太田述正コラム#2680(2008.7.21)
<皆さんとディスカッション(続x199)>
<遠江人>
 –太田さん、お疲れ様です–
 安保さんの投稿(コラム#2678)に関してですが、コラム#2317(2008.1.23)「世界帝国とその寛容性・包摂性(その1)」に端を発し、その直後から<皆さんとディスカッション>において太田さんと読者の間で数回に渡って行われた移民問題についての議論も、つい最近あった典拠の必要性についての議論も読んでいないことは間違いがないのでしょうねぇ。
 演繹的で狭い知識に啓蒙されて世界が分かった気になってしまうのは、ウヨサヨに共通することのように個人的には思っていますが(ナショナリズム・ファシズムも共産主義も大陸欧州由来の全体主義と見れば同じことで似ている?)、だいぶ前から掲示板にはナイーブなサヨクの方からの投稿は見られなくなったことからも、サヨクよりウヨクのほうが○○なのでしょうか。
 事前に勉強してきたりちゃんと話せば意外と分かってくれたりするのはサヨクのほうが多いようにも感じます・・・。
<衆愚>
 安保さんの
>朝鮮半島を併合しあれだけ日本の税金を投入してもこの体たらく
にはたしかに…と思わされました。
 でも併合どころか植民地だった台湾や東南アジアは朝鮮半島に比べたら圧倒的に上手くいっているし、対日感情もそこまで悪くない事を考えると、半島の方々が??なだけなのではないでしょうか…。
 個人的には半島の方々は長い間あまりに特殊な環境にいたからだと考えていますが。
 ともあれ、彼らを例外としてみると太田さんの意見は正しいように思えます。
 あまりに馬鹿な意見ならスルーしてください…。
<太田>
 台湾は植民地だったけど、東南アジアは、日本が一時占領はしたものの、植民地であったことはありませんよ。
 そもそも、韓国の人々の対日感情が悪い、というのは思い込みに過ぎません。
<安保>
 –移民導入政策には絶対反対だ。No3–
移民導入政策には絶対反対だ。No2
↑上記投稿に対しての太田述正氏の意見↓
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南北アメリカ大陸に渡った人類ほどではなくても、ユーラシア大陸の果てまでやってきた縄文人、そして支那の江南地方党を「捨て」或いは「逃避」して日本列島にやってきた弥生人のDNAを日本人は受け継いでいることは忘れてはいけません。また、大和朝廷が積極的に帰化人を受け入れたことや、明治維新後、日本が大陸経営に乗り出し、台湾や朝鮮半島の人々を積極的に受け入れたこともご存じですよね。
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 「反論」
 太田さんのような博学は持ち合わせていないですが、貴方の意見には納得も賛同できません。上記のことも事実であるかのような言い方ですが、例え一級資料を元に分析した学者の論であっても、そのようなこともあってもおかしくないはない・・・と参考とするだけです。
 DNAでの分析では、漢族:朝鮮族:アイヌ:南方系:土着の日本民族?その他、あらゆる所から遥か昔に日本という島国で混ざり合い今の日本人に繋がっているというのは否定はしません。
 しかし、当時はまだまだ国家の成立段階であったり、国家という概念も今とは違うと思います。日本国民という意識さえ今とは全然違ったでしょう。大和朝廷と言ってもどこまでが勢力圏であったのかさえ諸説があるわけです。
 想像するに、大和朝廷が己が勢力圏を拡大統治し磐石なるものにするために渡来人や帰化人を沢山受け入れ、当時では進んだ技術・文化を取り入れ富国強兵を計ったのは理に適います。それは今の移民とは全く異なります。そして当時の渡来人や帰化人と大和民族との関係も全く違います。
 当時の漢族:或いは朝鮮族を見る大和民族の気持ちも、国と国との関係も当然のように今とは違います。
 太田さんは今の日本人が当時の大和民族と同じ様に漢人、朝鮮人を受け入れることが出来ると思いますか?
