太田述正コラム#2735(2008.8.17)
<サルコジ批判(その3)>(2008.9.27公開)
しかしこれは、いよいよサルコジが大統領戦への出馬を決意したことから、セシリアは自分のせいでサルコジが大統領になれなかったと言われたくなかったので意地で戻った、というのが真相のようです。
2007年に入ると、セシリアは、サルコジの大統領選選挙本部に一室を与えられます。
しかし、同年4月には、セシリアはサルコジとの離婚を密かに決意します。
それ以降は、サルコジにとってはいい面の皮ですが、セシリアは妻としての最低限の体裁だけを維持することになります。
大統領選の二次投票の時には、セシリアは2週間の選挙運動期間中に全く姿を見せず、みかねたシラク大統領夫人がサルコジの応援演説を行いましたし、投票にあたっては、セシリアの前夫との二人の娘がサルコジと一緒に投票したというのに、セシリアはフロリダに遊びに行ってしまい、結局投票しませんでした。
サルコジが大統領選に勝利し、就任式の日がやってきた時も、セシリアは出席をしぶり、結局この二人の娘に促されて急遽ロンドンから帰国して出席したという噂であり、普段着のまま出席して物議をかもしました。
6月の英国でのサミットの際には、セシリアは途中でフランスに帰国してしまい、各国首脳中、サルコジだけが配偶者を欠いた状態になってしまいましたし、8月にサルコジと訪米した時には、ブッシュ大統領夫妻がサルコジ夫妻を招待した昼食会をセシリアだけがウソの理由でドタキャンして顰蹙を買いました。
サルコジがセシリアをどうしても諦めきれなかったことが背景にあるのでしょうが、この間の7月には、サルコジが与えた大統領府のクレジットカードを使ってセシリアが娯楽に興じたことがフランス議会で公私混同として問題にされたり、サルコジがセシリアをリビアの元首であるカダフィとのブルガリア看護婦等釈放交渉の根回しに使ったことが、フランス外務省のハシゴを外したとして批判されたりしています。
結局、10月18日、サルコジとセシリアの離婚が発表されます。
こうしてセシリアは、恋人のアッティアスの所に戻り、二人は翌年、結婚するのです。
こうしてセシリアに捨てられ、女無しでは一刻ももたないサルコジは、11月13日、カーラと出会い、瞬時に恋に落ちます。カーラも同様でした。
では、このカーラとはどんな女性なのでしょうか。
カーラの実家は、イタリアのトリノの財閥です。
彼女の父親は、実業家である以上に作曲家でもあり美術品収集家であるような人物であり、カーラは自分が金銭的価値に重きを置かないのは父親の影響だと言っています。
カーラは28歳の時に、この父親から、カーラが自分の実の娘ではなく、ピアノ奏者であったカーラの母親がはるか年下のクラシック・ギター奏者の青年・・やはりトリノの富裕な家出身・・と6年間にわたる不倫をして生まれたということを明かされます。
カーラ自身も、小さいとき、ピアノ、バイオリン、そしてギターを習わされます。
カーラが特徴的なのは、10代の頃から、男漁りが大好きで、それが40歳でサルコジと結婚するまで続いたことです。カーラはドンファンを女性にしたような人間だと評する人がいるくらいですが、彼女自身は、ボーボアール(Simone de Beauvoir)やサガン(Francoise Sagan)の生き方に大きな影響を受けたと言っています。
彼女は、大学に入学するもすぐに退学し、モデル業に従事します。
1990年代にはカーラはスーパーモデルの一人としてもてはやされ、欧州内の諸国をわたりあるき、数カ国語を身につけ、男に生活資金を依存することなく男漁りを続けます。
彼女が対象にしたのは一流の男達ばかりであり、その中にはエリック・クラプトンやミック・ジャガーが含まれています。
「単婚なんて退屈でばかげてるわ。一夫多妻や一妻多夫がいいわよ。」が(サルコジと結婚するまでの)カーラの口癖でした。
しかもカーラは、もはや男と女の関係でなくなった過去のすべての男達と、そしてその男達の妻達や彼らの新たな愛人達とさえ、友人関係を維持しています。
そのカーラが1997年にモデル業を辞め、歌の作詞家に転身します。
この転身を、彼女の元愛人達がプロデューサーとして、あるいはビデオ作家として助けるのです。
そしてカーラは、やがて自分で歌を歌うようになります。
カーラは、33歳の時に息子をもうけます。その子の父親たる男性は25歳の哲学教授兼ラジオショー番組のホストでした。
カーラ自身は否定していますが、この男性の父親との愛人関係にあったところ、更にその息子に手を出したという噂がまことしやかに伝えられています。
この男性は妻帯者であり、この妻の父親が有名な哲学者のベルナール・アンリ・レヴィ(Bernard-Henri Levy)であることも話題になりました。
2007年5月、7年近くの同棲生活の後、この男性は、「われわれの関係は友人関係のようになってしまった。そんなことでどうする。そんな関係になるにはわれわれは若すぎる」と別れ話を切り出され、カーラは抵抗むなしく、この男性に捨てられてしまいます。
傷心のカーラは、さっそく次の男捜しを開始し、大統領選で彼女が投票した相手でもないサルコジを知人に紹介されるのです。
カーラが瞬時にサルコジに恋心を覚えたのは、当たり前過ぎるくらい当たり前のことだったのです。
(続く)
サルコジ批判(その3)
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