太田述正コラム#2658(2008.7.10)
<皆さんとディスカッション(続x189)>
<コバ>
 –移民に職場が奪われる?–
自民党の与謝野氏が、中川氏の1000万人移民受け入れ構想を、日本人の職場が奪われてしまうとして批判しました(
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/080709/stt0807092057004-n1.htm
)。英国や米国はそういった問題では、どういった工夫をして、社会を活性化させているのでしょうか?
 典拠がなくて申し訳ないですが、米国では一般米国民よりも真面目に働くヒスパニック系移民に仕事が奪われていると何かの記事で読んだのですが…。
 日本が気に入って住みたいという人には移住してもらってもいいと思うのですが、やはりワーキングプアの自分としては、仕事が奪われたりしないか不安です…orz。
 将来の日本のビジョンを力強く示してくれるリーダーが日本にいないものでしょうか。
 しかし、この移民構想とか民主党の様々なビジョンが自民党にパクられて、どっちもどっちと自民党の戦略に民主党がまんまとしてやられている感があります。
<太田>
 コバさんご自身がコラム#2644で引用された記事
http://diamond.jp/series/worldvoice/10012/
の筆者が指摘しているように、派遣労働者に同じ仕事をさせながら、賃金等の労働条件を差別しているという現状がおかしいのです。
 正規労働者と派遣労働者の労働条件を同じにすれば、日本の企業は労働者を増やすこと、ひいては移民を雇用することに慎重にならざるをえなくなる・・つまりは、コバさんが仕事を奪われるようなことはない・・一方で、移民は、正規であれ派遣であれ、日本人労働者が敬遠しているところの、3Kを中心とする仕事に幅広く従事することになるでしょう。
<無蔵>
 私も移民政策について聞きたいです。
 米国、ドイツ、ブラジルなど、植民地からではなく、自国と無関係な国から多数の移民を受け入れてきたのは、人手不足か、あるいは、いくらでも仕事を作り出せる国だったのではないでしょうか。
 私は太田さんが主張されているように日本の意見を多様化させるために移民受け入れは必要だと思うのですが、現時点では下記のように思い不安です。
(1)現在、介護師が不足しているという理由でインドネシアなどから介護師に来て貰おうと言う話がありますが、日本で介護師になりたい人がいないわけではなく、給料が安すぎてやっていけないのが不足の理由であると聞いています。となると、移民政策も太田さんが仰るような意見の多様化を求めるわけではなく、低賃金労働者の不足を補うためにのみ導入しようとしているのではないかと疑っています。
(2)移民を受け入れた国では移民が移民先の文化・言語を受け入れずゲットーなどを作り、不満があると暴動を起こすなど問題になっていることが多いですが、この無力・無策・人権だけが最強、という国家において、そういう問題に対処できるとは思えません。移民を受け入れるには独立し、まともな国になって、あらゆる事柄に対策を練ることができるようにすることが先ではないかと思います。
 そもそも植民地が移民を受け入れるなんて悪い冗談です。
 こういう考えは間違っているのでしょうか。
<太田>
 (1)については、先程お答えしました。
 (2)については、結論部分については私も同感です。
 移民政策について言えることは、防衛政策についてもあてはまります。
 なお、私は移民政策も防衛政策も、どちらも広義の安全保障政策の一環だと考えているところです。
<田吾作>
 御批評ありがとうございます、下手な文章を批評するのは太田さんにとっては生産的仕事ではないのに、時間をかけていただいて感謝します。御指摘をいただいた点に関しては自分のものにしたいと思います。
 ただ、「分かりにくい」という点ですが、これは現在と将来に属する領域の問題をあつかおうと私が思っている事から来ています。まだ定式化されておらず、誰もどうなるのかは自信を持って断言できない領域です。
 我々の日常の領域でも雨滴の例を挙げましたが、立場により同じ物が異なって見えるので、目の前で起きている出来事すら目撃者全員の証言が一致する必然性はありません。
 社会の複雑な現状を単純化していたのは、過去については歴史家という「権威」であり、現在についてはマスコミや政府という「権威」なのですが、インターネットの登場により個人が不特定多数者に向けて容易に意見を発信出来るようになった現在では、全員の見解は一致しないという現実が表面化して、複雑な現状を単純化していた「権威」の信頼性がより厳しく問われるようになりました。
 その様な複雑化した現状を解明する手段の一つとして「ユクスキュルの環世界(Umwelt)」と「日高敏隆のイリュージョン」を御紹介したのですが、もう少し私自身使い込んでからまた発言します。
(参考資料紹介)
【大紀元日本】四川大地震、中共軍最大の兵器庫を破壊
http://jp.epochtimes.com/jp/2008/07/html/d64414.html
噂話をつなぎ合わせた感じのする記事です。
【辻広 雅文】北朝鮮が最も恐れるのは、経済制裁ではなく金融制裁
http://diamond.jp/series/tsujihiro/10035/
バンコ・デルタ・アジア(BDA)関係の解説があります。「YUKI von MURATA氏の貴重な情報」(Date: 2007/04/14(土) )と比較できます。
<太田>
 今回のご説明はとても分かりやすいですよ。
 この調子でぜひ再挑戦してみてください。
 新しい資料の提供、御礼申し上げます。
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太田述正コラム#2659(2008.7.10)
<ハセガワとベーカーの本(その2)>
→非公開