太田述正コラム#2688(2008.7.25)
<過去・現在・未来(続x10)>
1 秋山氏逮捕関連記事。
(1)逮捕
「社団法人「日米平和・文化交流協会」(東京)の秋山直紀専務理事(58)が防衛関連メーカーなどから受けたコンサルタント料のうち、約2億3200万円の個人所得を隠し、約7400万円を脱税したとして、東京地検特捜部は24日、所得税法違反(脱税)の疑いで秋山容疑者を逮捕し、関係先を捜索した。・・・
調べでは、秋山容疑者は平成17年までの3年間、米国内の事実上のペーパーカンパニー3社をダミーにして、防衛専門商社「山田洋行」の米国子会社「ヤマダインターナショナルコーポレーション」など数社から計数億円を送金させ、必要経費を除いた所得を適正に申告しなかった疑い。・・・
資金の一部は、高級外車や高級腕時計の購入費などに充てられたとみられる。・・・
山田洋行側からの提供資金には、福岡の旧日本軍毒ガス兵器処理事業の現地対策費や、独立した元専務、宮崎元伸被告(70)=公判中=の新会社に米メーカーとの販売代理店契約を奪われないよう、秋山容疑者に協力を求めた際の見返りも含まれるとされる。」(
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080724/crm0807241959039-n1.htm
。7月24日アクセス)
→あの山田洋行を手玉にとったのですから、秋山氏、相当なもんですね。(太田)
(2)虚像
「<秋山氏は、>自著で父について、「長年、陸上自衛隊で勤務した」と記しているが、若いころは防衛の世界とは縁がなかった。」(A)
「秋山容疑者は東京都港区の私立高輪高校から立正大に進学し、その後、東京・神保町で喫茶店のマスターになった。当時の知人は「店の隅っこで、法の網をかいくぐって稼ぐ手法が解説された本を読みふけっていた」と語る。」(B)
「政界との接点ができたのはそのころで「小説吉田学校」の作者で政治評論家、故戸川猪佐武氏の事務所に出入りしたのをきっかけに、金丸信・元自民党 副総裁(故人)と親しい女性の運転手になり、議員秘書に顔が売れ始めた。米国人実業家とも知り合い、15年ほど前から毎年、国会議員の米軍視察の案内役を任された。このころ前防衛事務次官、守屋武昌被告(63)とも知り合った。」(B)
「有名になったのは90年代半ば以降、巨大利権を生むと言われたミサイル防衛(MD)の導入をいち早く訴えてから。94年には「安全保障議員協議会」を立ち上げ事務局長に就任。瓦力、久間章生、額賀福志郎の各氏ら防衛庁長官経験者、与野党の防衛族議員20人余が名を連ねた。」(A)
「02年、日米平和・文化交流協会の前身「日米文化振興会」の専務理事に就任すると、久間章生元防衛相、額賀福志郎、瓦力両氏ら防衛庁長官経験者だ けでなく、福田康夫首相、前原誠司民主党副代表ら与野党の大物を理事に取り込んだ。<コーエン元米国防長官らも入会した(A)。>この理事リストを手に防衛企業を訪ねるなどし、三菱重工業、石川島播磨重工業、神戸製鋼などの会員企業を獲得した。」(B)
「<今年>5月、晴天の米カリフォルニアの砂漠をワゴン車が疾走していた。秋山容疑者が事務局長を務める「安全保障議員協議会」議員団による米軍視察。秋山 容疑者はレーザー兵器見学のため、久間氏や元防衛庁副長官の今津寛衆院議員(自民)らをエドワーズ空軍基地(カリフォルニア州)に案内した。
なぜ疑惑が持たれる秋山容疑者と渡米するのか」と出発直前に尋ねた記者に、久間氏は「秋山さんを信じている」と言い切り、太いきずなを隠そうともしなかった。」
(以上、
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008072590070054.html(A)
http://mainichi.jp/select/today/news/20080725k0000m040157000c.html(B)
(どちらも7月25日アクセス)による。)
→秋山氏は、政官業の三位一体的な構造的癒着の象徴ってところですね。(太田)
(3)実像
「その実像は、数々の民事訴訟で敗訴し続けてきた「壮大な詐欺師」(富山市内の建設会社社長)との声もある。・・・
一方で、平成4年に横浜市内に建設したマンションの工事代金未払いを理由に、建設会社に訴えられた。2億円余りを支払うことで和解したが、実際には一度も支払わず、この問題で今年2月に破産した。3月にも金沢地裁で、コンクリート防音壁の独占販売をめぐる未払い金など約1億円を、富山市内の建設会社に支払うよう命じられていた。」(
