太田述正コラム#13589(2023.7.7)
<皆さんとディスカッション(続x5585)>

<TSY>

         –EchevarriaのMilitary Strategyの8章について–

月の第1木曜日は、太田さんの日と、勝手に決めて、メールを書いております。
太田さんへの軍事的な質問で、うまく書けることがなかったので、すいません、人様の本をダシに使わせてもらいます。ただの読みましたコメントになっちゃってますが、太田さんの感想をいただければ、勉強のはげみになります。よろしゅう、おたのもうします。
この本
< https://www.amazon.co.jp/Military-Strategy-Short-Introduction-Introductions/dp/0199340137/ref=sr_1_1?qid=1688632971&refinements=p_27%3AAntulio+J+Echevarria+II&s=english-books&sr=1-1 >
の目次をにらみ、1番、読みたいとこから読むことに。今日、みたのは、第8章で、戦略の成功と失敗は何に起因するのか、という所です。

● 4ポイント
 著者のEchevarriaは、成功には4つポイントがあるといいます。
1 精確で、最新の敵と味方についての情報(critical appraisal)
2 1を使った敵を弱体化させる(敵にかつ)作戦(developing course of action)
3 戦略を立案、実行できる有能な軍事指揮官(military commander)を選ぶ国家元首の選択
4 すぐれた戦争計画(war plans)の作成

 バラバラなので、イメージが結びません。僕はこんなイメージをつくってみました。
 有能な戦略家がいる。彼が敵と味方の精確最新な情報を集め、それにもとづき、作戦をたて、戦略、情報、作戦を反映した戦争計画を作成する。で、これがうまくはまると、戦略は成功するということにします。このイメージにはまらない具体例が、でてくるまでは、しばらく、これで行こうと思います。
 失敗はこの4条件がうまくいかないとき。

● 戦略のイメージ
 著者のEchevarriaは『戦わずして勝つ』が理想だとはしているが、現実はそう甘くないと、思っている。彼は、Beaufreを引用して記述しているように、戦略は『dialectic(相互対論的)』なもの(敵とのぶつかりあいによって、いきつもどりつし、変化していくもの)ととらえている。
● 戦略を破るもの
 戦略を失敗させるものとして、Echevarriaはわざわざ、「敵の抵抗の意志」をあげている。これは印象に残った。ベトナム戦争におけるゲリラをイメージして読んだ。
 「最重要な軍事戦略の失敗原因は、敵が降伏を拒むこと(refused to concede)からおこる」。
 「戦略を成功させるためのカギになる変数は、したがって、敵側の抵抗への意志(それがどれくらい堅固で何に起因するのか)ということになる」。
 敵の意志を、戦場でも、銃後でも挫くというのが、成功へのカギ。僕などは、この面への配慮がまるでできない。米国の対日占領政策は、日本人の米国への反抗の意志を砕く、という意味では、成功したように思える。
● William T. Sherman
 軍事知識をちょっとずつでも充実させるための第一歩。Sherman将軍について、Wikipediaを調べました。Echevarriaは 地形(on terrain)を重視した戦争計画を立てた人として紹介しています。
Atlanta占領後の焦土作戦を、maneuver warfareのよい見本と評価するようです。
September, Sherman gave instructions that all military and government buildings in Atlanta be burned, although many private homes and shops were burned as well.
 Wikipediaでは、地形への配慮は見つかりませんでした。
 Shermanについての歴史書の書評で、こんなのがありました。これであれば、Echevarriaの記述は、支持してもよさそうです。
 Contending with fortified positions resulted in new modes of warfare outside the manual and led to a style of fighting that many soldiers would not have recognized a year before. The skirmish line became a nearly constant presence as the campaign ground on day after day without let up, with mounting casualties, some units later observed they lost more men in this way than in the more noted battles of the campaign. With each fight, the men and commanders of both sides adapted their work. Nevertheless, at the army level, Sherman became the master of this new style of war, using the terrain to his advantage and being sure to not become bogged down in siege warfare.
https://muse.jhu.edu/pub/142/article/797327/summary

