太田述正コラム#2571(2008.5.26)
<中共体制崩壊の始まり?(続)(その2)>(2008.6.30公開)
3 大震災後の腐敗と犯罪
 (1)総括
 今回の大震災が起こってから、被災地における様々な腐敗や犯罪の話が報じられています。これら報道で日本のメディアが活躍しているのは心強い限りです。
 (2)横流し
 「・・・香港紙や中国紙によると、四川省徳陽市羅江県で21日夜、被災者ら数千人が警官隊と衝突、双方にけが人が出た。救援物資らしい大量の食糧が個人商店に卸され、その店に軍用車両が出入りしたのを目撃した住民が「汚職だ」と抗議したのが発端という。成都市青羊区でも同日夜、住民500人が警察官と激しくもみ合い、12人が拘束された。被災地ではない街の路上に救援物資のテントが現れ、「女性警官が中でマージャンをしていた」と住民が指摘し、騒ぎになった。」(
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2008052502000101.html  
。5月25日アクセス)
 (3)隠蔽
 「・・・「被害が知れわたるとリゾート開発会社に逃げられるから、地元政府が止め ているんだろう」成都市・・・の最北部にある銀廠溝は、美しい滝と渓谷で知られる避暑地。・・・
 地元救援本部によると、銀廠溝を含む竜門山鎮の住民の死者数は422人。だが、銀廠溝への道路の復旧が遅れ、被害の詳細は不明な部分が多い。銀廠溝から西郊中に避難した女性は「私の集落だけで35人死んだ。地元政府の集計は少な過ぎる」と言う。 こうした見方は各地でささやかれている。銀廠溝から約20キロ南の彭州・通済鎮の女性(31)は「銀廠溝では5千人以上が死に、地元政府が口止めしていると聞いた」。ネットの掲示板でも「死者は1万人に上る」「中国中央テレビはなぜ報じないのか」とエスカレートしている。 地元政府関係者は「ネットで書かれているのは知っているが、竜門山鎮の人口は1万人余りだからあり得ない」と否定する。だが、救援に駆けつけた別の県の関係者は「死者は公表数よりもっと多いかも知れない。地元政府は知っているが、報道機関には絶対に話さないだろう」と語る。」(
http://www.asahi.com/international/update/0526/TKY200805250196.html
。5月26日アクセス)
 (4)人身売買
 「2008年5月24日付「江南都市報」によると、四川大地震の被災地で、売買目的で乳児5人を誘拐しようとした女性ら6人が逮捕されていたことが分かった。・・・調べによると、6人は四川省西昌市などの出身で、乳児らを山東省臨沂市まで運び出すように依頼されたという。乳児一人につき運搬料は1500元(2万2500円)。睡眠薬は乳児が泣き出さないように使ったという。保護されたのは、生後10日から生後2か月までの乳児5人。地震後、病院から連れ出されたと見られ、唇が青紫色になっていた子や、臍帯の傷口が腫れて炎症を起こしていた子もいたという。・・・」(
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080525-00000027-rcdc-cn
。5月26日アクセス)
 (5)考察
 今回は中共当局が、結果としてではあれ、取材規制をほとんどかけていないからと言っても、上記のような報道で明るみになった腐敗や犯罪は氷山の一角に過ぎないと思われます。
 そうなると、どうやら漢人の民族性に問題がある、と言って悪ければ漢人の民度は低い、と言わざるをえません。
 メルマガ「台湾の声」に同メルマガ編集長の林建良氏が、連載中の「日本よ、こんな中国とつきあえるか(6)」の中で、以下の「」内のように記しています。
 ちなみに、千島湖事件とは、中国浙江省杭州市淳安県にある、(ダムの建設によって出現した)千島湖の遊覧船において、台湾からの観光客一行24名と遊覧船乗員6名の32名全員が3人の中国人武装強盗に殺害された上に放火された事件です(
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%83%E5%B3%B6%E6%B9%96%E4%BA%8B%E4%BB%B6
。5月26日アクセス)
 「・・・当時、遺族との窓口になっていたのは浙江省の副省長だった劉錫栄である。遺族たちは劉副省長にもう一度、遺体と対面したいと申し入れた。しかし、劉副省長は「そのような要求は自分に対する侮辱だ」と言って怒り出し、遺族たちを罵ったという。遺族たちは、なぜ罵られなければならないのか、さっぱり理解できなかった。中国人にしてみれば、生きている人間ならともかく、なぜ死んだ人間の遺体と何度も対面する必要があるのか。訳の分からんことを言って俺を侮辱するのか、ということなのだ。・・・つまり、中国人と台湾人では遺体に対する扱い方が違い、中国人は人間の体であっても物(部品)としかみなさない。・・・ある台湾人旅行者が千島湖を訪問した折に書いた紀行文がある。その旅行者は、中国人ガイドに「千島湖事件をどう思うか」と聞いた。当然、あのような事件を起こしてすまなかったという答えを期待していた。しかし、中国人ガイドはひと言「ああ、よかったよ」と返してきた。その台湾人観光客は驚いて「なぜですか」と理由を尋ねた。中国人ガイドは「あの事件はたくさん報道されたので、お蔭で千島湖が有名になってよかった。今では年間300万人も来てくれる」と嘯いたそうだ。・・・」
 「地震犠牲者に黙祷を捧げる日本の救援隊」の画像が支那の人々に大きな感動を与えた(
http://j.people.com.cn/2008/05/19/jp20080519_88402.html
http://www.chinanews-jp.com/news/disp.cgi?y=2008&d=0519&f=national_0519_031.shtml&mb=cns
(どちらも5月26日アクセス)のには怪訝な思いがしましたが、要は漢人達は日本人と自分達とのギャップに驚き、自分達を恥じた、ということなのではないでしょうか。
 いずれにせよ、こういったことによって、漢人達の対日感情が好転するとともに、漢人達がその民族性を改善することにつながれば、と言って悪ければその民度を上げることにつながれば、大変結構なことだと思います。
4 今後の展望
 前にも触れたように、大震災後の温家宝首相の現地入りは、中共の人々から高く評価されているものの、胡錦涛主席の現地入りは、冷ややかな受け止め方がなされています。
 では、総括的には、人々は中共中央をどう見ているのでしょうか。
 ある化学技術者は、「私は中共政府の統治能力がこの地震の結果改善されるとは思わない。これらの太った役人達が長ったらしく内容のない演説をしているのを見ると、私は相変わらず希望を持つことができないという気がした。」と語ったというのですが、このような声が中共の人々の平均的意見ではないでしょうか。
 (以上、事実関係については、
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/05/23/AR2008052302774_pf.html
(5月24日アクセス)による。)
 われわれとしては、今次大震災をきっかけに報道規制がほとんどなくなった状況がこのまま当分の間維持されるのか、この間、大震災報道以外の報道でも報道規制が緩和されるのか、また、北京五輪終了後も報道規制の緩和状況が継続するのか、に注目すべきでしょう。
 それによって、漢人の民度がどの程度上がるか、中共中央の地方掌握度がどの程度上がるか、更にまた、中共中央が政治システムの自由民主主義化をどの程度進展させるか、が決まることになりそうです。
(完)