太田述正コラム#2800(2008.9.19)
<性科学の最新状況(続々)>(2008.11.6公開)
コラム#2798中の「2 記事のあらまし」冒頭の、
「このたび、スウェーデンの研究者夫妻が、哺乳類の雄に、番(=単婚=一夫一婦制)を維持することを容易にする遺伝子が存在する、との研究成果を明らかにした。」
を、
「このたび、スウェーデンの研究者夫妻が、哺乳類の雄に、番を維持すること(=単婚=一夫一婦制)を容易にする遺伝子が存在する、との研究成果を明らかにした。」
に訂正します。
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1 始めに
引き続き性の問題を考えてみましょう。
2 人工授精によるシングルマザーの増大
コラム#2799でのバグってハニーさんの注意喚起を踏まえれば、人間でも遺伝子的に単婚を維持するのが困難な雄(男性)がいるようです。(コラム#2798参照)
困難な度合いがどの程度か、そのような男性の割合がどれくらいか、にもよりますが、ひょっとすると、単婚(一夫一婦制)の全男性への強制は非人道的なのかもしれませんね。
さて、以上はすべて男性の話であって、女性についてはまだよく分かっていませんが、その手がかりとなるような記事がガーディアンに出た(
http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/2008/sep/17/women.family
。9月17日アクセス)のでご紹介しておきます。
英国では、人工授精をしてシングルマザーになる女性は前からいました。
でもそうする女性は30台後半か40台前半が普通でした。
しかし、もはやそうではありません。
今週発表された世論調査の結果によれば、56%もの女性が、ある一定の年齢に達しても伴侶を見つけることができなければ、男性の誰かから精子の提供を受けて人工授精で妊娠することを考慮すると答えました。
そして、最もそう答えた割合が多かったのが、28歳から31歳の比較的若い女性だったのです。
精子の提供を受けることは、これまでは常に最後の手段でしたが、今や最初の手段になりつつあります。
多くの女性がこれまでよりも人生の早い時期に経済的独立を達成し、シングルマザーになることが汚点であるとは思わない人が大部分になっているのです。
米国でも、生涯にわたる伴侶を得ることよりも子供を得ることの方が重要だと考え、どうせなら早く子供を得た方がよいと考えている女性が多数を占めるに至っています。
どうやら、人間の女性の多数にとっては、単婚(一夫一婦制)どころか、番うこと(セックスをすること)すら、子供を産み育てることより優先順位は低いようですね。
換言すれば、女性の多数は、特定の男性の存在を子供の妊娠及び養育にとって不可欠なものなどとは全く思っていないらしい、ということです。
そうだとすると、私を含む男性の女性観は、抜本的な修正を求められているのではないでしょうか。
もちろん、十把一絡げにしてはいけないのであって、女性の中に、子供を産み育てることを重視しない、あるいは子供を産み育てたくない人がいることも忘れてはならないでしょうが・・。
3 ポルノの普及と不貞
米アトランティック誌が、「ポルノは姦淫なりや(Is Pornography Adultery?)」という記事を掲載しています(
http://www.theatlantic.com/doc/200810/adultery-porn.
。9月17日アクセス)。
その概要をご紹介しましょう。
女性は昔よりはポルノを見るようになったが、男性より遙かにポルノに敵意を持っており、ポルノを見る割合は男性に比べると顕著に低い。
インターネット世代たる米大学の学生を対象に昨年行われた調査によれば、女子学生の70%は一度もポルノを見たことがないのに対し、見たことのない男子学生は14%しかいなかった。そして、男子学生の半分近くが少なくとも週に1回はポルノを見ているのに対し、そうしている女子学生は3%しかいなかった。
以上を踏まえて、二つの見方がある。
一つは、ポルノは男子にほとんど遍く見られる無害でちょっぴりばかげている習慣であるという見方だ。
もう一つは、ポルノは、より深刻な裏切りへと導く入り口であるという見方だ。
2004年の研究によれば、不倫をしなかった既婚カップルに比べて、不倫をした既婚カップルの少なくとも一方がインターネット・ポルノを利用していた度合いは3倍にも達する。
実際、夫が他の女性が目の前で性的演技をやるのを眺めるのは裏切りだとすれば、それをパソコンやテレビで見るのだって裏切りではないだろうか。(もちろん、レアケースではあれ、これは夫と妻とを入れ替えても同じことだ。)
他方、次のような調査結果がある。
2003年にイリノイ大学が、ポルノを利用している男性と性的関係にある女性を対象として行った調査では、約三分の一はポルノを見る習慣は裏切りであり不貞であると答えた。しかし、多数は中立的ないし好意的に受け止めていた。
いずれにせよ、はっきりしているのは、1980年から2004年にかけて、ポルノの種類が増え、またポルノへのアクセスが極めて容易になったにもかかわらず、性的暴力は85%も減ったことだ。また2006年の研究では、インターネット・ポルノへのアクセスが10%増えると、申告される強姦が7%減ることが分かった。(コラム#1666、1667参照)
結論的にはこういうことだろう。
ポルノは悪いことかもしれないけれど、悪いことの中じゃもっともタチのいいものだということだ。
ポルノを利用している男性は、性的に関係ある女性を性的に裏切っていることは事実だが、彼はポルノに登場する女性に感情を込めているわけではない。彼の裏切りは、性交に伴うところの、妊娠から性病に至るリスクを伴ってはいない。そして彼は、カネのためにセックスをしている女性を相手に裏切りを行っているわけであり、これらの女性は街娼や最高級の娼婦より安全な状況下でセックスをしていることも忘れてはなるまい。
性科学の最新状況(続々)
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ポルノが人間の欲望の代償行為になるのであれば犯罪抑止の面でプラスでっしょうし、逆に青少年がそれを見た結果性欲を刺激されて集団レイプに及んだりする例もこれまた日常的に目にしますね。
なかなか統計的に処理しきれない類のものを一刀両断で是非を問うのはほとんど不可能ですね。
女性にとって愛のないセックスは苦痛以外のなにものでもない(太田コラム#1701)ならば、「愛」を女性に与えられる男性だけしか女性とセックスして子どもを得ることが出来なくなる時代がすぐに来るかもしれませんね(子づくりに男性が必要ない世界!)。性問題については、英国、もしくはブラジル(太田コラム#2018)が世界で最先端を進んでいるのでしょうか。ところで、NHKラジオで聴いた限り、日本の女性はほとんどが年収600万円以上の男性と結婚したいそうで、200~400万円ぐらいで4%程度、それ以下は論外みたいな結果でした。自分は爺さんになるまでエロ本を愛するしかないのか、そもそも爺さんになるまで生きれるのか…orz