● 日本語の問題
 maneuver warfare を英語版Wikipediaでは、敵の組織的団結と「抵抗の意志」を挫く戦略とあります。military strategy which seeks to shatter the enemy’s overall cohesion and will to fight.
 日本語版は、こうです「機動戦(きどうせん Maneuver warfare)は、火力ではなく主に機動により遂行される戦闘の形態である。」
 先ほどの、「敵の抵抗への意志」への配慮に欠けることを自分の欠点として書きましたが、個人的なものでは、ないかもです。
 この日本語の癖が ドイツ兵学の影響からきているとすると、歴史的背景のある、心理戦軽視ということになります。
 ドイツ語のmaneuver warfare (Bewegungskrieg)をGoogleの英訳機能でチェックしました。
 そもそも分量が英日に比べて少ないのですが、その中には心理への言及はゼロでした。

● 原文、短いので、全部、送ってみます。(拡大機能の利用をお願いします)
 <以下、省略(太田)。>

<太田>

 私の感想を記す前に知りたいのは、まず、あなたが、どうして軍事戦略論の勉強をしようと思ったか、です。
 次に、孫子やクラウゼヴィッツやリデル・ハート、らの軍事戦略論の勉強は済まされているのか、です。
 そして、最後に、Antulio Echevarria
https://ssi.armywarcollege.edu/faculty-staff/author-bio-echevarria/
に注目したのはどうしてか、です。
 (なお、私は、現在までの史上最高の軍事戦略家は杉山元だと思っているところ、望むらくは、軍事戦略論を勉強された上で、彼に代わってあなたが、杉山元の軍事戦略論を書かれんことを。)

<太田>

 安倍問題/防衛費増。↓

 <平沢さんも丸くなっちまったねえ。↓>
 「安倍晋三元首相をかつての家庭教師・平沢勝栄氏が追悼「昔の話をしてみたかった」・・・」
https://www.msn.com/ja-jp/news/national/%E5%AE%89%E5%80%8D%E6%99%8B%E4%B8%89%E5%85%83%E9%A6%96%E7%9B%B8%E3%82%92%E3%81%8B%E3%81%A4%E3%81%A6%E3%81%AE%E5%AE%B6%E5%BA%AD%E6%95%99%E5%B8%AB-%E5%B9%B3%E6%B2%A2%E5%8B%9D%E6%A0%84%E6%B0%8F%E3%81%8C%E8%BF%BD%E6%82%BC-%E6%98%94%E3%81%AE%E8%A9%B1%E3%82%92%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%BF%E3%81%9F%E3%81%8B%E3%81%A3%E3%81%9F/ar-AA1dx0gp?ocid=msedgntp&cvid=711243c76be24485b49d2d117d42e02f&ei=41
 <おかしい、平素からの死刑反対運動と昨年からのウクライナ批判運動に忙しく余った時間なんてないハズなのにー。↓>
 「現場は祈る-銃撃1年・・・「唯一無二の命奪うな」現場で読経した海龍王寺住職・・・」
https://www.msn.com/ja-jp/news/national/%E7%8F%BE%E5%A0%B4%E3%81%AF%E7%A5%88%E3%82%8B-%E9%8A%83%E6%92%83%EF%BC%91%E5%B9%B4-%E5%94%AF%E4%B8%80%E7%84%A1%E4%BA%8C%E3%81%AE%E5%91%BD%E5%A5%AA%E3%81%86%E3%81%AA-%E7%8F%BE%E5%A0%B4%E3%81%A7%E8%AA%AD%E7%B5%8C%E3%81%97%E3%81%9F%E6%B5%B7%E9%BE%8D%E7%8E%8B%E5%AF%BA%E4%BD%8F%E8%81%B7/ar-AA1dxrWI?ocid=msedgntp&cvid=87804b9c5d24465aa72f532331894319&ei=6

