナ問題。↓
<吼えるゼレンスキー。↓>
Kakhovka Dam Explosion Was ‘Absolutely Deliberate’: Zelensky・・・
https://www.newsweek.com/toxic-flood-dam-breach-having-largest-impact-russian-held-territory-1805149
<焦土戦術は、ナポレオン戦争の時と独ソ戦の時にロシアがやり、日支戦争の時に蒋介石政権がやった。↓>
A scorched-earth policy was deployed by Russia during Napoleon’s invasion in 1812, which left the French Army with only the burning ruins of Moscow to capture.
Some social media users compared the fate of the Kakhovka Dam to the order by Soviet dictator Joseph Stalin to destroy a dam across the Dnieper River in 1941 to stop invading German forces. Similarly, in 1938 China flooded destroyed levees on the Yellow River to stop invading Japanese forces, at the cost of tens of thousands of civilian lines.・・・
<でも、今回のはロシアがやったとすれば、焦土戦術よりもっと悪質だとさ。↓>
”If it was only about advancing of Ukrainian troops, the Russians would have blown the dam exactly when the offensive was starting,” he told Newsweek. “They have done it in advance because their goal is not so much to prevent the Ukrainians from advancing, their goal is to impose on Ukraine long-term unbearable costs.”
”It is revenge as if to say ‘you haven’t accepted us, you will suffer,'”・・・
https://www.newsweek.com/kakhovka-dam-explosion-russia-strategy-1805074
<こん中にクリミアの話は出て来ないなあ。↓>
As flood engulfs Ukraine’s southern combat zone, battlefield is redrawn・・・
https://www.washingtonpost.com/world/2023/06/07/flood-ukraine-war-kherson-dam/
<誰も驚かんわ。↓>
Ukraine flood victims say occupying Russians aren’t sending help・・・
https://www.washingtonpost.com/world/2023/06/07/ukraine-flood-dam-victims-kakhovka/
<ご同慶の至り。↓>
「ウクライナ軍、バフムト近郊で「攻勢に転じ最大1100m前進」・・・」
https://www.msn.com/ja-jp/news/world/%E3%82%A6%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%8A%E8%BB%8D-%E3%83%90%E3%83%95%E3%83%A0%E3%83%88%E8%BF%91%E9%83%8A%E3%81%A7-%E6%94%BB%E5%8B%A2%E3%81%AB%E8%BB%A2%E3%81%98%E6%9C%80%E5%A4%A71100%EF%BD%8D%E5%89%8D%E9%80%B2-%E6%98%A0%E5%83%8F%E5%85%AC%E9%96%8B-%E5%AD%97%E5%B9%95-7%E6%97%A5/vi-AA1cgAjv?ocid=hpmsn&cvid=6aab930c35fc4e779ed9458d4417fce8&ei=20
それでは、その他の国内記事の紹介です。↓
低コスト路線貫徹ってことね。↓
「「サイゼリヤ離れ」はなぜ起こった?・・・
