太田述正コラム#2568(2008.5.25)
<過去・現在・未来(続x9)>
1 公務員制度改革
 (1)税金泥棒的行為への退所
 「自民、公明両党は二十四日、会計検査院の機能を強化するため、関連法の改正案を今国会に提出する方針を固めた。・・・ 改正の対象は会計検査院法や会計法、「予算執行職員等の責任に関する法律」など。改正案は、「カラ出張」など公務員による不正経理に懲役、罰金刑を含む罰則規定を新設する。検査院が不正経理を見つけた場合は、不正を行った職員の懲戒処分を所属官庁に要求することを義務付ける。・・・」(
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2008052502000109.html
。5月25日アクセス)
 それをやるなら、役所が人事の一環として職員を再就職させること、すなわち天下りの斡旋を行うことを、「懲役、罰金刑を含む罰則規定を新設する」ことによって厳禁すべきでしょう。
 同じ税金泥棒的行為であっても、金額の桁が違うのですから・・。
 (2)防衛省中央組織改編
 「防衛省の組織改革に絡み首相官邸の防衛省改革会議メンバーの五百旗頭真防衛大学校長がまとめた試案が・・・明らかに なった。作戦・運用は統合幕僚監部、教育訓練など隊務は陸海空幕僚監部に残し、制服(自衛官)の内局への大幅な組み入れにより、主要部局の混成化を進める のが柱。・・・背広(文官)、制服混合となる内局では防衛政策局や予算、整備、調達、渉外広報を担う局はいずれも背広組が局長に就任。部隊運用は制服組の統合幕僚長が行 い、内局・運用企画局の人材を副長クラスで統幕に送り込む。部隊の教育訓練は3幕が担い、制服組人事も統幕・各幕が原案を作成し、幹部人事のみ内局が防衛 相を補佐する。・・・ほか、陸上総隊設置を打ち出した。」(
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080524/plc0805240239004-n1.htm
。5月24日アクセス)
 これは、私が拙著『防衛庁再生宣言』64~67頁で提言した私案と全く同じだと言ってもいいでしょう。
 石破防衛大臣が督励して防衛省がつくりあげた、「組織改編の柱として、内局と各幕僚監部の機能を〈1〉防衛政策を決め、国民に説明する「政策企画立案・発信」〈2〉自衛隊の部隊運用を担う「運用」〈3〉防衛装備品の調達などを一元的に行う「整備」――の3機能に集約し、すべて背広・制服組の混合とする改革案」( 
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20080521-OYT1T00102.htm?from=main3
。5月21日アクセス)なる、世界に例を見ない珍案をすみやかに廃棄し、五百旗頭案で議論がまとまることを期待したいと思います。
 とはいえ、中央組織の改編ごときでごまかされてはいけません。
 「出直しに必要なのは、守屋前次官逮捕で一端の見えた政官業癒着構図との決別だったはずだ。その本質部分はどうしたのだろうか。・・・それにしても、どこかで見た光景である。防衛省は問題が発生するたびに組織改編で対処してきた。同じ轍を踏むことになりはしないか。けじめをあいまいにして組織をいじる印象が先に立っては共感は得られない。かえって不信を強めることになりかねない。」(
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2008052302000113.html 
。5月23日アクセス)
 いいぞいいぞ。東京新聞電子版頑張れ。
2 四川省大地震がつきつけるもの
 何で学校ばかりが倒壊したのか?
 百聞は一見にしかず。
 ニューヨークタイムスに掲載された写真をご覧じよ(
http://www.nytimes.com/2008/05/25/world/asia/25schools.html?hp  
。5月25日アクセス)。
 都江堰(Dujiangyan)市のXinjian小学校が瓦礫と化しているのに、左手の幼稚園と、後方のホテルはほとんど被害を受けていないことがお分かりか。
 全然、中共中央が決めた耐震基準が、地方政府のさじ加減で無視されていることは明かではないでしょうか。
 温家宝首相が、大地震発生以来、とんぼ返り的に一度北京に戻りはしたものの、ほぼ一貫して被災地にとどまって陣頭指揮に当たっている(典拠省略)のは、広報効果を狙ったものであることはもちろんですが、それ以上に、中共中央が地方政府を信用していないからなのでしょう。
3 エイズについて
 エイズについて、大昔に(コラム#25で)とりあげたことがあります。
 どうやら、先進国でもエイズが同性愛者以外の間で蔓延するのではないかという懸念は杞憂に終わったようです。
 また、エイズは貧困や男女差別が原因であるという俗説の誤りもはっきりしてきたようです。
 すなわち、バングラデシュはどちらも甚だしいけどエイズ罹患率は低く、南アフリカとボツワナはアフリカ随一の女性識字率と一人当たり所得の高さを誇っていると同時にエイズ罹患率もダントツだし、ギニア、ソマリア、マリ、シエラレオネの女性の教育程度は低くしかも貧しいけれどエイズ罹患率は比較的低い、というのです。
 (以上、
http://books.guardian.co.uk/review/story/0,,2281899,00.html  
(5月24日アクセス)による。)
4 おまけ
 日本の特攻隊に触発されて、ナチスドイツが、第二次世界大戦で敗北する約1カ月前に、エルベ特別攻撃隊を編成し、戦闘機による連合軍爆撃機への体当たり攻撃を敢行したという記事(
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2008052502000108.html  
。5月25日アクセス)は興味深いですね。
 これも東京新聞電子版です。
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太田述正コラム#2569(2008.5.25)
<中共体制崩壊の始まり?(続)(その1)>
→非公開