太田述正コラム#13384(2023.3.26)
<2023.3.25東京オフ会次第(続)>(2023.6.21公開)

E:「薩摩藩の大きな特殊性として、武士階級の人口が他藩と比べて、けた違いに多かったことが挙げられる。その割合は、なんと25パーセントにも上り、この数字は全国平均の5~6パーセントを遥かに上回っていた。」(コラム#13361)ということの結果として、薩摩武士は困窮し、ハングリー精神、ひいては弥生性を失わなかったのではないか。
C:武士一般が、江戸時代に、遊び惚けていると見られていたことが窺われるのが、葛飾北斎が百人一首を描いた「百人一首乳母が絵説」(注1)からの業平の歌の浮世絵(注2)だ。

 (注1)「天保6年(1835年)から天保9年(1838年)、・・・百人一首の歌意を乳母が判りやすく絵で説くとの企画のもと製作された、北斎最後の大判錦絵揃物。全100点の予定だったが、版元の西村与兵衛が版行途中で没落したため、「猿丸太夫」など27枚で中断(内1枚は校合摺のみ)。また当初の企画に反して、実際の絵ではかえって解釈し難い図も多く含まれており、当時は不評だったことも中断の理由と考えられる[要出典]。北斎自身はこの企画に強い意欲があったらしく、全100図の版下絵を描いていたと見られる。現在、版行作品と校合摺、版下絵など合計91点確認されており、版下絵は遺存する数の多さや繊細な表現から晩年期における北斎肉筆画の基準作として重要。フリーア美術館や大英博物館などに分蔵。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%91%9B%E9%A3%BE%E5%8C%97%E6%96%8E
 (注2)「在原業平の歌を主題に、江戸時代の人々が、紅葉の名所として知られる竜田川の景観を楽しむ様子が描かれる。北斎は水面のうねりを誇張し、山や橋の曲線と呼応するように表現。和歌では「紅葉が流れる竜田川の景色」に主眼がおかれているが、この絵では人々の表情や動きに焦点が当てられる。」
https://artexhibition.jp/topics/news/20221117-AEJ1099572/

 コピーしてきたので見て欲しいが、太鼓橋を渡る人々が描かれているところ、農民は働いている途中であることが分かる一方、武士は飲んだくれており(上掲)、このような、武士に対する社会風刺が当時許されていたことも分かる。
D:太田さんの藤井片面的プロレス説、唱える人いないなあ。
 あえて唱えていない人もいるんだろうが。
O:それ、説じゃなく事実であることが裏付けられたけどね。
 (コラム#13373で引用した記事
https://www.tokyo-np.co.jp/article/239181
に掲載されているグラフを見て欲しいが、)藤井六冠の棋力が(2020年から)下降に転じているからだ。
 彼、まだ20歳であり、現在、どんどん棋力は上がり続けているはずなのに、そんなことはありえない。
 とすると、彼が片面的プロレスをやってるせいで、見かけ上、棋力が低下してきてしまっている、と解さざるをえまい。
 私の想像だが、彼は、早い時期から、AIと人間の棋力差は広がっていくばかりで、自分を含めたプロ棋士達の「弱さ」が可視化されてしまうため、将棋ファンの感興をどんどん削いでいきかねないことに加えて、自分自身がやがて全プロ将棋棋士中ダントツの強さになることが必至であるとも見ていて、この二つが相俟って、プロ将棋が成り立たなくなることを懸念していたところ、自分が、片面的プロレスをやればよい、プロレス技を磨けばよい、そうすることによって、何がなんでもプロ将棋存続を図り必ず存続させてみせる、と、腹を括れたからこそ、大学進学を止める決断が下せたのではなかろうか。
A:今回の「講演」原稿中、唯一異論があるのは徳富蘇峰の評価だ。
 蘇峰が宗教音痴であった可能性は認めるし、日蓮宗を全く無視していることも問題だと思う。
 しかし、彼は、自分の意に沿わない記述がされているものを含め、常に複数の史料を並べた上で、自分はこの史料に拠ってこう考える、と書く。
 大変フェアだし、だからこそ、これまで大勢の歴史小説家達が蘇峰の『近世日本国民史』を重宝してきたのだ。
 で、その中での朝山日乘(日乗)の取り扱いなのだが、単なるキリスト教排撃者としては描いていない。
 安国寺恵瓊が日乘を高く評価した言も、披露、紹介している(注3)。

 (注3)「信長家臣の一面も持つ日乗は、その意を受けて毛利氏との外交にも努めている。この頃対面した毛利家の使僧安国寺恵瓊は、日乗を「昔の周公旦、太公望のごとくに候」と絶讃し[油断のならない切れ者と言わしめ]ている。」
http://kirrah.net/his_no07.html
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-08-EK-0238395 ([]内)