太田述正コラム#2784(2008.9.11)
<マケインの逆襲(その1)>(2008.11.1公開)
1 始めに
米大統領選はオバマ当確と思っていたら、マケインが自分の副大統領候補としてペイリン(Sarah Louise Heath Palin。1964年~。5人の子の母親)・アラスカ州知事を選んだことで、にわかに不透明な情勢になってきました。
2 マケインとペイリンの組み合わせの強さ
(1)マケインとペイリンの組み合わせはどうして強力なのか
マケインとペイリンの組み合わせがどうして強力かと言うと、ペイリンはマケインの弱点を補っているからです。
すなわち、マケインの高齢を若さで、マケインが男性であるのに対して女性であることで、そしてマケインが共和党支持層の中ではリベラル寄りであるのに対して宗教右派であることで・・。
ペイリンが正真正銘の宗教右派である証拠に、彼女はアラスカの学校で進化論とともに創造説(creationism)を教えるよう主張していますし、妊娠中絶にも胚細胞研究にも反対しており、同性愛者の結婚にも反対しており、地球温暖化の原因が人間にあることも認めていませんし、銃規制にも反対しています(
http://www.guardian.co.uk/world/2008/sep/07/republicans2008.uselections20081 。9月7日アクセス)。
(2)各種世論調査の結果
最新の諸世論調査の結果によれば、マケインとオバマは横一線またはマケインややリードといったところですが、これまで常にオバマがマケインを顕著にリードしてきていたことからすれば、様変わりです。
一番端的なのは、ABC/ワシントンポストの世論調査で、マケインが白人の女性の間で53%対41%でリードしたことです。同じ世論調査で、2週間前はオバマが15%リードしていたというのに・・。(
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2008/sep/10/uselections2008.barackobama
。9月11日アクセス)
同様、先月のNBC/ウォールストリートジャーナルの世論調査で、オバマは女性の間でマケインを14%リードしていたのに、最近の同じ世論調査ではわずか4%しかリードしていないという結果が出ました。とりわけ18歳から49歳までの女性の間では、オバマが20%リードしていたのに、逆にマケインの3%リードに変わってしまいました。白人の女性の間でもオバマが1%リードしていたのが、今やマケインの10%リードに変わってしまったのです。
(以上、
http://www.slate.com/id/2199738/
(9月11日アクセス)による。)
3 豚の口紅論争
このオバマ・バイデン陣営とマケイン・ペイリン陣営との間で今持ち上がっているのが豚の口紅論争です。
オバマが、マケインが最近オバマの向こうを張って自分達こそ米国の変化を目指すと言い始めたことをとらえて、「そんなのは変化でも何でもない。・・・皆さんご存じでしょ。豚に口紅をつけたって豚に変わりはないということを。古い魚を紙切れで包んでそれを変化だとよばわることはできても、その魚が臭を消すわけにはいかない」と述べたことにマケイン陣営がいちゃもんをつけたのです。
ペイリンが先週の共和党大会で、「アイス・ホッケー選手の子供に入れ込む母さんと闘犬用のピットブル犬との違いは何か? 口紅をつけているかどうかだ」と語ったこともあり、このオバマの発言がペイリンを侮辱したものであることは明白だというのです。
しかしオバマは、全く同じ表現を、昨年、ワシントンポストのインタビューでパトラユース(Petraeus)将軍のイラクでの任務を形容する際にも用いていますし、マケイン自身、昨年、ヒラリー・クリントン大統領候補(当時)提唱のある政策について「連中は豚に口紅をつけたのさ。だけど豚は豚だよ」と語っています。
オバマは、「マケイン陣営は、未来について語るよりもインチキ話やばかげた脱線を好むようだ。われわれは、エネルギー危機に直面しているし、余りにも多くの子供達にとって機能していない教育制度を持っているし、二つの戦争を戦っているし、年季明けの兵士達が郷里に戻ってきているのに十分その面倒を見ていないけれど、こういったことを彼らは議論しようとはしないのだ」と痛烈に反撃しています。
(以上、
http://www.guardian.co.uk/world/2008/sep/11/uselections2008.barackobama
(9月11日アクセス)による。)
(続く)
マケインの逆襲(その1)
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