太田述正コラム#2598(2008.6.9)
<皆さんとディスカッション(続x159)>
<コバ>
秋葉原の通り魔事件についてBBCが記事にしています(
http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/7442545.stm
)。記事の中で、日本における失敗や異質なものへの不寛容、みなと同じように行動しなければオストラサイズされることなどについて触れられ、またオウム事件が思い出されるともありました。太田さんが以前コラムでサリン事件のような事件がまた起こったら、日本社会は持ちこたえることができるのだろうか?といったことを書かれていたと思いますが、最近の有毒ガスでの自殺の頻発や突発的な凶悪事件を見ているとすでに大規模なテロは起こってはいないけれども(むしろ犯罪自体は減少してましたっけ?)、すでに日本は何が起こっても不思議でない、不気味で暗く、言いようのない恐ろしい社会になったのでないかと思います。日本のトップも、どんな事件が起ころうが無関心で他人ごとのように振る舞っているし、そうなるのも当然でしょうが…。
<太田>
 これは、英米のメディアの力量の差がはっきり現れた事件でした。
 米国については、CNN電子版はAP電を転載する1本の記事だけでしたし、ニューヨークタイムス、ワシントンポスト、ロサンゼルスタイムスは、それぞれ1本の事実報道だけでした。その中でもニューヨークタイムスの悪名高いオーミツ記者による記事は、特に手抜きが目立ちました。
 他方、英国については、FTは経済紙ですからロイター電の転載にとどめたのはやむをえないとして、ガーディアンとBBC記事は、それぞれ電子版で本件について3本と4本の記事を掲載したばかりでなく、背景報道にまで踏み込んだ点で特筆されます。
 ガーディアンの、背景を現在の日本の格差化社会と情報化社会(バーチャル化)にあるとし、格差化社会で落ちこぼれた青年達へのケアが乏しいことが、一方で自殺者を生み出し、一方で無差別殺人を生み出している、との分析(
http://www.guardian.co.uk/world/2008/jun/09/japan.internationalcrime
は、なかなかのものです。
 (その他の典拠:
http://www.guardian.co.uk/world/2008/jun/09/japan.internationalcrime1
http://www.guardian.co.uk/world/2008/jun/09/japan.internationalcrime2
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/06/08/AR2008060800576_pf.html
BBC上掲、
http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/7442327.stm
http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/7442370.stm
(↑は写真集)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/in_pictures/7442378.stm
http://www.nytimes.com/2008/06/09/world/asia/09japan.html?ref=world&pagewanted=print
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-stab9-2008jun09,0,2656214,print.story
http://www.ft.com/cms/s/6525bd96-3576-11dd-998d-0000779fd2ac,Authorised=false.html?_i_location=http%3A%2F%2Fwww.ft.com%2Fcms%2Fs%2F0%2F6525bd96-3576-11dd-998d-0000779fd2ac.html&_i_referer=http%3A%2F%2Fwww.ft.com%2Fhome%2Fasia
(いずれも6月9日アクセス))
<太田>
 海外からの太田述正ブログへのアクセス状況(コラム#2594)ですが、5月7日~6月6日の合計で、
セッション:30,955
Japan:29,835、United States:439、France:101、China:92、Canada:73、United Kingdom:50、Australia46、Malaysia:45、Taiwan:40、Sweden:26 ・・・
となっています。
 昔はこんなに日本一辺倒じゃなかったのですが、「たかじん・・」以来、日本在住の読者だけが大きく増えた、ということでしょう。
 
<コバ>
典拠にこだわらない日本人は、新しい発想をし続けており、また、典拠という官僚の保身技法(役人の悪しき前例主義と無関係でない)から脱却している…。そりゃ太田さんからすれば日本人がみなエイリアンに見えることでしょうね(典拠省略)。
<SF>
>典拠にこだわらない日本人は、新しい発想をし続けており、
 おそらく皮肉で書かれているのだと思いますが、過去の議論や視点を踏まえないがために、議論が成立せず、何度も同じ間違いを繰り返して恥じないのだと思いますね。
 歴史に学ばないところにもその傾向が現れているのかもしれません。
<遠江人>
 太田さん、こくぴとさん、お役に立てたようで幸いです。
 私は以前から太田コラムのメールがある程度溜まった時点で文章をコピペして、(後でまとめてじっくり読むために)テキストファイルとして保存するようにしているのですが、その#1からずっと溜めてきたテキストファイル(これは有料コラムの特典であるバックナンバーのテキストファイルでも可ですね)を使って検索をしています。
 私はテキストを扱うときは秀丸エディタ(とても使いやすくお勧めです)というテキストエディタを使っているのですが、検索もこの秀丸エディタでやっています。
 今回、典拠の必要性に言及しているコラムを抽出するにあたって「典拠」で検索すると数が多すぎるので、「典拠を」「妄想」「印象論」「感覚論」といったキーワードで検索するようにしました。個人的に太田コラムを読んでいるときも関連するコラムを検索して探すということをしょっちゅうやっているので、そのお陰でコラムの検索能力が自然に高くなった?ように思います。
 検索をする際の参考になれば幸いです。
 ちなみに典拠関連で以下のコラムも参考になると思います。
http://blog.ohtan.net/archives/51119418.html
コラム#2298(2008.1.14)<皆さんとディスカッション(続x36)>
– 細田さんのコメントについて
 典拠を示す必要のない「感想」も、もちろんありますが、私の見ている限り、太田さんはそのような感想に典拠を示せと言うことはありませんし、典拠を示す必要のあることにのみ典拠を求めているだけのように思います。
 ですから細田さんが、
>SFさん、感想を述べたようなコメントに対しても、太田氏が呪文のように『典拠』を求めておられたので、その原因を推測して見ただけですが。。
とおっしゃるのなら、その「感想を述べたようなコメントに対しても、太田氏が呪文のように『典拠』を求めておられた」箇所をぜひ指摘してください。それを典拠の必要のない感想なのか典拠が必要なことなのか、太田コラム読者のみんなで判断しますから。よろしくお願いします。
<かたせ>
>典拠にこだわらない日本人は、新しい発想をし続けており
 何の根拠があっての発言なんだかw
 典拠に拘ると新しい発想が出来ない理由を良ければ教えてよ。
日本が誇る(笑)アニメ・漫画の作家は典拠を大事にしながらも独自の視点・発想で斬新な話を作ってたりするけどこれはどう説明するのさ。
 と、それはどうでもいいんだけど民主を応援してる太田さんに質問。
 民主党を応援しながら、その党首である小沢を否定するこの矛盾をどう説明するの?太田さんが認めてなくても小沢は民主党の顔なんですよ?