 ウクライナ問題。↓

 <えーぞー。↓>
 Ukraine Launches Missile Strikes on Russia Across ‘Entire Front’—ISW・・・
https://www.newsweek.com/ukraine-missle-strikes-front-line-russia-counteroffensive-latest-isw-1811216
 <その通り、ということに・・。↓>
 「反攻は「計画通り」 ウクライナ軍総司令官、米軍トップに・・・」
https://www.msn.com/ja-jp/news/world/%E5%8F%8D%E6%94%BB%E3%81%AF-%E8%A8%88%E7%94%BB%E9%80%9A%E3%82%8A-%E3%82%A6%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%8A%E8%BB%8D%E7%B7%8F%E5%8F%B8%E4%BB%A4%E5%AE%98-%E7%B1%B3%E8%BB%8D%E3%83%88%E3%83%83%E3%83%97%E3%81%AB/ar-AA1dx9v7?ocid=msedgntp&cvid=303cd42494584c06bd8e80de2a594d4d&ei=9
 Ukraine Forces Out-Flank ‘Trapped’ Russians In Bakhmut・・・
https://www.newsweek.com/ukraine-forces-out-flank-trapped-russians-bakhmut-donetsk-1811309
 <プーチンに言っとくれ。↓>
 Human Rights Watch has called on Russia and Ukraine to stop using cluster bombs, and urged the US not to supply the munitions to Kyiv, amid reports the Biden administration is poised to include the controversial weapons in a new military aid package.
 Russian and Ukraine forces have used cluster bombs, which break apart in the air and release large numbers of smaller bomblets across a wide area.・・・
https://www.theguardian.com/world/2023/jul/06/russia-ukraine-cluster-bombs-biden-human-rights-watch

 それでは、その他の国内記事の紹介です。↓

 AbemaTVで王位戦第1局1日目をたまにチラ見鑑賞中。

 「大きな失敗」は「大きな成功」の間違い。
 一体何を失敗したって言うのさー。↓

 「・・・伊藤は韓国併合に反対であった。併合のコストが大きすぎたからである。日本が大韓帝国を統治して、その破綻に瀕した国家財政を引き受けるよりも、むしろ韓国を保護国として内政を改革させ、経済を振興して自国を防衛させることが重要であると考えた。将来的には、そのような韓国と同盟して、日本の安全を図るという戦略方針を描いていたのである。そのために、伊藤は韓国の宮中改革に着手し、次代の皇帝と目される皇太子の李垠を東京に留学させた。長期的な計画であった。  しかし、一九〇九年十月にハルビン駅頭で伊藤が安重根に暗殺されると状況は一変した。伊藤に代わって最高実力者となった山県有朋やその下にあった寺内正毅陸軍大臣などの陸軍閥は、統治コストを顧みることなく、韓国併合に突き進んだのである。それは思慮不足に由来する「小さな失敗」にすぎなかったかもしれないが、満洲事変にまで繋がる後戻りのできない「大きな失敗」の出発点でもあった。大英帝国がヨーロッパ大陸との間の数百年の経験を経て「栄光ある孤立」を維持したことから学ぶべきであった。・・・」
https://news.yahoo.co.jp/articles/3c6fcfd047d61a19acf963682829b383d642b8ec
 <これはその通り。
 「アメリカとフランスを撃退した「朝鮮の攘夷主義者」が、「取り返しのつかない国難」を招いた・・・」
https://news.yahoo.co.jp/articles/66eda675f45f931e6ba8c868ce281e89b3439ce2

 だからどうした?↓

 「・・・庶民が積み重ねてきた小さな技術や地道な努力を丹念に見ていかないと、わたしたちの歴史をほんとうに見ることにはならない。宮本は、庶民の小さな技術の工夫や努力で世の中が豊かになるということを何度も強調しているのです。」
https://news.yahoo.co.jp/articles/f4ab5ce032f84a3df9f434da2d33476bfbe6cba9

