太田述正コラム#2761(2008.8.30)
<グルジアで戦争勃発(その13)>(2008.10.8公開)
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<最新状況>
1 グルジア・ロシア国交断絶
8月29日、グルジア政府は、ロシアが南オセチア自治州とアブハジア自治共和国の独立を承認したことを受け、ロシアと国交を断絶(外交関係を停止)し、ロシアも同じ措置をとりました。
両国とも領事館は維持して旅券の発行や自国の国民の保護は続けますが、政治問題は、それぞれが指定する第三国を仲介者として処理されることになります。
(以上、
http://www.nytimes.com/2008/08/30/world/europe/30russia.html?ref=world&pagewanted=print
(8月30日アクセス。以下同じ)による。)
2 冷戦の復活というジョーク
「・・・新冷戦だなどと言うのはばかげた過大反応だ。ロシアはエネルギー供給国として、かつ隣国の一つとして重要な国ではある。しかしそれは欧米に対し大きな戦略的脅威たりえない。というの、ロシアは輸出できるようなイデオロギーを持っていないし、その経済は米国とEUの合計の7%程度に過ぎないからだ。これは購買力平価で計算しても同じだ。
ロシアは相当なる地域的パワーではある。けれども大したことができるわけではない。それだけのことだ。・・・」(
http://www.ft.com/cms/s/0/42dc1b9c-75c5-11dd-99ce-0000779fd18c.html?nclick_check=1)
3 やはりズレてる中東諸国
「シリアのバシャール・アル-アサド大統領は先週モスクワに飛び、ロシアのグルジアにおける攻勢に賛意を表(endorse)し、かつ・・・ロシアの諸兵器システムがもっと欲しいとの意向を表明した。
リビアの指導者たるモアマール・カダフィの影響力ある息子のサイフ・アル-イスラム・カダフィは、アラブのニュース・メディアの多くに見られる喜びと同様の喜びを表明した。すなわち、米国はもはやゲームのルールを決める唯一の世界的パワーではなくなったと。
この若い方のカダフィは、・・・「世界には今、バランスが生じた。ロシアは復活しつつある。このことはわれわれにとっても中東全体にとっても良いことだ。・・・
<しかし、>中東諸国の政府は、ロシア製の兵器が余り役に立たなかったという経験を有している・・・。エジプト人達は、イスラエルとの何度かの戦争で自分達が敗れた理由の一部はロシアが提供した兵器にあると非難している。
こういうわけで、多くのアラブの評論家達は、最初のうちこそロシアが軍事力を見せびらかしたことに拍手喝采を送っていたけれども、・・・アラブのニュース・メディアのいくつかは先週と今週の社説で、疑念を表明し始めた。果たしてロシアは、諸国の間のリーダーたりうるほど安定していて、確固とした目的や力を持っているのだろうかと。」(
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/08/29/AR2008082903127_pf.html)
→グルジア「戦争」なるものは、巻き添えになって亡くなったり、難民になったりした人々にとっては悲劇以外の何物でもありませんが、ことここに至ると、プーチンおよびロシアの面々が主演し、サカシヴィリが助演して大まじめに演じられたところの、巧まざる壮大なギャグドラマに見えてきますね。
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グルジアで戦争勃発(その13)
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