 #2066 #2124 #2141 #2146 #2159あたりで小沢をボロ糞に叩いているけど、民主が政権を取ればますます小沢の発言力が増すと思うんですがそれでも民主党を応援するんですか?
 それとも政権取ったらその最功労者となる小沢を用無しとして放逐するんですかね
<太田>
 コラム#2219を公開したばかりですが、民主党には参議院議員の浅尾慶一郎君(スタンフォード・ビジネスの後輩です)タイプではない議員もたくさんいることを付言しておきましょう。
 いずれにせよ、民主党の議員諸公が、自分達が政権奪取するための方便として小沢氏を利用しているように、私も自民党政権(構造的腐敗政権)を打倒するための方便として民主党を利用している次第です。
 ただし私は、小沢、岡田(前々代表)、前原(前代表)各氏のいずれも民主党の代表、ひいては非自民党政権の首相として望ましくないと考えていることはご承知の方も多いと思います。
 ざっくり申し上げれば、小沢氏の珍奇な憲法第9条解釈(典拠省略)、岡田氏の安全保障への無関心(コラム#840)、前原氏の中共軍事的脅威論(コラム#1156、1158)、と形の上では様々ですが、いずれ劣らぬ安全保障音痴でいらっしゃるということが最大の理由です。
 なお、安全保障音痴の政治家(本来最も重視すべき事柄を軽視している政治家)は腐敗しやすいし、既に腐敗している可能性がある、というのが私の経験則です。
 それにしても、6月1日付でファイナンシャルタイムスに載った小沢氏のインタビュー(
http://www.dpj.or.jp/news/dpjnews.cgi?indication=dp&num=13411
。6月8日アクセス)にぜひ目を通されよ。(日本語で読めます。)
 「中国の共産党独裁体制は、市場経済と相容れない。」
→間違い。植民地時代の過去の香港はもちろん、事実上リ・クワンユー一派独裁体制下にある現在のシンガポール(典拠省略)においてさえ、市場経済は高度に機能していたし、機能している。(太田)
 「私は日中関係のために、長年にわたって政治家としても個人としても一生懸命努力していますから、彼らもそのことを分かっている。ですから、私が何をいっても大丈夫です。」
→中共当局は、小沢氏のアホさかげんに呆れて反論しなかっただけ。中共当局はそんな甘ちゃんではない。小沢氏以上に「日中関係のために、長年にわたって政治家としても個人としても一生懸命努力して」きた、豪州のラッド首相は、初外遊で中共を訪れた時に、チベット問題を人権問題として批判した講演を行った(コラム#2489)ところ、中共政府から激しいしっぺ返しをくらっている(
http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2008/06/05/2003413869
。6月5日アクセス)。(太田)。
 「日本人<の>共生の理念・・・自然との共生、これは環境問題。国と国、人と人との共生、これは平和の問題。仏教の考えに基づくものです。」
→これでは、日本人の共生の理念は外国由来だ、ということになってしまう!(太田)
 要するに小沢氏は、選挙のプロかもしれないけれど、中共等諸外国についても日本についても何も分かっていない人物、換言すれば、政治家として求められる最低限の常識すら身につけていない人物だということです。
 (インタビューでの断片的発言について深読みしすぎていると思われるかもしれませんが、民主党の公式サイトに載った以上は、十分に練った小沢党首の公式発言であると受け止めざるを得ませんし、私はこの種「深読み」のエキスパートであると自負しています。)
 私は小沢氏が党首のままで総選挙に勝利し、民主党(を中心とする)政権ができて小沢首相が誕生したとしても、自民党政権が続くよりははるかにマシだと思っていますが、民主党の心ある議員諸公、再度申し上げるけど、来年秋の総選挙までに、何とか彼を代表の座から引きずりおろしましょう! 
 そうしないと、後で必ず臍を噛むことになるよ。
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7月4日、大阪で太田述正オフ会。出席希望の方は↓こちら。
http://www.ohtan.net/meeting/
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太田述正コラム#2599(2008.6.9)
<アルカーイダは弱体化したのか(その1)>
→非公開