太田述正コラム#2570(2008.5.26)
<皆さんとディスカッション(続x145)>
<コバ>
 –財政再建のためにはどうすべきか?–
株式日記と経済展望というブログの記事(
http://blog.goo.ne.jp/2005tora/e/c9131ee97d768f0bdb4acd34e3c974be
)で、財政再建のためには景気を良くして税収を増やすか、さもなければ公務員の賃金をカットして財政再建をすべきだと論じられています。
 大阪で大ナタを振るっているかのように見える橋下知事のような賃金カット政策は果たして財政再建につながるのでしょうか。橋下知事はあのコイズミに似た臭いがするので、ワーキングプアの自分としては非常に警戒すべきだと思っているのですが…。
 過去に財政が健全化した時に倣った政策を打ち出すとか、国際競争が激しくなっている現在では答えが見つかりづらくなっているのでしょうか?
<太田>
 
 「・・・大阪府は、バブル崩壊後の税収減や人件費の増加などで財政が悪化し、5兆円の府債を抱える。昨秋まとまった2006年度決算は都道府県で唯一の赤字だった。府は、将来の府債返済にあてる減債基金からの借り入れと、府債の借り換え増発という非常手段を講じてきた。橋下知事は、これをやめ、「収入の範囲内で予算を組む」方針を掲げた。・・・大阪府が財政改革を急ぐ背景には、<2007年6月15日に成立した>自治体財政健全化法がある。北海道夕張市のような財政破たんを防ぐために生まれた法律だ。同法は、現行の再建団体と同様の再生団体のほか、その手前の段階の早期健全化団体を指定する。早めに手を打たせる仕組みだ。適用は今年度決算からだが、これに先立ち、今秋まとまる昨年度決算で、各自治体が指標を公表する。大阪府は健全化団体の回避を念頭に削減額をはじいている。・・・」(
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080524-OYT1T00714.htm
。5月25日アクセス)
 要するに、橋下氏は、「お上」の走狗となって、財政再建にしゃかりきになっているということのようですね。
 では、大阪府は特にひどいとはいえ、どうして地方公共団体の財政が軒並み悪化しているのでしょうか。
 
 「大阪府の橋下徹知事は23日、府の財政課長や教育長を務めた竹内脩・枚方市長と会談し、財政悪化の“戦犯”をめぐり激しい応酬を繰り広げた。・・・橋下知事が「前の世代が負担しなかったツケが今来ている。責任があるのは(これまでの)知事や幹部」と迫ると、竹内市長は「今の府の財政をこんなふうに陥らせたのは誰か。日本の地方自治制度は国が決めている」と国の責任を指摘した。 竹内市長が財政課長だった95~97年は国の景気対策で公共事業を増やし、府の借金が急増していた時期に重なる。橋下知事が「市長は財政課にいて、それに府民は怒っている」と言うと、「財政健全化に向けてやるべきことはやった。何ら恥じるところはない」と竹内市長も反論した。・・・」(
http://www.asahi.com/special/08002/OSK200805230076.html
。5月26日アクセス)
 この議論、文句なしに竹内市長の勝ちですね。
 2000年2月~2008年8月は、官僚出身の太田房江(本名齊藤房江)「天下り」知事の時代であり、彼女が「お上」の走狗となって放漫財政を続けたことが、大阪府の甚だしい財政悪化の原因です。
 では更に遡って、どうして公共事業を中心に財政を膨張させよという「指示」が「お上」から下されることになったのでしょうか。
 「お上」がバブルをつくり、その挙げ句、バブルを一挙にはじけさせたために日本が長期不況に突入したからでしょう。
 こういうわけで、私には、橋下氏が哀れなピエロにしか見えませんね。
 なお、大阪府の場合、府職員の賃金をカットするったって、総数91,072人中、教職員と警察職員だけで9割弱ですよ。教員は(隣接諸府県を含む)塾の教職員や私学の教職員と競争関係にありますし、警察職員は、実質的に国家公務員であることを考えると、賃金カットするなとは言わないけれど、ラスパイレス指数で全都道府県中最低にするなんてのは、ひどい副作用を起こす可能性がありますよ。
 (以上、事実関係は
http://www.asahi.com/special/08002/OSK200805220098.html
(5月26日アクセス)による。)
 それに、そんなことを言い出している橋下氏が、「6月16日、初めての政治資金パーティーを大阪市内で開催する。立食形式で最大2千人を収容できる会場を予定しており、会費は1万円という。・・・知事は4月の記者会見で、政治活動で着る礼服の購入代や活動費がかさむことを挙げ、「今は個人収入でまかなっているが、限界が出てくる」と説明。公務外で出演するテレビ番組の出演料や講演料を政治資金に充てる考えを示していた。」
http://www.asahi.com/politics/update/0525/OSK200805250059.html
。5月26日アクセス)というのはいただけませんね。
 府知事選の時の借金返済のため、というなら分からないでもないけれど、橋下氏のように日々無償ないし有償でTVに露出して「政治活動」を行っている知事が、次の選挙のための「政治資金」(事前運動経費)を別途集める必要がどうしてあるのか、私には全く理解できません。
 百歩譲って「政治資金」が必要だとしても、「公務外で出演するテレビ番組の出演料や講演料」だけで、どうして「政治活動で着る礼服の購入代や活動費」等がまかなえないのか、十分な説明が求められます。