まず、キャッシュレス対応の遅れを指摘する声があがった。・・・
サイゼリヤは、基本的に「全席禁煙」で「電源・Wi-Fiなし」。それも、一部ビジネスパーソンには、足が遠のく要因になっているという。・・・」
https://www.moneypost.jp/519352?dicbo=v2-HB87FBQ&utm_source=outbrain.com&utm_medium=referral&utm_campaign=nps_AR_27
取材努力に敬意。↓
Japan rethinks tattoo ban in defence forces to lift recruitment・・・
https://www.bbc.com/news/world-asia-65830197
戦後日本において、男性を搾取する体制を構築し、それが安定するまでは、女性は往々にして相手を謀る偽りの姿を見せるってだけのことよ。↓
「女性が結婚相手に高収入男性を望む当たり前の理由 結婚当初は「夫婦共働き」のつもりでも「夫の一馬力」になる現実・・・」
https://news.yahoo.co.jp/articles/29f0e9d396ff44ca52188a182e64e5b4ca0a6855
3対4だったんだー。↓
「・・・外様大名のうち最大なのは加賀・前田氏(102万5千石)、薩摩・島津氏(72万石)、米沢・伊達氏(62万石)だが、徳川宗家はこれらを遙かに上回る700万石という所領を持っていた。この700万石を二分し、約300万石は旗本に知行地として与え、残る400万石を幕府直轄地として、勘定奉行のもとに支配した。いわゆる「天領・御料」と呼ばれるのが直轄地である。天領には代官がいたが、一般には大名領よりも天領の方が年貢は安かったという。・・・」
https://news.yahoo.co.jp/articles/070032ef59ee9c479e2500db4843356771a79ea5
おや、ドラマにそれなりの根拠があったのね。↓
「・・・1575(天正3)年5月初旬、徳川家康は家臣の石川数正と長篠城(愛知県新城市)を守らせていた奥平信昌の父・奥平定能(さだよし)を岐阜城に派遣している。織田信長に長篠城への出陣を要請するためだ。ところが信長は、家康から再三にわたって援軍の要請をされていたにもかかわらず、本願寺勢力との戦いなどを理由に断り続けていた。業を煮やした家康は、信長にこう言い放ったという。「此度御出陣これ無くば彼の申合の起請は其方より御破りなされ候次第なり斯くなる上は止むを得ず勝頼に遠州を遣し我等は三河一國にて罷在勝頼と連合して尾州に打つて出づべし遠州の替地に我等勝頼の先鋒となりて働き候はゞ恐らく尾州は一日の中に申受くべし」(『長篠実戦記』) つまり、加勢がなければ武田勝頼と和睦し、武田の先鋒となって信長の所領である尾張(現在の愛知県西部)を攻め取るだろう、というのである。信長はこれに驚いて援軍を出すことになったらしい。・・・」
https://news.yahoo.co.jp/articles/66a3cc54f2a467b60ac28b2d402115c4f78bb491
これ、ハードの戦争インフラの話だが、ソフトの戦争インフラも重要なんだぜ。↓
「・・・信長が信濃で武田軍と対峙する河尻秀隆に宛てた天正十(1582)年二月二十八日付の手紙が残されている。信忠家臣団の筆頭であり、信忠率いる十万ともいわれる大軍の軍監的地位にあった秀隆に信長が厳命したのは、道の普請(ふしん)であり繫城(つなぎじろ)の構築だった。 繫城は城と城をつなぐ支城のことだ。信長が自ら率いる本軍が到着するまでに、準備万端整えて勝利を盤石なものとせよということなのだが、戦を有利に進めるための準備という範疇(はんちゅう)を明らかに超えている。・・・」
https://news.yahoo.co.jp/articles/e64599d20d32936821838bc59bf24f6918285ed2
日本は、本来的福祉国家なのだ。↓
「・・・叡尊が新しい形で西大寺を、彼が考える、律宗という教団の拠点として再興しています。弟子の忍性という人と2人・・・、この2人は特に病人や貧しい人、そういう人たちを積極的に救済するという活動に文字通り身命を賭して、生涯を捧げた人、そういうふうに言っていいと思います。 実は貧しい人や、病人などは、文殊菩薩の化身であるという考え方が古くから日本の仏教の中では信じられていました。そのために、彼らはそうした人たちを文殊とみなして、積極的に救済するという活動に励んだのです。・・・」
https://news.yahoo.co.jp/articles/aacbfa454f50435300c55a284f35f02f4cfeaa5c
ここで紫式部の念頭にあったのは、『竹取物語』だろうな。
慈円のは、日本は女性優位の国、ということだよ。↓
