太田述正コラム#2610(2008.6.15)
<皆さんとディスカッション(続x165)>
<衆愚筆頭>
 コラム#2537「韓国の親日ぶりチェック(その2)」を読みました。
 紛争の原因って宗教、人種、教育が主ですよね。
 東アジアがEUのようになれる日はくるのでしょうか…。
<太田>
 EUの加盟要件で最も重要なのは自由民主主義国であることです(コラム#2549)。東アジアで、現在のところこの要件を完全にクリアしているのは韓国と台湾だけです。
 EUの東アジア版をつくることよりも、NATOの東アジア版をつくること(或いはNATOの名称を変えて東アジアを包含する機関に造り替えること)が先決でしょう。
<ツシマ>
 コラム#2506「<ロシアの体制(その2)」を読みました。
 中共に関しては中央政府が建設した高速道路で地方政府が勝手に料金徴収したり、四川大地震でも中央政府が取材許可した地域でも地方政府が禁止にしていたりというふうに、中央政府の統治の形骸化が進んでいるのではないでしょうか?。
 中共は19世紀末の清朝化してきつつあるのではと考察しています。日清戦争直前でも清朝は各軍閥により事実上分裂していましたが清国海軍は対外的には十分に強大でした。
 現代の中共も自衛隊機派遣問題にみられるように内部分裂しており、逆にそれを糊塗するために外交問題では強硬な態度にでるのだと思います。
<太田>
 ご意見にわたらない部分に基本的に間違いはなさそうですが、できる限り典拠をつけましょう。
 最後のご意見の部分にも、典拠がついているとよかったですね。
<なべやき>
≫クリント・イーストウッドは、わざわざ米国側から見たのと日本側から見たのと硫黄島2部作映画をつくったことに象徴され ているように、黄色人種差別意識は克服していた(克服しようとしていた)けれど、黒人差別意識は克服していなかった(克服しようとしていなかった)という ことのようですね。≪(コラム#2606。太田)
 スパイク・リー監督は「ひとりも黒人が出てこない」と言ってますが、これは誤解で、「父親たちの星条旗」には黒人兵士が1カットだけ出てきます。それも 隅っこに固まるように出てくるので、当時の黒人の扱われ方が表象されているように思います。また主人公の一人はインディアンの青年であり、その青年が差別される様子も描かれているので、有色人種を排除した印象はまったく感じません。
 イーストウッド自身、黒人が主役の映画を撮ったことがあり、また現在の奥さんはアフリカ系の血が入っている人なので差別意識はほとんどないと思われます。
 それより2006年は外国人が描いた日本兵の映画「硫黄島からの手紙」と、外国人が描いた昭和天皇の映画「太陽」が公開された年であり、時間があったらこの二つの映画を見て、太田さんの批評が読みたいところです。(特に「太陽」 が)
<太田>
 大変な映画通でらっしゃる。
 ただ、何となくライト牧師による米白人の黒人差別意識非難発言をたしなめる米知識人の「良識」の声を連想してしまいました。
 気を悪くしないでくださいね。
<アヒル>
 コラム#2608読みました。
 私は報道されない事実も重要だと思うし、紛争地域に赴くジャーナリストに敬意を持っています。
 人が何を重要と思うかは違って当然だと思いますが。
 あんまりつれない返答だったので、感想を書くモチベーションが下がりました。
<太田>
 サザエさんみたいにそそっかしい人だなあ。
 そんなこと言ってんじゃないんですよ。
 私の申し上げたいのは、一人の人間が情報収集に割ける時間には限りがある以上、一次情報媒体を絞り込んだ方がいいですよということです。
 そして私の場合、それが基本的に英米の主要メディア、就中英国の主要メディアであるということです。
 なぜ英国の主要メディアか、については説明を繰り返しません。
 しかし、これらメディアが拾い上げたトピックのうち、何を私が読むか、そして読んだものをベースに私がいかなるコラムを書くか、は日本人としての私が決めるわけです。
 その時点で、グーグルで検索をかけることがあり、結果的に英米等の主要メディア以外の情報媒体も用いてコラムを書くことがあることは言うまでもありません。
 もちろん、皆さんが、主要メディアで報道されていない事実を報じた情報媒体にたまたま遭遇され、重要だと思い、私にそのことをお伝えいただくことは大歓迎です。
 
<田吾作>
 
 世界日報社が「聖職者の性犯罪が急増のドイツ教会(2008年6月11日)」という記事を載せています。
http://www.worldtimes.co.jp/w/eu/eu2/kr080610.html
 商売敵について意外に詳しいという感じがしました。
<太田>
 そう。
 例えば、こういう情報提供は大歓迎です。
 世界日報は統一教会系の情報媒体ですが、引用された記事は典拠を明らかにしており、少なくともこの記事に関しては信頼性は高いと思われます。
 ここで、私からも情報提供をしておきます。
(1)「南京大虐殺」の犠牲者数が20万人として日本軍による民衆殺戮は394万9,000人と推計される。昨今疑われることの多い日本軍の虐殺や戦争犯罪に関する主張をかなりの部分信用したとしても、その規模は次に述べる中国共産党や中国国民党の民衆殺戮に及ばない可能性が高い。
(2)強制的徴兵の犠牲者数百万人と意図的な洪水決壊による死者数十万人などを含め、中国国民党による中国民衆に対する殺戮の規模の方が日本軍が行ったとされる支那人虐殺より もおそらく大きい。
(3)中国共産党による民衆殺戮は日中戦争と国共内戦を含む戦時よりも、1949年以後の中華人民共和国建国以後の平時の方が遥かに大きく、その規模は日本軍も中国国民党も大きく引き離している。共産党による民衆殺戮は1949年までで346万6,000人、1949年から1987年までで3,523万6,000人、総計3,870万2 ,000人であり、これは中国共産党が6,191万人を虐殺したソ連に次いで20世紀世界第2位の民衆殺戮者であることを意味する。
(4)大躍進運動の時期に発生した1959年から1963年までの中国史上、また世界史上においても最悪の大飢饉に関して毛沢東指導下の中国共産党に責任があるとするなら、中国共産党共産党による民衆殺戮はソ連の6,191万人を超えて20世紀史上最大の民衆殺戮となる。
 (R.J.ラムル ハワイ大学名誉教授『中国の民衆殺戮(China’s Bloody Century)』(パレード /星雲社)
http://item.rakuten.co.jp/book/5597977/
より。「台湾の声」【良書紹介】『中国の民衆殺戮』より孫引き。)
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太田述正コラム#2611(2008.6.15)
<アイルランドがやってのけた椿事>
→非公開