 時の経過と共に、国家のありようも変わり、国民の資質も変わりました。それぞれに文化伝統を育み互いに暮らしやすい国家という単位をやっと形成したのです。その悠久の遥かな歴史の積み重ねを、ゼロベースにして昔も受け入れたから、今も問題ないなどいうのは無責任極まりない暴論です。
 そして明治維新後、世界の強国に肩を並べんと有色人種として孤軍奮闘「大日本帝国」:大東亜共栄圏なる構想のもとに大陸に進出し、台湾・韓国を併合し、日本人として台湾:朝鮮半島の人々を受け入れようとしました。その為に日本は多大な国税を投入し、白人による植民化とは似てもにつかぬ併合政策を実施したわけです。
 その結果が今の日本の体たらくであり、朝鮮半島:中国大陸の反日感情です。台湾もこのままでは中国大陸に飲み込まれる可能性もあります。
 本音の本音で日本人全てに問いたいです。中○人が好きなのか?朝○人が好きなのか?白人が好きなのか?○人が好きなのか?
 これは差別ではなく好き嫌いです。リンゴが好き、スイカは嫌いと同じです。リンゴが好きでスイカは嫌いは差別と言えないのと全く同じです。
 この世で生存を掛けて互いに切磋琢磨する他民族・他人種同士が、本音の本音で互いに好きになることは、私には考えられませんが、もしそれが有り得た時には移民受け入れも成り立つと思います。本音の本音で相手が好きにならなければ絶対ダメです。これこそが全てに優先します。
 「賢者は歴史に学び愚者は体験に学ぶ」というのが一つの真理なら、移民問題は明らかに結果でているのです。
 この上更に愚を積み重ね、子孫に禍根を残すことは許されることではありません。
<VincentVega>
 –移民の是非ではないですが–
>本音の本音で日本人全てに問いたいです。中○人が好きなのか?朝○人が好きなのか?白人が好きなのか?○人が好きなのか?
>これは差別ではなく好き嫌いです。
 pixiv(ピクシブ)という、プロアマ問わずに絵を描く人たちが集うSNSがありますが、ここをみると日本のオタク文化に好意を寄せる外国人のかたはかなりの人数居られます。
 (開設者ブログによると外国からのアクセスは4%弱のようです)
 台湾や韓国のかたもよく見かけます。若い人が多いです。
 日本語の読み書きが苦手で翻訳サイトを使って日本語で
 自己紹介しているというかたも居られます。
 絵と言う共通の趣味を通じて知り合った人たちを嫌う理由が無く、個人的にはそういう人たちは好きです。
<kujo>
 コラム#2642によると、
 太田さんの持論: 軍隊廃止–>政治や行政がひどいことになっている
 これについて、コラム#2678を読んでも分かりませんでした。
 軍隊を保持していた戦前、政治や行政はもっとひどかったと思います。
 ほとんどの国々が軍隊を保持していますが、それらの国々の政治や行政もわが国以上に色々な問題を抱えていると思います。
 普通の軍隊(欧米のような軍隊)を保持すると、政治や行政が今よりましになるのでしょうか?
 年金のずさんな管理が無くなったりするのでしょうか?
 ワーキングプアと呼ばれる悲惨な状態にある人たちが減るのでしょうか?
 遠江人さんかどなたか上記の持論を分かりやすく説明して頂けないでしょうか?
