太田述正コラム#2641(2008.6.30)
<中共体制崩壊の始まり?(続x4)>(2008.8.20公開)
1 始めに
 またまた、騒擾事件が中共であったようです。
 日本の主要メディアの電子版で本件をとりあげたのが、実質讀賣と東京だけとは寂しい限りです。
2 事件の概要
 様々の主要メディアの報道の最大公約数は、次のようなものです。
 中共貴州省(Guizhou province)甕安(おうあん)県(Weng’an County)で28日午後、死亡した中学2年生の少女(15)に対する強姦殺人容疑事件の捜査に市民が不満を抱き、数万人が県共産党委員会や公安局の庁舎を襲撃する騒擾が発生した。警官の発砲で市民1人が死亡したとの情報がある。
 中共では近年、当局の不正に対する抗議行動が各地で相次いでいるが、数万人規模の騒擾は異例。
 少女が今月下旬に死亡した後、公安当局は、死亡した頃にこの少女と一緒にいるところを目撃された3人を拘束して取り調べを行ったが翌日には解放した。また、少女の親族が捜査状況と死因を当局に問い合わせた上、公安当局に徹底捜査を求めたところ、公安関係者達によって暴行され、少女の伯父1人が病院で死亡が確認されたという。
 拘束された1人は副県長の息子だから解放されたとか、容疑者の1人の親が公安幹部だったため本格捜査が行われなかったとのうわさも流れ、怒った少女の学校の生徒達(12歳以上)約500人が28日の午後4時半から公安局に対して抗議行動を起こしたところ、蹴散らされたり叩かれたりし、これがきっかけとなって市民1万人以上が加わった騒擾に発展した。
 騒擾の中で、県共産党委員会庁舎や公安局庁舎が放火され、その一部は全焼した。警察車両など約20台も燃やされた。
 消防車が駆け付けたが、群衆は斧で消火栓を壊し消火活動を妨害。警官隊は催涙弾を発射して威嚇したが、騒擾は29日午前2時頃まで続いた。騒擾鎮圧のため武装警察が動員され、市民約150人が負傷、生徒約30人を含む約200人が拘束されたという。
 新華社電は29日、少女の死についての法医学的所見に不満を抱いた人々によって騒擾が起きたが既に終息したと伝えたが、騒擾は同日もまだ続いているともいう。
 この事件の写真やビデオが中共の沢山のインターネット・サイトに掲載されたが、当局が介入してすぐにアクセス不能になった。
 少女の死体は先週(一説には6月初め)川で発見されたが、短い捜査の後自殺と断定されたもの。
 少女の遺族は、当局からの補償金3,000元の受け取りを拒んだところ、補償金が30,000元にアップされたという。
 (以上、
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2008063002000108.html
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20080629-OYT1T00244.htm
http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/7479810.stm
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/06/29/AR2008062900805_pf.html
http://www.guardian.co.uk/world/2008/jun/30/china
(すべて6月30日アクセス)による。)
3 感想
 この事件を見ると、中共の地方当局が腐敗しており、人々の憤懣が鬱積していることがよく分かります。
 人々の攻撃の主対象が県の共産党委員会(county party office)であるというのでは、さぞかし党中央も肝を冷やしていることでしょう。
 それにしても、中学生達が騒擾の前衛となったというのですから、彼らの友情の篤さ、正義感、そして覇気は敬服に価します。
 日本の中学生達に、彼らの爪の垢でも煎じて飲んでもらいたいくらいですね。