 それすらできないのなら、財政再建なんてできっこありませんよ。
 でも、橋下知事、大阪府民にはバカ受けしてるようで、困っちゃうんだなあ。
 さて、このところ「お上」をけなしてばかりなので、たまには朝鮮日報の口を借りて誉めておきましょう。
 「・・・「食」は文化の先兵だ。マクドナルドに象徴される米国の食文化が低価格で実用的というイメージを持つなら、日本の食文化はブランド価値のピラミッド構造で上層部を占めるというイメージがしっかりと定着している。
 ・・・日本は経済力の代わりにマンガ・アニメーション・ゲーム・ファッションなどに代表される大衆文化のパワーで世界を魅了している。清潔で、安全で、環境に優しいというイメージにより、ほかのどの国よりも強力な国家ブランドを確立した。世界はそんな日本を「エコノミック・アニマル」ではなく「クール・ジャパン(魅力的な日本)」と呼び始めた。また、「クール・ジャパン」は日本における21世紀の国家戦略でもある。
 ・・・文化のカテゴリーとしか見なされていなかった「品格」を、産業の現場に引き込もうと・・・2005年7月、経済産業省は「新日本様式の確立に向けて」という、少し難解なタイトルの報告書をまとめ・・・口火を切った・・・<そして、>日本政府・財界・学界は国の魅力とブランドの知名度を高め、これを生かして新たな豊かさを生み出すため・・・経済・技術に文化を融合させ、競争力を高めようと「魅力戦略」を展開している。・・・2006年1月、パナソニックやトヨタ自動車など、あらゆる業種・分野にわたる76の代表企業・団体、38人のデザイナー・学者・専門家らが立ち上がり、「新日本様式協議会」を結成した。
 ・・・パナソニック<の>植松豊行・首席審議役(デザイン担当)<は、>新日本様式<=ネオ・ジャポニズム>とは・・・「日本の伝統的な美意識を先端技術で具現しようというものです。例えば、ヤマハのデジタル・バイオリンはデジタル技術の具現化ですが、ハンドメイドのアナログ的な印象を与えます。TOTOの便器は日本独特の清潔に対する意識を取り入れているし、トヨタのクラウンは日本刀のラインを生かしています。・・・新日本様式を世界で通用させられなければ、日本人1億2000万人を食べさせていけません。ハイテク製品は、技術さえあれば、日本で作っても中国で作ってもまったく同じ。原価が安い場所で生産すればいいのであって、日本国内に工場を作らなければならない理由はありません」<と語る。>
 ・・・日本の大衆文化はなぜ強いのだろうか。取材の間ずっと抱いていた根本的な疑問は、京都精華大学の牧野圭一マンガ学部長に会ったとき、解けた。牧野学部長の説明は簡単で明確だった。日本は唯一神社会でないため、自由な発想が可能で、マンガ・キャラクター・ゲームといった大衆文化が豊かになったというのだ。「日本はあらゆる事物に神がいるという“やおよろずの神”の国です。石にも、木にも、川にも、水にも神がいると信じています。森羅万象に人格と生命を吹き込み、自由自在に擬人化します。あんパンから“アンパンマン”というキャラクターを生み出すのが日本です。だから、あらゆるキャラクターが生まれ、(大衆文化の)ストーリーが豊かになるのです」」(
http://www.chosunonline.com/article/20080525000021
以下(5月26日アクセス)
 いつものこととはいえ、朝鮮日報、冴えてるねえ。
<スワン>
 中共体制崩壊の始まり?の続編(コラム#2569(未公開))を読みました。
 学校の校舎を手抜き工事するなんて、中共は人の命を何とも思っていないことの象徴のようですね。
 以前、聖火リレーはチベット自治区も通るとお書きになっていた記憶がありますが、その報道はありますか?
 続きをお待ちしています。
<kara>
≫まぐまぐから最近コラムが届かないという無料読者の方がいらっしゃいます。≪(コラム#2566)
 私の環境では最近一度だけ迷惑メールフィルターに引っかかっていました。
 他の方もおそらく迷惑メールとしてはじかれているのでは・・・
<太田>
 5月15日までのコラムしか届いていないと言ってこられた方が2名いらっしゃいましたが、まぐまぐへの私からの問い合わせに対し、次のような返事が来ました。
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 お調べいたしましたが、弊社システムで障害は発生しておりませんので、配信自体は正しく行われていると考えられます。
 メールマガジンが届かない原因につきましては、
・お使いのメールソフトの振り分け設定や、パソコンにインストールしているセキュリティソフトの設定により、まぐまぐからのメールが受信箱以外のフォルダに振り分けられている
・ご利用のメールサーバの容量が一杯になっている
・ご利用のアドレスを管理しているメールサーバ上で、何らかの理由から、まぐまぐのメールの優先度が低く設定されている、または一時的に受信拒否状態になっている
といったことが考えられます。
 お使いのメールソフトやセキュリティソフトの設定をご確認いただくと共に、一度、メールサーバの管理者の方へお問い合わせいただき、お確かめいただけますようご案内していただけますでしょうか。
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 お二方の「障害」が解消されるよう願っております。
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太田述正コラム#2571(2008.5.26)
<中共体制崩壊の始まり?(続)(その2)>
→非公開