 日・文カルト問題。↓

 <いい加減にせー。↓>
 「IAEA事務局長 きょう韓国訪問=汚染水報告書説明へ・・・」
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2023/07/07/2023070780020.html
 「IAEA「福島処理水最終報告書の作成に日本が介入したとの疑惑は虚偽」–IAEAのグロッシ事務局長が韓国へ–国会で報告書について説明を行う予定・・・」
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2023/07/07/2023070780021.html
 「IAEA報告書発表、考えるべき課題は多い=韓国・・・」
https://japanese.joins.com/JArticle/306277
 「IAEAの北核査察も信じないのか=韓国・・・」
https://japanese.joins.com/JArticle/306278
 「韓国野党「汚染水報告書に日本介入」疑惑に線引きしたIAEA「全く根拠のない虚偽」・・・」
https://japanese.joins.com/JArticle/306307
 「「福島原発の爆発時も韓国には影響なかった…政界の恐怖マーケティング」・・・」
https://japanese.joins.com/JArticle/306295
 <文カルト健在。↓>
 「済州島の海女ら、旭日旗を海に広げて福島汚染水放出反対デモ・・・」
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2023/07/06/2023070680278.html
 「汚染水放出反対の韓国野党が徹夜座り込みも…「耐えられない」1時間で乱れる・・・」
https://japanese.joins.com/JArticle/306309
 「供託10件のうち8件、裁判所が不受理…強制徴用「第三者弁済」の行方は・・・」
https://japanese.joins.com/JArticle/306301
 <文カルトも統一教会もカネ亡者。↓>
 「「第三者弁済は違法」と主張していた徴用工弁護団、弁済金の11%を源泉徴収・・・」
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2023/07/06/2023070680105.html
 <「日本人」が余計。↓>
 「「俳優アラン・ドロン、日本人同居人に虐待された」···告訴した3人の子供・・・」
https://japanese.joins.com/JArticle/306303
<報道価値殆どなし。↓>
 「「不吉な兆し」、日本「血の色の川」の8日後…今度は「緑に変色」・・・」
https://japanese.joins.com/JArticle/306312
 <日韓交流人士モノ。↓>
 「韓日財界が創設の未来パートナーシップ基金 若者交流・産業協力に活用へ・・・」
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20230706003600882?section=japan-relationship/index
 「日本人が夏に行きたい海外旅行先、ソウルがハワイを抑え1位=韓国ネット「歓迎」「日本を見習って…」・・・」
https://www.recordchina.co.jp/b916838-s39-c30-d0191.html

 チャンドラ・ボースが登場しないぞー。↓

 ・・・Little of this would have surprised our ancestors who first sailed to India with the East India Company at the time of Shakespeare. India then had a population of around 150 million – about a fifth of the world’s total – and was producing about a quarter of global manufacturing; indeed, in many ways it was the world’s industrial powerhouse and the leader in manufactured textiles. The idea that India was ever a poor, famine-struck country is a relatively recent one, dating only from the period of British rule: historically, South Asia was always famous as the richest region of the globe, whose fertile soils gave two harvests a year and whose mines groaned with mineral riches.
 Today India has returned to its traditional place at the centre of world affairs. In less than a century, it has moved from a distant colony of the British crown to its current status, where it is courted by Washington and confident enough to dictate the terms of its relationship with the US.・・・
https://www.theguardian.com/books/2023/jul/03/shadows-at-noon-the-south-asian-twentieth-century-by-joya-chatterji-review-charming-genre-defying-study

 中共官民の日本礼賛(日本文明総体継受)記事群だ。↓

 <人民網より。
 そりゃそーでしょ。どこが違うのか、「科学的」にぜひとも説明を!↓>
 「中国は原発の通常運転による放出に反対したことはない・・・」
http://j.people.com.cn/n3/2023/0706/c94474-20040602.html
 <まったー。↓>
 「日本はIAEA報告書を原発汚染水海洋放出の「護符」にするべきではない・・・」
http://j.people.com.cn/n3/2023/0706/c94474-20040654.html
 <人権理事会?↓>
 「国連人権理事会で日本の原発汚染水海洋放出に中国が厳正な立場を表明・・・」
http://j.people.com.cn/n3/2023/0706/c94474-20040623.html
 <ここからは、レコードチャイナより。
 ご心配なく。↓>
 「日韓両国の要人が相次いで中国を訪問、日中・中韓関係は改善に向かうのか・・・中国青年網・・・」
https://www.recordchina.co.jp/b916807-s25-c100-d0193.html
 「華字メディアの日本華僑報網・・・文章は、朝日新聞が昨年報じた「核戦争後の『核の冬』食料不足で世界の50億人犠牲」との記事の、米ラトガース大学による研究結果を紹介。同研究では、局地的だとしても核戦争が勃発した場合、核攻撃による死者は約2700万人だが「核の冬」による食糧生産の減少と物流停止によるその後2年間の餓死者は2億5500万人に上り、そのうち日本が7200万人を占めると分析されている。・・・」
https://www.recordchina.co.jp/b916681-s25-c30-d0052.html
 <イエス。↓>
 「全固体電池で重要なブレークスルー、トヨタが未来の発言権を得る?・・・香港メディアの香港01・・・」
https://www.recordchina.co.jp/b916875-s25-c20-d0193.html

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太田述正コラム#13590(2023.7.7)
<宮野裕『「ロシア」は、いかにして生まれたか』を読む(その16)>

→非公開