 小泉流ではなく英前首相のブレア氏のようなできるだけ多くの説明が欲しいです。お手数ですが宜しくお願い致します。
<遠江人>
 コラム#30から抜粋。
 「戦後の日本の安全保障政策は、いわゆる吉田ドクトリンの下、安全保障を全面的に米国に依存するというものだ。日本の防衛についても全面的に米軍に依存する。しかし、自助努力を何もしていないように見えると日米安保が持たないので、対米エクスキューズとして、見かけだけの軍隊である自衛隊を整備し、維持する。
 問題の第一は、このような、ハイポリティックスを放棄するに等しい安全保障政策の下では政治が矮小化することだ。政治家が戦略眼を養う機会を与えられず、また本当の意味で修羅場を経験することもないため、国内外情勢の変化に応じ、リーダーシップを発揮して迅速かつ的確に懸案の処理に当たる能力が身につかない。そして、ついには利益誘導と斡旋利得を政治だと錯覚してしまう。政治家の不祥事をあれだけ目にしてもなお小泉総理に圧倒的な支持を寄せて「保守」政権の延命を認めた国民は、吉田学校の優等生であった池田勇人、佐藤栄作両氏のそれぞれの系譜に連なる加藤派の領袖加藤紘一議員(「ハト」派で「経済」優先)と橋本派のプリンス鈴木宗男議員(「タカ」派で「私利私益」追求)が、時を同じくして不祥事で政治生命を失った現在、そろそろ日本の政治の矮小化の根本的な原因に気づいて欲しいものだ。
 問題の第二は、政府の安全保障担当部局にモラルハザードが発生することだ。鈴木宗男議員事案等を通じて浮き彫りにされた外務省の惨状は、このモラルハザードによって外務省が骨の髄まで蝕まれていることを示している。
 防衛庁はどうか。冷戦時代においては、防衛庁においてモラルハザードを回避するメカニズムが働いていたが、冷戦が終わって以来、そのメカニズムの過半が失われ、防衛庁もまたモラルハザードに蝕まれて退廃、堕落しつつある。しかし、外務省とは違って、国民の防衛庁に対する関心のなさと軍事機密のベールに救われ、その退廃、堕落ぶりが外務省並には露見していないというだけのことだ。
 政治が矮小化し、安全保障担当部局が退廃、堕落すれば、その弊害はやがて全行政官庁や地方自治体に及び、そのフィードバックで政治が一層矮小化していくという悪循環が生じる。それがまさに現在の日本を覆う閉塞状況のよってきたるゆえんなのだ。」
http://blog.ohtan.net/archives/50955805.html
 コラム#2213から抜粋。
 「日本は米国の属国であり、外交・安全保障の基本を米国にぶんなげているので、本来の仕事をやらせてもらえない外務・防衛両省から退廃・腐敗が始まり、深刻化し、それが全省庁に波及している状況だということです。
 社会保険庁のことを思い出してください。
 国会議員も(地方議員と異なるところの)本来の仕事に携われないので退廃・腐敗しがちです。
 国家の存立や大勢の人間の生死に関わる仕事に携わっていれば、人間自ずから粛然とするものなのですがね・・。
 その退廃・腐敗の程度は、1955年以降、基本的に常に政権の座にあった自民党の国会議員が最も深刻です。
 そもそも権力は退廃・腐敗するものですが、恒久的権力であれば、絶対的に退廃・腐敗するのは当たり前です。
 このように官僚や政治家が退廃・腐敗しているので、政府に関わりの深い業界・業者も退廃・腐敗するに至っています。
 そして、この政・官・業が三位一体的癒着構造の下にあるのです。
 主要マスコミも記者クラブ制度等により、この癒着構造の一端を担っています。
 癒着構造における最大の問題は、官の業への天下りです。
 自分の能力・知識・経験だけで再就職できる官僚なんて100人に1人いるかどうかです。残りの人は実質的な仕事をせずに膨大なヤミ年金をもらっています。
 その原資は、官庁が、購入する財・サービスの価格を水増ししたり、規制を手加減したりして捻出されています。
 そして、この天下りシステムのいわばみかじめ料を政治資金等の形で政治家がせしめている。
 これが日本が抱える最大の問題です。」
http://blog.ohtan.net/archives/51114410.html
 国の最も重要な政策は何かと言われれば、経済政策と安全保障政策の二つといえると思います。
 お金を稼がないとやっていけませんし、自国の安全の保障がなければいつ危険な目にあうか分かりません。これは個人と同じことですね。お金と安全がなければ生活していけません。
 では、経済政策と安全保障政策のうち、どちらがより重要かというと、まず安全がなければ経済もへったくれもないわけですから、安全保障が第一に考えなければいけないことになりますね。では安全保障政策の中身はどうなっているのでしょうか。以下を参照してください。
