太田述正コラム#2575(2008.5.28)
<中共体制崩壊の始まり?(続々)(その1)>(2008.7.1公開)
1 テント不足
「・・・政府は28日、中国からの要請を受けて四川大地震の被災者を支援するため、航空自衛隊機でテントや毛布、医薬品など の援助物資を輸送する方針を固めた。航空自衛隊のC130輸送機2機を週内に中国に派遣する方向で調整している。空自輸送機の派遣は国際緊急援助隊の枠組みで実施されるが、中国に自衛隊部隊が派遣されるのは初めてとなる。政府関係者によると、北京の日本大使館に27日、中国政府当局者から 「新たにテントなどの援助物資を支援してもらいたい。中国までの輸送手段については自衛隊によるものを含めて検討してほしい」と要請があった。これを受け、政府は28日、国際協力機構(JICA)などが国内に備蓄しているテント、毛布、医薬品を空自輸送機で運搬する方向で外務、防衛両省が最終調整に入った。・・・」(
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080528/plc0805281909018-n1.htm
。5月28日アクセス)
エライこっちゃ。
旧日本軍に対する、口伝えの、そして中共当局から吹き込まれた悪いイメージが、自衛隊機とその乗員たる自衛官の映像に触れることで180度変わる可能性があります。
ホントに体制崩壊の始まりって感じですね。
この背景には、てんで足りないテント事情があります。
500万人もの人々が住む場所をなくしたという自然災害は希です。
2005年のパキスタンでの大震災では73,000人の死者が出て、350万人の人々が住む場所をなくしましたが、被災地域は四川省大震災よりはるかに局限されていました。
また、2004年のアジア大津波の時、インドネシアで住む場所をなくした人は100万人でした。
四川省大震災で、国連では330万のテントが必要であると見積もっていますが、これは、世界全体のテントをかき集めてもそんな数のテントが確保できるかどうか、というオーダーです。
しかも、中共当局は、住む場所をなくした人の数が、最終的に1,100万人に達する可能性があるとしているのです。
(以上、
http://www.nytimes.com/2008/05/26/world/asia/26china.html?pagewanted=print、
http://www.nytimes.com/2008/05/26/world/asia/26quake.html?hp=&pagewanted=print
(5月26日アクセス)による。)
2 一人っ子政策の非人道性
(1)当局にぶつけられる怒り四川省徳陽市綿竹
127名の生徒が死亡した綿竹(Mianzhu)県福信(Fuxin)市の、庶民を対象とする福信第2小学校(コラム#2569)の犠牲者の父兄の大部分は農民か工場労働者であり、家と職を失った上に子供を失った人々です。
ある父兄は、「われわれは、学校の建物が瓦解する原因をつくった殺人者達を政府が厳罰に処することを求める。父兄のみなさん、請願書に署名して真実を究明させましょう。」と叫び、何人かの父兄は地方の役人達は何年も前から学校が安全でないことを知っていて対策をとることを拒んできたと述べ、他の父兄達は救出作業員が現れるまでに2時間もかかった上、午後10時には作業を止め、翌朝9時になるまで作業を再開しなかったと憤懣をぶつけました。
まだ全校生徒900名中生存が確認されたのは13人に過ぎないとし、「このことに責任のある者は頭に弾丸をぶち込まれるべきだ」と吐き捨てる人もいます。
24日には自然に集会が始まり、綿竹県の共産党の副書記(ナンバーツー)の女性がかけつけて、われわれは父兄の声を真剣に受け止めていると語りかけたものの、彼女は20分間にわたって罵声と叫び声を浴びせかけられ続け、失神してしまい、部下に救出されました。
翌25日には綿竹県の共産党書記(ナンバーワン)のJiang Guohua(男性)が現れ、四川省の省都の成都(Chengdu)までデモ行進をするといきまく父兄達に、この問題を必ず解決することを約束するのでそれだけは止めてくれ、とひざまずいて懇願したものの、父兄達は彼を罵り、そのまま行進を続けました。その3時間後、数百人の規模に膨れあがったデモ隊は警官隊と衝突し、各自が胸に抱いていた遺影のガラスが割れて何人かの父兄が怪我をしました。
結局、父兄達は、役所のバスに乗って綿竹県の中心である徳陽(Deyang)市におもむくことで手を打ち、副市長のZhang Jinmingと交渉し、同副市長は翌日から調査に着手することを約束させられました。
また、都江堰(Dujiangyan)市のJuyuan中学校で犠牲となった生徒の父兄達は、市の役人はまだ何も言ってこないとしており、何人かは、学校の先生達から、補償として一人の犠牲者につき4,500ドル相当を言われており、これはこの地域の年平均収入に相当するものの、抗議行動を止めることが条件になっていると語っています。
しかし、彼らは、「われわれは連中のカネなどいらない。われわれはこのような腐敗に終止符を打ちたいのだ」と言っています。多くの父兄は、学校からも政府からも誰もお悔やみを言いに来ていないことに頭に来ています。
中共のメディアは、当局の指示に基づき、犠牲となった生徒達の父兄の話は報道を控え気味ですが、デモ隊の前でJiangがひざまずいている写真は中共国内でインターネット上で流れており、大変な話題になっています。
経済誌の Caijingは、政府は校舎建設手抜き疑惑の解明を急ぐべきだと書き、新華社も速やかな対応が必要だという論説を掲げました。
(以上、
http://www.guardian.co.uk/world/2008/may/27/chinaearthquake.china
(5月27日アクセス)、及び
http://www.nytimes.com/2008/05/28/world/asia/28quake.html?_r=1&hp&oref=slogin
(5月28日アクセス)による。なお、上で触れた写真が後者に載っている。)
(2)一人っ子政策の非人道性
このような、父兄の激しい怒りは、一人っ子政策によって子供が一人しかいない人が多いからこそ、この上もなく激しいものとなっていると言えるでしょう。
(続く)
中共体制崩壊の始まり?(続々)(その1)
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