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080724/crm0807242037041-n1.htm
。7月24日アクセス)
→日本の「一流」政治家の眼がどれほど節穴か、慄然としますね。(太田)
(4)捜査
「3月末には主任検事が異動し、秋山容疑者の捜査は一度、立ち消えになったかにみえたが、特捜部はこの資金ルートを追って専従班を作り、水面下で捜 査を継続。「アドバック」(ロサンゼルス)の米国口座から2億円近くが日本支社の口座に送金された事実を突き止め、秋山容疑者がこの資金で高級腕時計など を購入していたことが判明した。
脱税の疑いが、明確に浮かび上がった瞬間だった。
法務・検察の一部では、脱税額が少ないことなどから立件に慎重な声もあった。通常、脱税額は3億円を超えると逮捕される悪質な事案とされるからだ。
「今後の調べで事件が伸びなかったとしても、防衛予算に巣くう利権屋に退場願ったことに意義はある」」(
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080724/crm0807242201045-n1.htm
。7月24日アクセス)
「防衛利権という「深い闇」があれば、封印してはいけない。脱税事件にとどまらず、太平洋をまたぐキーマンが果たした役割を徹底的に洗い出してもらいたい。」(
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2008072502000120.html
。7月25日アクセス)
→残念ですが、ないものねだりと言うべきでしょうな。(太田)
<太田>
読者の声も2件ご披露しておきます。
<MS>
–韓国対外感情世論調査–
『日本語版wikipedia の反日感情の項目』に以下の対外感情に関する調査結果を見つけました。
非常におもしろいと思うので転載させてください。
中央日報調べ(2004年9月24日)
項目 1位 2位 3位
——————————————————-
好きな国 米国(14%) 豪州(14%) スイス(14%)
嫌いな国 日本(41%) 米国(24%) 北朝鮮(11%)
見習うべき国 日本(33%) 米国(14%) 中国(11%)
経済協力すべき国 中国(44%) 米国(29%) 日本(15%)
日本が見習うべき国で、33%でダントツ一位です。
好きな国ランキングでは日本が14%未満であることを考えると、少なくとも五分の一の韓国民が『日本は好きではないけれども見習うべきだ』と理性的に日本を見ているわけですね。
(何を評価しているかはこの表からは分かりませんが、おそらく、日本がアジアでいち早く近代化したこと、戦後の経済復興だと推測しています。)
TVなどで韓国右翼の過激な行動がとりざたされており、韓国人は熱しやすいというイメージがありますが、理性的な韓国民が少なくとも五分の一いるということを肝に銘じるべきだと思います。
また、大多数の日本人は、五分の一の韓国民ほど理性的でしょうか?
<katsu>
コラム#2676では失礼いたしました。
一部分だけですが、<樺島熊本県知事は、>地元にある川辺川ダム問題においては学者時代の人脈を生かした専門家チーム(
http://www.pref.kumamoto.jp/k_river/kaigi.html
)の編成をしたり、高校生や中学生を対象に知事の出前ゼミ(講演会)(
http://www.higo.ed.jp/kyouikuiinkai/kiji/pub/detail.phtml?mst=0&c_id=4&id=30
)をしたりと積極的に行動されているような気がします。
疑問なのですが、一学者が政権与党の推薦を受けて、なぜ県知事になるのでしょうか。 天下り的な側面があるのかもしれませんが、最高学府の教授を辞め、給与カットしてまで知事になることにどんなメリットがあるのか、私にはよくわかりません。
それならば、やはり地元に対する思いから知事を目指されたのではないでしょうか。
つたない文章で申し訳ありません。
<太田>
ご教示ありがとうございます。
それでも今いち、私には樺島氏の心情がよく分かりませんねえ。
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太田述正コラム#2689(2008.7.25)
<捕まったカラジッチ(続)>
→非公開
過去・現在・未来(続x10)
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