 「安全保障とは、ある集団・主体にとっての生存や独立、財産などかけがえのない何らかの価値を、それらを脅かす脅威から何らかの手段によって防衛することを主に指すが、その概念は非常に多様である。(上記の概念を参照)根本的には核兵器や軍隊などの軍事的な脅威に対するものであったが、冷戦後は大量破壊兵器拡散、国連平和維持活動、また発展的には経済、エネルギー資源なども含めるものへと研究領域が拡大し、一部で環境問題や人権を包括する主張もある。現代における主要な安全保障は軍事力理論の要素に基づきながらも、外交や経済、環境などを広範なものを含めるものである。」
安全保障 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%89%E5%85%A8%E4%BF%9D%E9%9A%9C#.E6.A6.82.E8.AA.AC
 ところで、年金制度が存在する第一の理由とは何でしょうか?高齢期の生活の基本的部分を支えるためですね。仕事ができなくなる年になったときでも生活していけるための政策、国民の「安全」を「保障」する政策なわけです。太田さんが仰るところの、「つまり、年金政策を含む社会政策は、本来、安全保障政策の一環なのです。」は、このように考えればよろしいのではないでしょうか。
 経済政策と安全保障政策が国の重要政策となれば、当然、政治家の仕事の基本は、経済政策と安全保障政策ということになります。
 さて、戦後の日本という国は、国家の存立や大勢の人間の生死に関わること=安全保障を、自ら望んで他人(米国)に依存している(=自ら主体性を放棄した)わけです。軍隊を排止して安全保障・外交を丸投げしているのですから、日本の政治家は政治家本来の仕事の大半をやらせてもらえない(自分で望んだことですが・・・)わけですし、安全保障感覚がすっぽり抜け落ちた社会政策は、国民の「安全」を「保障」しないものになってもおかしくないわけです。そんな本来の仕事をやらせてもらえない政治家や役人は腐敗・退廃するし、社会政策の本来の存在意義を日本人の上から下まで分かっていないのですから、政治や行政がひどいことになるのは必然といえるのではないでしょうか。
 ところで、米国は何を好き好んで他国の安全保障など請け負っているのでしょうか?
 kujoさんはどう思われますか?
<太田>
 いつものことながら、遠江人さん、ありがとうございました。
 一点だけ。
 社会政策(社会保障政策+労働政策)を帝政ドイツのビスマルクや、戦前の日本の内務省が推進したのは、路頭に迷う国民が多数出てくれば、治安が乱れたり、そこに過激なイデオロギーや外国勢力が浸透して、帝政ドイツや日本の安全が損なわれかねない、と考えられたからです。
 このことは、現在のドイツや日本においても基本的には変わりありません。
 このような意味において、私は、年金政策を含め、社会政策は本来安全保障政策の一環であると申し上げたのです。
 つまり、「政治が矮小化し、安全保障担当部局が退廃、堕落すれば、その弊害はやがて全行政官庁や地方自治体に及び」社会政策担当官庁も退廃、堕落するだけではなく、社会政策担当官庁は、広義の安全保障政策担当官庁でもあるので、外務省や防衛省にほとんど遅れることなく、内発的に退廃、堕落しても決して不思議ではない、ということです。
<3mm>
 ブログの名称についてですが、
太田述正の平和主議論
 可も無く不可も無いのが一番かと。
<K>
 はじめまして、ネット初!労働党の北日本支部Kと申します。
 いつも先生のブログ拝見させて頂きまして。
 また、7月4日に弊党の関西支部の者が出席させて頂き先生のお考えに心より共感致しております。
 私自身、仙台のものでございまして、先生も仙台の防衛施設局で働かれていたということなので、個人的にも親近感がございます。
 弊党は労働党と申すのですが、労働者に特化した政党だけでなく、日本の安全保障・官僚の腐敗にも広く追及しております。
 弊党のURLは下記にございますので
 先生からのアドバイスや、お考えをお聞かせ願えれば幸甚でございます。
 ぜひ、先生もご健康にご留意頂いて、暑い夏をお元気にお過ごしくださいませ。
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ネット発!労働党北日本支部 K 
URL http://labour.jp
<太田>
 「労働党」のURLは、
http://www.labour.jp/
ですよね。
 間違えないで下さい!
http://www.heiwaboke.net/2ch/unkar02.php/money6.2ch.net/seiji/1206447136
を見て、ようやく少し「労働党」のイメージがつかめました。
 ご健闘を祈ります。
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太田述正コラム#2681(2008.7.21)
<フランスとイスラム教徒移民>
→非公開