「・・・『源氏物語』に「日本紀などはただかたそばぞかし これらにこそ道々しく詳しきことはあらめ」という有名な一節があります。 「物語に比べれば、正史などはただ一面的な記録にすぎない。物語にこそ道理にかなった詳しいことが書いてある」という意味です<。>・・・
鎌倉時代初期の天台座主・僧正慈円の著した『愚管抄』には、「女人入眼(にょにんじゅがん)の日本国(女性が最後の総仕上げをするのが日本という国である)という言い伝えはいよいよ真実」と記されています。・・・」
https://news.yahoo.co.jp/articles/0ca82d6073afdc8062b85d4fc384c6b75c1a26e3
https://fujinkoron.jp/articles/-/8626?utm_source=headlines.yahoo.co.jp&utm_medium=referral&utm_campaign=relatedLink
日・文カルト問題。↓
<TSYさんじゃないけれど、この「普遍的価値観」が人間主義だってことになる日が来るといいねえ。↓>
「「日本は普遍的価値観を共有する重要な隣国」…尹政権、安保戦略の基本方針を公表–「国家安保戦略」で日本・中国の順に記載–文在寅政権と差別化・・・」
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2023/06/08/2023060880012.html
<なもん、前から想像できたこっちゃ。↓>
「中国の原発から排出されるトリチウム、福島の50倍だった・・・」
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2023/06/08/2023060880003.html
<今頃なんだよ、中央日報。↓>
「韓国大学教授「福島汚染水、放流濃度に薄めて飲める」・・・」
https://japanese.joins.com/JArticle/305259
<日本で報道されてないんだけど・・。↓>
「・・・日本福島沖で獲れたクロソイから基準値の180倍に達するセシウムが検出された・・・」
https://japanese.joins.com/JArticle/305263
<報道価値なし。↓>
「【写真】日本産水産物の検査のために検体を採取している様子・・・」
https://japanese.joins.com/JArticle/305272
<見出しで日本を引き合いに出すな。↓>
「世界で最も物価の高い都市、東京を抑えソウルが9位に・・・韓国・YTN・・・」
https://www.recordchina.co.jp/b915319-s39-c20-d0191.html
<まだ終わんないの?↓>
「徴用訴訟の生存原告1人 日本企業資産の現金化手続き取り下げ=韓国・・・」
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20230607004500882?section=japan-relationship/index
<誰も「神経尖らせ」てなんかないぞー。↓>
「人民日報1面トップが「習近平沖縄発言」・・・
「私が福州勤務時期、福州に琉球館や琉球墓があり、沖縄との交流の来源が非常に深いことを知った。当時、福建の36の姓を持つ人々が沖縄に入ったこともある」
中国の習近平国家主席が今月1日、北京から40キロ余り北にある燕山の麓に新設された古跡保管所「中国国家版本館中央総館」を視察したときに述べた言葉だ。琉球は沖縄のかつての地名だ。習主席が言及した「琉球館」は明代1472年に建てられて1875年に琉球王国が中国に朝貢を中断するまで使節と商人のために運営した建物で、正式名称は「進貢廠柔遠駅」という。・・・
神経尖らせる日本「何の話だ」・・・」
https://japanese.joins.com/JArticle/305261
<日清戦争前夜みたいな見出しだな。↓>
「韓国与党代表、きょう駐韓日本大使と面会…野党代表は駐韓中国大使と晩餐会・・・」
https://japanese.joins.com/JArticle/305266
<ご愛顧を期待。↓>
「宮崎の引退作、予告・広告なしで来月公開・・・」
https://www.donga.com/jp/home/article/all/20230607/4206625/1
中共官民の日本礼賛(日本文明総体継受)記事群だ。↓
<ご愛顧を期待。↓>
「映画「紅の豚」が中国で上映の可能性・・・「一番好きな作品」・・・中国版ツイッター・微博(ウェイボー)・・・」
https://www.recordchina.co.jp/b915317-s25-c30-d0052.html
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太田述正コラム#13532(2023.6.8)
<太田茂『新考・近衛文麿論』を読む(その47)>
→非公開